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185・考え事をしてると周りが見えなくなるよねって話

お姫様とロミュオがお互いの言い分を通す為に戦い始めたので、ロミュオの部下たちと共に巻き込まれないように少しその場から離れ、デイジー叔父さんたちの様子を見る事にした。

戌彦が物凄くイライラしているのが分かった、たぶんデイジー叔父さんが筋肉を育てろとでも言ったのだろう。

他の二人はフードを深くかぶったままで、顔までは分からないがのんびりティーカップを口元に運んでいる、戌彦と違ってだいぶん余裕があるように見えるがあの二人も勇者なのだろうか。

そこで、ふと思い出した。

デイジー叔父さんがこの部屋に三人の人間がいると言ってたが、ちょっと強い子が居るとも言っていた。

色んな魔獣やトウテツなんて存在を飼育している戌彦の事だとばかり思っていたのだが、戦闘を魔獣なんかに任せていた戌彦がデイジー叔父さんが言っていたちょっと強い子に該当するとは思えない、だとすると他の二人のどちらかがデイジー叔父さんの言ったちょっと強い子と言う事になる。

一人は『拡大解釈ザ・スプレッダー』と言うスキルを持っているらしいが、名前からして戦闘向きとは思えない、ならば、あの背の低い子がデイジー叔父さんの言っていたちょっと強い子だったりするのだろうか。

黒い渦巻きからトウテツを出現させたあの子が、デイジー叔父さんが言及する程強いようには見えないのだが……。

さて、改めて考えよう。

まず、竜の胎のダンジョン化の進行はあのお姫様がロミュオとカップルになった事でじきに止まるはずだ、お姫様の悲願とやらはロミュオと番になる事のはずだからこれ以上ダンジョンの主の座にこだわる事はないだろう。

次は誰がお姫様をダンジョンの主にしたのか、お姫様の様子を見るに自発的に主になったように見えるが、ロミュオ曰く誰かの入れ知恵だろうとの事、それはたぶん戌彦たちだと思うが確証はない。

あと、地上にいるダンジョン産のドラゴンたちも気になる。

表向き、この竜の胎はドラゴンが出てくるダンジョンであり、ドラゴンテイムのスキルを持つ一部の王族だけが入る事を許されている、という事になっているが実際はドラコースパティウムとジャヌーラカベッサとの通路でしかない。

更に竜の胎からテイムされてきたとされるドラゴンたちはドラコースパティウムから派遣されたドラゴンだとロミュオは言っていた。

ジャヌーラカベッサの王族がそれを知らないはずはない以上、十中八九この件に王族が絡んでいる。


「ジャヌーラカベッサの王族が竜の胎を本当にドラゴンの出るダンジョンにしたかったのかな。でもドラコースパティウムから本物のドラゴンが派遣されてくるのにそんな事をする必要あるかな? ロミュオたちが竜の胎の入り口の警備から外されたのはたぶん本物とダンジョン産のドラゴンの見分けを付けられたくなかったからかな。じゃあ、本物ではなくダンジョン産のドラゴンを地上に送っている理由はなんだろう。本物のドラゴンは無限にいる訳じゃあない、でもダンジョン産のドラゴンならダンジョンの主が居る限り延々とわいてくる、とりあえず大量のドラゴンが必要だって言う事? なんでだ?」


そこで戌彦の勇者特権を思い出す、『万能飼育』はどんな生き物でも飼い慣らし調教できる力だ。

もし、ダンジョン産のドラゴンを飼い慣らして上に送っていたのが戌彦だとしたら、戌彦たちとジャヌーラカベッサの王族は繋がっている事になる。

ドラゴンの生まれるダンジョンを本当に作り、ダンジョン産のドラゴンを地上に送る、何の為に? 


「ふむ、追加のドラゴンが遅いので様子を見に来てみれば、なんとも妙な事になっておられますなぁ、勇者同盟の方々。当方に納得のいく説明を求めますぞ」


不意に俺の背後で少し甲高い男の声がしたと思ったら、グッと肩を掴まれてしまった。

ロミュオがその男を見て、ハッとした顔になって叫んだ。


「アイツは!? いけねぇデイジーちゃん様、攻撃しちゃダメだッ!! ヒイロ坊ちゃんにも被害が出ちまうッ!!」


ロミュオの叫びを受け、デイジー叔父さんは甲高い声の男の眼前数ミリの所で拳を止めていた。

その数瞬後、止めた拳の衝撃が突き抜けて遥か後方の壁に大穴を開けていた。

破壊され大穴の開いた壁を見て、甲高い声の男は胸ポケットから取り出したハンカチで額を軽くぬぐった。


「ふぅ、良かった。もう少しで当方とこの子の顔面が潰れてしまう所でしたぞ。あぁ失敬、当方はジャヌーラカベッサ王の弟、ダルマシオ・ドス・ジャヌーラカベッサ。どうぞお見知りおきをですぞ。先ほど、どなたかが叫んでいましたが、当方への攻撃はやめた方がいいですぞ。当方に刻まれたる勇者特権『一蓮托生シェアリング』は触れている存在と命や感覚を共有する物、当方を攻撃すればそれはそのままこの子にも共有されますのでご注意を」


「あらぁん、ご丁寧にどうもぉん。あたくしはバイオレンスクレイジーサンシャインデイジーちゃんよぉん、親しみを込めてデイジーちゃんって呼んでもいいわぁん、ただし緋色ちゃんから手を離してくれたらだけどねぇん」


「遠慮いたしますぞ、デイジーさん。手を離したその瞬間には当方は叩きのめされているでしょうから。おや、よそ者だけと思っていたら先程の声はジャヌーラの男巫でしたか、しかもその部下まで居るとは、せっかくまとめて竜の胎の警備から外したというのに、まったく世の中上手く事が運びませんなぁ」


ダルマシオはため息をついて頭を軽く横に振る、どこまでも冷淡で平坦、感情らしい感情を感じられない、なんとも底が知れない男だ。

しかし、この男はたぶん勇者ではないはずだ、なのになぜ勇者特権を持っているんだ? 刻まれたとか言っていたが……。


「そうですなぁ、立ち話もなんでしょう。あそこでお茶会をしておられたご様子。当方も交えて、少々お話でもいかがですかな? 竜姫ノワール、貴女もどうぞその玉座にお戻りを。竜人を縛る呪いは未だ健在、当方の一存でジャヌーラの男巫の未来が定まるとご理解いただければ」


「おのれぇ、人の分際で我に指図する気か!?」


「いえいえ、まさかそんな事は。ふむ、もう少し簡単に申し上げましょう、そこのジャヌーラの男巫の命は当方の掌、惜しくないのであればご自由に。当方への攻撃はそのままこの子にも共有されますので、よくお考えくだされば幸いですぞ。さぁ、主の玉座にお戻りを」


「ぬぅ……」


ぎりぎりと歯噛みし、今にもダルマシオを噛み殺しかねないお姫様だったが、それをロミュオが止めた。


「すまねぇ、ノワール様。ヒイロ坊ちゃんはあっしらをここまで連れて来てくれた恩人、ノワール様の本心を知るきっかけをくだすったお方、どうか、どうかこらえてくだせぇ」


竜装具を解除し、生身となったロミュオは強力な金色の竜装具を使った反動か、その場で膝を付いて荒く息を吐きながらそう言った。

その様子を見て、お姫様は苦虫を噛み潰した様な表情で玉座に戻る。


「覚えておれ、ジャヌーラカベッサの王弟、タダで済むと思うなよ」


「これは恐ろしい。当方の願いはジャヌーラカベッサとドラコースパティウムの友好であり更なる繁栄だと言うのに。では、お茶会としゃれこみましょうか、当方は珈琲を、ミルクは多めでお願いしますぞ」


「あらぁん、ごめんなさいねぇん、ミルクはちょうど切らしてるのよねぇん」


「おや、そうでしたか。それは残念」


ピリピリとした雰囲気の中、戌彦たち三人とダルマシオ、デイジー叔父さん、そして俺の合わせて六人がテーブルの席に着いた。


「では、お話を始めましょうか」


口火を切ったのはダルマシオ、剣呑な雰囲気の中、お茶会が始まった。


「私まだこの足一杯の肉団子と戦ってるんですけど!? 無視かよ、何だよこの扱い!! さっさと死ね、この肉団子ッ!!」


少し離れた場所でゴッデス大蝦蟇斎さんが何か叫んでいた。


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