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184・ドラゴンの告白って話

つい勢いで色々と捲し立ててしまったが、チャンスではある。

なんだかお姫様が幼児退行してる感があるが、たぶんこっちが素なのだろう、と思う。

見た目と言動のギャップが激しいが、上手くいけば戦う必要がなくなるのではないだろうか。

なんか人、というか竜の恋心を利用しているみたいでなんだか罪悪感を感じるが、四の五の言っている場合ではない。


「と、とにかく、ほらお姫様!! 貴女の想いをロミュオさんに伝えなきゃ、始まらないし、終わる事も出来ない。胸に秘めたままじゃ、一生何も変わらないよッ!!」


「……わかった、言う、ちゃんと言う」


ポロポロと涙を流していたお姫様が頷きながら涙をぬぐう。

ジャジャ、本名ロミュオも竜装具カルコスを脱いで複雑そうな表情でお姫様の前に立った。


「ノワール様があっしを好いてくれてるなんて、今でも信じられやせん。だからこそ、あっしはノワール様の口から本当の想いを知りたい、どんな想いでもきちんと受け止めてみせやす。どうか教えてくだせぇ、ノワール様の想いを」


お姫様は深呼吸をしてからギュッと手を握りしめて玉座から立ち上がる。

そして、おずおずとためらいがちにゆっくりと口を開いた。


「ノワは、その、最初に会った時からロミュ兄ちゃんが好き。ノワの世話係じゃなくなってからもずっと好き、ロミュ兄ちゃんが竜の胎の地上側の守り人になった時すごく寂しかった。ほんの十年、二十年くらいの時間だったけれど、ノワには何百年にも感じるくらいに長く感じた。色々言いたい事は沢山、沢山ある、でも、今はただノワの正直な想いだけ、ロミュ兄ちゃん、大好き、ノワの番になってほしい」


お姫様の真剣な言葉を受けて、ロミュオも同じように真剣な表情になる。

眼をつぶり、大きく深呼吸をしてバシンとロミュオは頬を叩いた。


「……ノワール様のお言葉、しかと受け止めやした。あっしも男、本気の想いには本気でお応えしやす!! 本当にあっしなんかで……いや、こんな言い方は卑怯でやすね、……あっしもノワール様をお慕いしておりやす!!」


ロミュオの言葉にお姫様はパァーっと顔が明るくなるのが分かった。

よかった、どうやら上手く事が治まりそうだ。

遠くでゴッデス大蝦蟇斎さんがチッと舌打ちした気がしたが気のせいだろう。


「でも、番の件は時期尚早!! もう少しノワール様が成長なされてからにしていただきたい!! ちゃんと段階を踏んでいくのが良いかと、まずはそう、文通から始めるのが筋ってもんかと思いやす!!」


ロミュオ……まぁ確かにいきなり番ってのは考え物だが文通ってどうなんだ?

ほら、お姫様もなんか不満げな顔してるし。


「むー、文通からでいいけど、じゃあノワが何歳になったら番になってくれるの?」


「そうでやすねぇ、一応二百は越えないと、あっしにも世間体ってやつがありやすし、テネブル様にもご報告しないといけやせんもんで……」


竜にも世間体ってあるんだな。

ただまぁ、これでお姫様とロミュオは晴れてカップルになった訳だ。

後は、お姫様をダンジョンから離せば主を失ったダンジョンは徐々に縮小して消えるはず、お姫様を助けるっていうロミュオの目的はこれで達成できた、なら次の問題だ。

結局、あの勇者同盟とやらの三人が何の為にここに居たのかは分かっていない。

あと、お姫様がダンジョンの主になった理由もいまいち分かっていない、そんなポンとなれるモノなのかダンジョンの主って、それにロミュオは誰かの入れ知恵があったように思うと言っていたっけ。

そう言えば、お姫様はもう少し竜の胎と馴染めばより強力な法則を敷く事が出来るって言ってたな、そうすれば悲願が成就できるとかなんとか、ダンジョンである竜の胎と馴染む事がなんで悲願成就に繋がるのか分からないが、お姫様の目的はたぶんロミュオと番になる事だろう。

どんな法則を強制するつもりだったのやら、それはそれとしてダンジョン産のドラゴンが地上に送られていたのも気になる。

ロミュオが言うには本来はドラコースパティウムのドラゴンが地上に派遣されていたはずだ、それが途絶えてこの竜の胎のダンジョンから生まれたドラゴンが地上に送られていた、それは誰が何の目的でそうしていたのか。

確実にジャヌーラカベッサの王族が絡んでいる、もしかしたらドラコースパティム側の誰かも関わっているかもしれない。

ドラゴンがどの程度の規模、間隔で派遣されているのか分からないが、派遣した覚えのないドラゴンが地上に増えている事を把握していない訳はないと思うが、ドラコースパティムからはこの竜の胎を通らないと地上に出れないのだとすれば、情報も一方通行になるんじゃないだろうか。


「はぁ、考える事が多い……。あれこれ複雑に考えるからごちゃごちゃになるんだよな、もっと簡単に、単純化しよう」


そう口にした瞬間、お姫様がロミュオにドラゴンブレスを放ち、灼熱の炎が再び辺りに広がった。

いや、いきなり何で!? さっきまで番になるとか文通とかそう言う話をしてたんじゃないのか!?


「ちょ、お姫様!? な、なんでいきなりドラゴンブレスをロミュオさんにぶちまけてるの!? また照れ隠しドラゴンブレス!?」


「安心してくだせぇヒイロ坊ちゃん!! こいつぁ、照れ隠しなんかじゃありゃあせんぜ!! こいつぁ、あっしとノワール様、お互いの言い分を相手に飲ませる為に必要な儀式なんでさぁ!!」


お互いの言い分を相手に飲ませる為の儀式!? どういう事だ、訳が分からない。

しかも今のドラゴンブレスの威力は相当な物だったようで、竜装具カルコスをいつの間にか着込んでいるロミュオだったが、一部が破壊されてロミュオの地肌が見えていた。


「我が望むはロミュオと番となる事!! しかし、二百までは到底待てぬ!! ゆえに、今すぐに力ずくでロミュオと番となる!! 既成事実があればパパだって何も言えぬわ!!」


「順序ってものが大事なんですぜ、ノワール様!! どうせなら、テネブル様にも認めていただきたいでしょう!? まずは文通からでずぜ!!」


「聞く耳持たぬ!! 我が前に屈するがよいわ!!」


「相変わらずの分からず屋でやすね!! お前たち、お前たちの竜装具の力をあっしに!!」


ロミュオの部下たちが竜装具を解除し、掌をロミュオに向けると掌から光の玉がロミュオ目がけて飛んでいき、ロミュオの胸元の宝玉に入っていった。

その瞬間、ロミュオが装着していた竜装具カルコスが眩く光り出した。


「竜装具よ、今こそその力を解放しあっしに力を!! 昇華解放『クリューソス』!!」


光りが収まると、そこには金色に輝く竜の意匠が施された全身鎧を着こんだロミュオが立っていた。

さっきまでとはまるで違いロミュオから肌がピリピリとする感覚があった、今のロミュオは恐らく竜装具カルコスを着ていた時よりもずっと強いであろう事がうかがえた。

チューニーの人たちはアルギュロスという竜装具を装着していたが、それ以上の力を感じる。


「まずは文通から、きちんと段階を踏んでいきやしょうノワール様ッ!!」


「己が意思を通したいのなら力を示し、我を倒してみせよ!!」


凄まじい衝撃や地響きを伴いながら壮絶な戦いを始めたお姫様とロミュオ、これがドラゴンのコミュニケーションなのだろうか、ドラゴンってよく分からないなと俺は少しため息をつくのだった。

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