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187・かなりピンチだけど何かしないとって話

何をどう勘違いしたのかは分からないが、戌彦が何やら重大そうな情報を口走ってくれた。

海竜帝レヴィアタンは『嫉妬』の罪を司っており、この竜の胎には『嫉妬』の権能があるらしい。

傲慢の大罪神アロガンシアとの約束もあるし、嫉妬の大罪神ジェロジアを起こす為にも回収する必要がある、おそらく『嫉妬』の権能はエレメンタル・イーターの時と同じようにレヴィアタンの魂に接続し切り離す事で回収できるはずだ。

なら、俺がするべき事はマレッサとパルカとの合流、その為にもこの状況をなんとかしなければならない。


「戌彦って割とマヌケかな。与えなくていい情報を与えた感じかな」


「いや、ちょっと待って、おかしいだろ!? なんで『暴食』の事や大罪神の事、レヴィアタンの事まで知っているのに『嫉妬』の権能の事は知らないんだよ!! 何も知らずにたまたま偶然、こんな所まで来るなんて方が確率的にあり得ないだろ!!」


「確かにそうだけれど、いちいち言わなくていい事まで口走ったのは戌彦の落ち度かな」


「そ、それは確かにそうだが――」


「……抹茶ラテおかわり」


叱責される戌彦、立場的にはフードを被った背の高い人物の方が上のようだ。

その二人の言い合いを我関せずと言った様子で無視しているもう一人、フードを被った背の低い方の人物は抹茶ラテのおかわりをデイジー叔父さんに所望していた、自由だなこの人。

まずやるべき事を考えよう、最優先は俺がダルマシオから離れる事だ、そうしないとデイジー叔父さんが動けない。

そう言えば、ゴッデス大蝦蟇斎さんにくっついていたマレッサは何処に言ったんだろう、随分と静かだが。

キョロキョロと辺りを見回すが姿は見えない、どこかに隠れているのだろうか。


「逃げる、などと言う事は考えない方がよろしいですぞ。当方が持つスキルは『一蓮托生シェアリング』だけではありませんので。当方の生来のスキルは呪術、他者に呪いを付与する忌むべき力。既に『一蓮托生』を通して不動の呪いを貴方に付与しておりますぞ。妙な真似をすれば、はてどうなるか」


「呪いだなんて、ずいぶんと回りくどい事をしますね。ナイフでも喉元に突きつければいいんじゃないですか?」


「当方は荒事は得意ではありませんからなぁ。そう言った事は兄上の得意分野ですぞ」


さて、不動の呪いとやらで下手に動くと大変な事になるらしい、どうしよう。

不動の呪いとは言われたが、指先を動かしても特になんともない、この場所から動く事が呪いが発動する条件なのかな。

俺が人質になってるせいでデイジー叔父さんは動けない、ロミュオも金の竜装具を使った反動なのかかなり疲弊している、お姫様にしてもロミュオにかけられている竜人を縛る呪いとやらのせいで玉座から動けない。

どうにか出来そうなのはゴッデス大蝦蟇斎さんくらいだが、あのトウテツという『暴食』と関係ありそうな肉団子とまだ戦っている最中だ。

ゴッデス大蝦蟇斎さんでも決定打に欠けているようなので、トウテツはSランク以上の魔物なのだろう、もしかしたらトウテツは魔王国で言う所の貴族級の実力を持っているのかもしれない。


「さて、勇者同盟のお三方、この方たちが追加のドラゴンが遅れた原因なのはなんとなく分かりましたぞ。そして、デイジーさんを仲間にする事も出来ないと言うのならば、始末するしかないのですが、現状の戦力で無抵抗だったとしても彼を殺す事は可能ですかな? 当方には殺す術が思いつきませんので」


「そうだね、いちいちお小言を言われるのも沢山だ。さっさと始末してしまおう。そのままそいつを抑えておけダルマシオ。そうすれば、こいつは下手に動けないからね。トウテツにでも食わせてしまえば、なのも問題もない。『暴食』の権能を持つトウテツなら何でも強度に関係なく喰い殺せる」


戌彦がちらりとトウテツの方に目をやる、まだゴッデス大蝦蟇斎さんと戦っているのを見て戌彦は小さく舌打ちをした。

『暴食』の権能、あのトウテツもエレメンタル・イーターのような存在と言う事か、道理でグロトと似た何かを感じた訳だ。

なら、そこをつつけば少しは状況が変わるかもしれない、どうせこのままじゃどうにもならないのだし、やれる事はなんでもやってみよう。


「ねぇ、戌彦」


「おや今更、命乞いですか? 無駄な事はやめた方がいいですよ、貴方の頼みの綱のこの男も貴方が人質になっていては動けないでしょうからね」


「トウテツってさ、完璧じゃないでしょ?」


俺の言葉に戌彦はギョッとした顔付きになった、結構分かりやすいな戌彦。

トウテツが『暴食』の権能を持っていたとしても、俺がグロトから預かった『暴食』の権能がある以上、完全にその権能を使いきれているはずはないのだ。


「な、何故それを、お前が知っている!? お前は何を知っているんだ!!」


「何故知っているか? 何故もクソも無いよ、戌彦。俺も持ってるんだ『暴食』の権能の欠片を。だから、トウテツが完璧じゃないと分かるだよ。そして、俺はこの場では『暴食』の権能を所持していない。友達に預かってもらってる、俺とデイジー叔父さんを殺したら、その場所は絶対に分からなくなる。暴食に嫉妬と言ったんだ、七つの大罪の権能を集めようとしてるんだろ? 何でなのかは知らないけれど、その一つが不完全なままだと困るんじゃないかな?」


「き、貴様ッ!? ぼくを、脅す気か!! この状況で、人質にされて絶対的な窮地のくせに、このぼくを!!」


「俺を拷問でもして『暴食』の権能を誰に預けたか吐かせてみる? でも、その場合は『一蓮托生シェアリング』の効果でダルマシオさんにも痛みが共有されるんじゃないかな。共有率を下げられるなら別だろうけど。そうなったら、俺の痛みはダルマシオさんにほとんど共有されなくなるけど、ダルマシオさんの痛みも俺には共有されなくなるよね。その瞬間を逃すほどデイジー叔父さんは甘くない。逆にデイジー叔父さんを拷問する? デイジー叔父さんは生半可な攻撃じゃ屁でもない。トウテツを使う? でもさ、トウテツ以外でゴッデス大蝦蟇斎さんを抑えられるの?」


「ぐぅ……」


おお、適当な事を言ってみただけだが、戌彦がぐうの音しか出してない。

口八丁でごまかしてるが、正直言えばまだ俺たちの方が絶対的に不利な状況は変わっていない。

ロミュオたちを人質にされたら、俺はその命を見捨てる事はたぶん出来ない。


「……目的の一つは達成出来てるし、もういいんじゃない? トウテツは貴重は戦力であると同時に欠ける事の出来ないピースだし。そのピース自体欠けていたけれど、その欠けたピースを誰が持ってるかが分かっただけでも、めっけもんだし」


黙々と抹茶ラテを飲んでいたフードを被った背の低い人物はつまらなそうにそう言った。

背丈や声を聞く限り子供のようなのだが、妙に威圧感があるな。

強力な勇者特権を持っているのかもしれない。

背の低い人物の言葉を聞いて、ダルマシオがあごに手を当てた。


「これは困りましたな、この状況で痛み分けとは。この場所の事を知られた以上はどうにか口封じをと思っていたのですが」


『痛み分けで満足できないなら、大負けでもすればいいもん、デイジー!! 『一蓮托生シェアリング』はわっちが引き受けてるもん!! 遠慮なくやっちまえもん!!』


「ッ!?」


突然、俺の中からマレッサの大声が響いてきたかと思ったら、その瞬間にはデイジー叔父さんの拳がダルマシオの顔面を捉えていた。

ゴッデス大蝦蟇斎さんにくっついていたマレッサはどうやら、いつの間にか俺の中に潜り込んでいたらしい。

そして、俺の代わりに『一蓮托生シェアリング』と不動の呪いを引き受けてくれたようだ、さすがマレッサだ、俺にくっついていたマレッサでなくてもとても便りになる。


「さすがマレッサちゃんだわぁん、戌彦ちゃんたちとカラフルなマレッサちゃんたちもそこから動かないでねぇん」


デイジー叔父さんはダルマシオを殴り飛ばし、勇者同盟の三人とその背後から現れた赤、青、黄色の毛玉マレッサたちの動きを牽制しつつ、俺の代わりにダルマシオとダメージを共有したマレッサの回復と解呪を同時に行う。

まるでデイジー叔父さんが数人に分身しているみたいだと思ったが、実際分身していた。

まぁデイジー叔父さんなら、このくらい訳はない。

なんとか形成逆転したと思ったその時、爆音と共にダンジョン全体が激しく揺れ動いた。

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