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196・目の前の悪事にどう対応するって話

少女が引きずり込まれた路地裏へと急いで走る。

建物と建物の間にある人目の届かぬ場所は表通りと比べると瓦礫やゴミが散乱しており、まだ片付けが行われていない、もしくは最初から放置されているかのような印象を受けた。

パッと見た所、少女の姿も少女を引きずり込んだ男たちの姿は見えない、更に奥に連れていかれたのだろうか、路地の奥は薄暗くなんとも不気味な雰囲気だ。

もう日も傾いており、これから一層辺りは暗くなるだろう、死の視線は感じないがだからと言って危険がない訳ではない、一瞬の逡巡、俺は軽く頭を振って俺は路地裏へと足を踏み入れた。

散乱する瓦礫やゴミを避けつつどんどん奥へと進んでいると、曲がり角から複数の男たちの声が聞こえるのに気付いた、周囲を警戒しつつ、マジックバッグに入れていた手鏡で曲がり角の先の様子をうかがう。


「おいおい、なんだよガキじゃねぇかよ。もっとちょっと肉付きのいい女はいなかったのかよ。身綺麗だから売り飛ばす分には問題ねぇが、おれが楽しめねぇじゃねぇか馬鹿がよぉ」


「す、すんません、アニキ……。竜の胎の警備をクビになった奴らがまた戻ってきたらしくて、妙に警備が厳しかったもんでこのガキ一人を連れてくるのがやっとで」


「言い訳してんじゃねぇよ、ぶっ殺すぞクソが」


「ほ、本当にすんません!! 今度はもっと良さげな女攫ってきますから!!」


「チッ、まぁいい、いつもの所に入れとけ。奴隷商に高値で買い取ってもらわねぇとこの苛立ちは治まんねぇ、傷もんにして売値下げたらぶっ殺すぞ、いいな」


「は、はい」


「おい、ガキ。逃げようなんて思うなよ? おれたちは『クライングオーガ』のメンバーだ、知ってるよな? オーガすら泣いて許しを乞うほどに恐ろしい組織、それが『クライングオーガ』だ。安心しろ、てめぇみてぇなガキを好む変態貴族は割と多い、奴隷紋もしっかり刻んでもらって、変態貴族が飽きるまで遊んでもらえや、ギャハハハハハハッ!!」


話しを聞く限り何とも物騒なやからたちのようだ、大柄なスキンヘッドの男の脅しに少女は恐怖で声も上げられないのかうつむいて、押し黙っている。

少女の正面に大柄なスキンヘッド、その周りに三人の柄の悪い男たち、合計四人か。

さて、どうやって助け出そうか、いっそ一旦この場から離れてデイジー叔父さんに声をかけるのが一番安全で確実ではあるのだが、この場を離れている間に別の場所に移動されると探すのが手間だ、今持っている物でなんとか出来ないものか。


(緋色ちゃん、無茶はするものじゃないわよぉん)


頭の中からデイジー叔父さんの声が響いてきた、どういう事だこれ、デイジー叔父さんがテレパシーでも送っているって言うのか!? まぁ、出来そうだけど。


(あたくしは緋色ちゃんの魂に残る本体の残留魔力から構成されている存在、言うなればイマジナリーデイジーちゃんよぉん。マレッサちゃんたちと違って本体とやり取りするような力は残念ながら持っていないわぁん。このイマジナリーデイジーちゃんに出来るのはアドバイスくらいよぉん)


デイジー叔父さんの魔力が自我を持ったような物だろうか、まぁデイジー叔父さんの魔力ならそれくらい出来てもおかしくはないか。

とは言え、イマジナリーデイジー叔父さんの言葉は確かだ、俺一人であの男たちを倒せるかどうかは怪しい、マレッサかパルカ、ナルカが居ればどうとでも出来たかもしれないが今は俺一人だ、俺一人に出来る事なんてたかが知れている。


(本体は今、回復に尽力しているせいで、緋色ちゃんの守護がちょっとおろそかになってるわぁん。まぁ、それでも居場所くらいは捕捉出来てるでしょうけれどねぇん。あたくしとしてはすぐにこの場を離れて、警備の人に報告する事をお勧めするわぁん)


心配してくれてありがとうイマジナリーデイジー叔父さん、それでも俺は今なんとかしたいんだ、もし手遅れになったら目も当てられない、でも俺がアイツらを倒すのはたぶん無理だろう。

でも、気をそらしてあの子を連れて逃げるくらいはなんとか出来るかもしれない。


(はぁ、やっぱり緋色ちゃんは無茶をする気なのねぇん、そこが緋色ちゃんの良い所だけれど、欠点でもあるわぁん。イナジナリーであるあたくしに出来るのは緋色ちゃんにちょっとしたバリアを張っておくくらいよぉん。じゃ、頑張ってねぇん緋色ちゃん、でも命の危機を感じたら何をしてでも逃げるのよぉん)


頭の中に響いていたイマジナリーデイジー叔父さんの声が小さく遠のいていくのと同時に体の周りに透明な膜の様な物があるのに気付いた、イマジナリーデイジー叔父さんが言っていたバリアだろう、本物でもイマジナリーでもデイジー叔父さんは凄いや。

マジックバックに手を突っ込んで使えそうな物を取り出し、息をひそめて機会をうかがう。


「今日は大した成果はなかったが、もうこんな時間だ、そろそろ奴隷商の奴が来る。一旦帰るぞ」


「はい、おらガキ、こっちに来い」


急にグイっと手を引っ張られた少女が体勢を崩し、倒れ込んでしまった。

少女の手を掴んでいた男はそれにイラついたのか舌打ちをして力任せに手を引き上げ少女を無理矢理立たせた、少女の膝からは血が流れており倒れた際に何かで切ったのだろう、それを見たアニキと呼ばれたスキンヘッドの男は青筋を立てて、少女の手を掴んでいる柄の悪い男の腹に思いきり拳をめり込ませる。

余りの痛みに悶絶している柄の悪い男の髪を掴み、自分の顔の近くに寄せた。


「クソがよぉ、傷もんにするなって言ったよなぁ、この怪我一つでどんだけ価値が下がると思ってんだよクソがッ!! ぶっ殺すぞ、クソッ!! ろくな女も攫ってこれねぇ、売りもんには傷をつける、何なんだよお前、おれをイラつかせんなよ、クソがッ!!」


柄の悪い男の鼻っ柱に思いきり頭突きをした後、うずくまる柄の悪い男に何度も蹴りを入れるスキンヘッドの男、仲間割れ、と言うよりもただの憂さ晴らしか。

可哀想だがチャンスだ、今アイツらの注意はあの少女から離れている。

俺は名も無きダンジョンの中でダンジョン商人から購入した魔法のスクロールを一枚、破った。

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