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182・竜の感覚ってよく分からないよねって話

「あのぅ、ヒイロ坊ちゃん。なんでデイジーちゃん様はあのいかにも怪しい三人組とお茶会なんて事をやってんですかい?」


唐突に戌彦たちとお茶会を始めたデイジー叔父さんを見て、ジャジャはかなり困惑していた。

俺だって困惑したがデイジー叔父さんの事だ、恐らく何か理由があるに違いない。


「うーん、俺にもさっぱりだけどデイジー叔父さんが一瞬放ったすごい殺気を考えると、たぶんあの三人が戦闘に加わらない方が俺たちにとって都合が良いんだろうね。倒す事は出来ても、たぶん俺たちにとって致命的な何かが起きるんだと思う。だから、デイジー叔父さんは無理やりにでもお茶会の席につかせたんじゃないかな」


「ヒイロ坊ちゃんがそう言うなら、きっとそうなんでござんしょう。なら、デイジーちゃん様があの三人を足止めしている間にノワール様を急ぎお助けしねぇとッ!!」


赤褐色の全身鎧を纏っており、顔は分からないが真面目な声色のジャジャに俺は迷いつつも尋ねてみた。


「ジャジャさん、一応聞くんだけど、あのお姫様を助けるってどうやるの? 気のせいかも知れないけど、俺にはあのお姫様が無理やりダンジョンの主をしているようには見えないんだけど……」


「へい、おそらくノワール様は自分の意志でダンジョンの主をしてるはずでやす、ただそれは誰かの入れ知恵があったように思えるんでさぁ。声を大にしては言えやせんが、ノワール様は白馬の王子様ってやつに憧れる乙女チックな所もありやす、理想の婿を生み出せるとでも言われたんじゃねぇでしょうか」


「すっごく失礼な事いを言いますけど、あの外見で?」


「へい、あの外見ででやす。案外可愛らしいでしょう? まだ百六十程度の子供でやすからね、なんとも夢見がちなんでさぁ」


俺が見えているあのお姫様とジャジャが見えているお姫様が同一なのかどうか、少し自信がなくなってきた。

ジャジャにはどうやら、あのお姫様が白馬の王子様を夢見る可愛らしい乙女に見えているようだ、まぁ、竜の感覚だから俺には理解出来ないだけなのだろうけれど。


「そんなだから、自分の理想の婿を生み出せるダンジョンはノワール様にとっては都合のいい場所なのかもしれやせん。でもダンジョンの主ってやつはダンジョンを稼働させ続ける為の燃料である必要もありやす、普通のダンジョンは勝手に拡張なんかされやしやせんから、維持に必要な魔力も一定でやすが、広がり続けるこの竜の胎を維持し続けるのはいかにノワール様と言えども不可能、いずれ魔力が枯渇して死んじまう、それだけは絶対に避けなくちゃあいけねぇ!! だから言葉で説得して、それがダメなら力ずくでさぁ!!」


「話を聞いてくれたらいいんだけどなぁ」


「なぁに、あっしも小さい頃からノワール様の面倒を見ていたんでさぁ。立場ってもんがあるからこその威厳のある口調や態度でやすが、あぁ見えて昔に死にかけの魔獣を見つけて、これ以上苦しまぬようにと、ドラゴンブレスで痛みを感じる間もなく息の根を止めてあげるくらいにお優しい方なんでさぁ。きちんと事情を話せばわかってくれやすよ」


「俺の知ってる優しいと全然違うんですけど!?」


どうしよう竜の感覚を理解出来そうにない、これ絶対に対話で解決しない流れだ。

俺は確信めいた予感を胸にジャジャ達と共に玉座に座るお姫様の元へと走った。


「ふん、任せろと豪語しておきながらその体たらく、情けなし、とは言うまい。その男の力を思えば、戦わないという選択をさせただけでも十分と言えよう」


お姫様はデイジー叔父さんとお茶会をしている戌彦たちを一瞥してそう言い放ち、次にジャジャに目を向けた。


「脆弱なるロミュオとその部下どもがここに来る事が万が一にもないようにと小手先の策をろうしたが、その男の前では意味を為さなかった。なれど、今少しの時が経てば、この竜の胎はより我に馴染むであろう。そうなれば、より強力な法則を敷く事も可能となる。その時こそ我は真のダンジョンの主となるのだ、その時こそ我が悲願が成就する時。邪魔立ては無用と心得よ、ロミュオよ。貴様たち程度で我を倒すなど不可能と知れい!!」


お姫様は怒号と共に強烈な魔力を放出し、その魔力の勢いでダンジョンがズンッと揺れ動き、天井からパラパラと小石が落下してきた。

この魔力の圧、並みの魔物なら気絶するレベルだろう、俺はゴッデス大蝦蟇斎さんがくれた守護の魔剣のおかげで気を失わずに済んだが、それでもかなりのプレッシャーを感じた。


「そんなに虚勢を張らずとも、あっしらはノワール様の味方ですぜ!! どうか、あっしの話を聞いてくだせぇ!! ノワール様が思っているほど、ダンジョンってのは簡単なもんじゃあねぇんでさぁ!! 今この瞬間も大地を侵食して広がり続ける竜の胎を御しきれる程、ノワール様は成熟しちゃあおりやせん!! 主なんかやめて、どうかあっしらと一緒にこのダンジョンから離れやしょう!!」


「ほざくでないロミュオ。我の幼少のみぎりに多少世話を焼いたからと言って、我を侮るでないぞ。ダンジョンの一つや二つ御せずして何が暗黒竜テネブルの娘か!! 我は既に齢百六十を越え、番を持ってもおかしくない成竜となっておるのだ、いつまでも我を幼竜と愚弄するでないわ!! もはや言葉なぞ無用、我をこの場から引きずりだしたいならば、力を示せ!! 我を打倒せし者にこそ我は従おう!!」


なんとなくだが、お姫様の口振りからしてこれって……。


「お姫様ってもしかしてジャジャ、ロミュオさんの事好きだったりする?」


俺の言葉にお姫様の動きが完全に止まった。

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