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203/271

203・いきなり身体能力上がっても制御は厳しいよねって話

「よし、まずは西のはずれにある酒場『鋼のドラゴン』とやらを根城にしている組織、クライングオーガから落とすとしよう。我と貴殿と少女マーチを狙うのはここだけ、とは言えここを潰されれば次は我が身と考え残る二つも動く可能性はあるがゆえに、三か所を同時に潰す」


「俺と晴流弥の二人しかいないのに三か所同時は無茶が過ぎる、というか二手に分かれたとしても俺は戦力にはならないぞ?」


「たわけ、凡夫ヒイロに期待はしておらぬわ。クライングオーガには我と貴殿で乗り込むが他二つには我の式神を向かわせる。万が一、我の式神で破れる事があったとしても時間稼ぎには十分なるであろう、出ろ我が式ども」


晴流弥が四枚の呪符を空中に投げると一瞬眩く光り、周りに青い龍、白い虎、火を纏った鳥、蛇の尻尾を持つ大亀の四匹の式神が居る事に気付いた。


「これって、見た目的に四神って言われてるアレか?」


「ほう、その程度は知っていたか。いかにも、これぞ我が手ずから調伏し使役する四神である。我が疾く命ずる、青龍と朱雀は我が指定する建物の地下にこもる邪なる者たちを制圧せよ、此度は凡夫ヒイロに配慮し命を奪う事を禁ずる、この折鶴が向かう先が狩場である、行け!!」


晴流弥が懐から取り出した折鶴がひとりでに東の方角に飛んでいき、青龍と朱雀がそれを追って飛んでいった。

あれ凄く目立ちそうだな、大丈夫だろうか。


「ありがとう、晴流弥。わざわざ配慮してくれて。どうしても人死にが出るのは嫌なだからさ」


「実に甘い事だ、そんな事ではいずれ背中から刺されるであろうな。まぁ良い次だ、玄武、白虎、お前たちは地下の下水道に潜みし邪なる者たちを制圧せよ、同じく、命を奪う事は禁ずる、行け!!」


晴流弥の号令に白虎が玄武を背中に乗せて、地面に沈み込んでいった。


「これでセクシーウルフとナイトクローは問題なかろう、我らも急ぐとしよう。クライングオーガとやらがどの程度かは知らぬが、我が得た新たな力を試すにはちょうど良いわ」


懐からもう一羽、折鶴を取り出した晴流弥はそれを軽く放り投げる、すると今度は西に向かって折鶴は飛び始めた。


「先ほどのモヒカンの記憶を読み移した呪符を仕込んだ折鶴だ、目的地まで案内してくれる。行くぞ凡夫ヒイロ」


そう言って晴流弥は俺に一枚の呪符を投げて寄越した。


「それは脚部強化の呪いを込めた呪符だ、持っているだけで鬼人の如き脚力が宿る。目的地まで多少距離もあろう、急ぐぞ」


「あぁ、わざわざありがとう」


俺たちは西へ飛ぶ折鶴を追いかけて夜の街中を走り始めた、大通りを走ると警備兵に見つかり捕まって時間を食うかもしれないので建物の屋根を移動する、だが俺がこんな場所をぴょんぴょんと小器用に走り回れる訳はない、マレッサが魔法で俺の姿勢制御の補助をしてくれていたりする、そのおかげで晴流弥に引き離される事なくついて行く事が出来ていた。


「ふむ、その身のこなし、貴殿についているマレッサとかいう神の分け身の助力であるか。これなら、もう少し早く動いても問題なさそうであるな」


「は?」


そう言うや否や折鶴の速度が上がり、それを追う晴流弥も速度を一段と上げた。

一気に距離を離されて慌てた俺は屋根から足を滑らせ落ちそうになってしまう。


「危ないよー」


マジックバッグからスライム状態のナルカが触手を伸ばして俺の腰辺りと屋根を掴みバランスを取ってくれた、あー落ちるかと思った。


「ありがとうナルカ。さすがだな、助かったよ」


「きひひ、褒められたー」


その時、ナルカが褒められているのはジトっとした目でパルカが見ているのに気付いた、パルカはぼそぼそと何やら呟いている。


『……神位魔法アキレウス――』


『おい、パルカ。何馬鹿な事やってるもん、ヒイロに直接神位魔法でバフを入れようとするなもん、過負荷でヒイロが爆発四散するもんよ』


『だって褒められたいんだもん!! 私様も褒められたいんだもん!!』


『あぁもう、子供じゃあるまいし駄々をこねるなもん!!』


パルカが急に子供じみた理由で俺に神位魔法でバフを入れようとしていたらしい、神位魔法って余波だけでも結構負担デカいんだよなぁ。


「まぁ、パルカも俺の為に何かしてくれようとしただけだし、あまり怒らないでやってくれマレッサ。ともかく晴流弥を追いかけないと、ホントに見失なったら大変だ」


『そうやって甘やかすから付け上がるもんよ、まったく。ほらパルカ、普通のバフ魔法なら問題ないもんから、ヒイロにかけてやるもん』


『仕方ないわね、全身全霊でバフを入れてあげるわ!! 私様に感謝なさい!!』


「あぁ、ありがとうパルカ」


『フヒ、さーあの小生意気な人間にとっとと追いつくわよ!!』


俺の体から黒いオーラが溢れ出し、体の奥底から力が湧いて来るような感覚だ、これなら晴流弥に追いつけるだろう、俺は力を込めて飛んだ。

そして数分足らずで目的の場所、酒場『鋼のドラゴン』に到着した俺と晴流弥は屋根の上から酒場の様子を探っていた。


「で、どうするんだ晴流弥。あの酒場の地下って言ってたけど、素直に聞いて教えてくれるとは――あ、晴流弥の呪符で記憶を読み取ってるんだっけ」


「その通りだ、地下への行き方はすでに我が手中にある。では行くか」


「は?」


そう言って晴流弥は酒場の前に飛び降り、そのまま酒場へと近づいていく。

いやいやいや、何やってんだアイツは。


「まさか、アイツ!? ちょっ、待――!!」


俺が待てと言い切る前に晴流弥は一枚の呪符を酒場の扉に投げつけていた。

呪符が扉に触れた瞬間、強烈な爆発音と衝撃が響く。

俺は騒動を起こしてほしくないと言ったはずなのだが、晴流弥はどうやら右から左に聞き流していたようだ。

ここが街外れでスラム街の様な場所とは言え、これ程の大爆発が騒ぎにならないはずはない。


「よし、少々苛烈なノックではあったが景気よく扉が開いたな。地下への隠し扉は中だぞ凡夫ヒイロ、急ぎ付いてこい。とっとと敵の大将を落とし、陥落させるぞ」


「はぁ、むちゃくちゃだなぁ」


俺はそう言いながら屋根から飛び降り、爆散した入り口から酒場の中に入る晴流弥の後に続いた。

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