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180・お茶会と戦いどっちがマシって話

「こいつはちょっと、ヤバいかも。ラビリンスに居たあのでっかいのよりヤバさがだんちだわ」


ゴッデス大蝦蟇斎さんが突っ込んで来るトウテツ目がけて瞬時に創造した槍状の魔剣を音を置き去りにする程の勢いで放つ。

凄まじい速度で飛ぶ魔剣は床や天井を衝撃波で破壊しながら、トウテツの口の中に入り込み、そして、何も起きなかった。

爆発も破壊も何も起きず、魔剣を飲み込んだトウテツは何事もなかったの如く、勢いそのままにこちらにどんどん近づいて来る。


「うげ、マジで!? 私の魔剣が喰われたッ!?」


「ふふふふ、その程度の魔剣でぼくのトウテツが止まる訳がないよ。なんでもむさぼり喰う最高のボクのペットさ!! 魔法だろうがスキルだろうが、なんだって喰らい尽くすんだよ!!」


放った魔剣を飲み込まれ驚くゴッデス大蝦蟇斎さんの姿を見て、不敵な笑みを浮かべる戌彦。

ゴッデス大蝦蟇斎さんの魔剣の凄さは多少なりわかっているつもりだ、さっきの魔剣がダンジョンを九階層まで一気にぶち抜いた時の物と比べてどの程度の物だったのかは分からないが、それでも尋常ではない威力があったのは確かなはず、それでもトウテツには決定打どころか傷一つ付けられなかったと言うのは中々信じがたい光景であった。


「ジャジャちゃんたち、ちょっと離れてた方がいいわねぇん。その鎧を着ててもアレはどうしようもないわぁん」


「い、いや、あっしらはノワール様を助けにここまで来たんでさぁ、命の危機だからって引く訳にゃいかねぇんでやすよ!!」


デイジー叔父さんに離れるよう言われたジャジャはそれを拒否した。

お姫様を助けに来たと豪語するジャジャではあるが、当のお姫様自身は別に助けを求めているように見えないのだが、どうしたものか……。


「だったら、ノワールちゃんをお願いねぇん。あのトウテツちゃん、戌彦ちゃん、その後ろの二人はあたくしとゴッデス大蝦蟇斎ちゃんでなんとかするから、囚われのお姫様の方は任せるわぁん、緋色ちゃんも手伝ってあげてねぇん」


「――へいッ!! お任せくだせぇ、あっしらの姫はあっしらの手で必ず助けてみせまさぁ!!」


「俺に出来る事はあまりないけど、頑張って手伝うよ。デイジー叔父さん、ゴッデス大蝦蟇斎さんも、気を付けて!!」


そう言った俺に向かってゴッデス大蝦蟇斎さんが一振りのナイフとマレッサを投げて寄越す、刃の部分に触れないようにナイフの柄を掴み、反対の手でマレッサをキャッチした。


「あっぶな、手を切ったらどうするんですか!!」


『分神体とは言え、神を投げるなもん!! 不敬もんよ!!』


「二人ともめんごめんご。それ守護の魔剣ね、持ってるだけで結界張ってるくれるから、しっかり握っててね、あと危ないからマレッサちゃんもヒイロ君にくっついててねー。自分とヒイロ君を守るくらいできるでしょ?」


「それはどうも」


『まぁ、それくらいは造作もないもん。アレはなんか怖いもんから、任せるもん』


「あぁ、そうそうその魔剣、使い過ぎると魔力とか生命力とか吸い尽くされて死ぬから、ほどほどに」


「危ない物渡さないでください!!」


ゴッデス大蝦蟇斎さんはケラケラと笑いながら数メートルはある巨大な魔剣を片手に、凄まじい速度で突っ込んで来るトウテツに向かって、同じく凄まじい速度で走り出した。


「おらぁあああああああ、串刺しがダメなら引っぱたいてやらぁああああああッ!!」


「グボォオオオオオオオオオンッッ!!」


不気味な雄叫びをあげて迫り来るトウテツの頭部にゴッデス大蝦蟇斎さんは鉄塊に等しい巨剣の腹を思い切り叩きつけて地面にめり込ませ、その突進を止めた。

だが、その程度でトウテツは終わらない、叩きつけられ巨剣がめり込んでいる頭部が瞬く間に口に変化し、巨剣をバリボリと噛み砕きゴクリと飲み込んでしまう。

ゴッデス大蝦蟇斎さんは素早く巨剣の柄を手放してトウテツを蹴りつけ、その反動で距離をとると新たな魔剣を二振り創造した。


「アンタ好き嫌いなく何でも食べれるタイプね。ブクブク太ってみっともない、ちょっと削ってダイエット手伝ったげるわ」


「ゴッデス大蝦蟇斎ちゃん、その子は任せてもいいかしらぁん? あたくしは戌彦ちゃん達のお相手をするわぁん」


「もーまんたいですよー、お姫様を助ける邪魔をさせないようにって事ですね、お任せあれ!!」


デイジー叔父さんはトウテツを抑えるゴッデス大蝦蟇斎さんの横を通り、戌彦と後ろに控えている二人の人物の元にゆっくりと進む。


「あはぁん、お話をしましょ。紅茶はお好き? それともコーヒーの方が好みかしらぁん? 緑茶もいいわよねぇん、あたくしはあまぁい香りのダージリンなんかが好きよぉん。お茶菓子は何がいいかしらぁん、スコーン? それともクッキー? 色々と聞きたい事があるのよねぇん。さぁ、語り合いましょ」


いつの間にかデイジー叔父さんは片手にティーポット、片手にティーカップを持ち、優雅にティーカップに紅茶を注ぎながら戌彦たちをお茶会に誘う。

余りに場違いな言葉と行動、だがデイジー叔父さんが発する有無を言わせぬ威圧感に戌彦は無意識的に一歩下がっていた。


「な、なにを言ってるんだコイツ? おかしいんじゃないのかッ!? 今ぼくたちは殺し合いをしてるんだぞ!!」


「あらやだぁん、殺し合いだなんて野蛮だわぁん。もっと平和的にお茶しましょ、それが戌彦ちゃん達の為にもなると思うわよぉん?」


戌彦たちの前で立ち止まり、デイジー叔父さんはこれまたいつの間にかお茶会セット、テーブルとイスをセッティングし、ゆっくりとイスに腰かけた。


「さ、どうぞ、お座りになってぇん。戌彦ちゃんたちがあたくしとお話をしてる間はあたくしは戦闘に参加しないわぁん。あたくしとのお茶会を断るなら、とても残念だけれど、あたくしは力を振るわざるを得ないわねぇん」


「馬鹿が、そんな事をする訳がないだろ!! ぼくのペットがアイツらで全部だなんて思っているのかい!! トウテツ程ではないにしても、まだまだ強力なペットは沢山いる――」


デイジ―叔父さんに向かって、新たな魔物をけしかけようとした戌彦だったが、その手がビタッと止まる。

その場に居た全員の時がほんの一瞬止まった様な感覚、迂闊に動けばその瞬間殺される、そんな凄まじい殺気がこの場を支配していた。

その殺気はすぐに収まったが、冷や汗を流す戌彦と他の二人にデイジー叔父さんはにこやかな笑みを浮かべて着座を促す。


「ね? お茶会、しましょ」


聞き分けの無い子供に言い聞かせるような優しい声色でデイジー叔父さんは戌彦たちに話しかける。


「私はお任せするかな、お茶請けはクッキーがいいかな」


「……抹茶ラテ」


戌彦を除いた二人が席に着いたのをみて、戌彦は慌てふためく。


「な、なにをしているんですか貴女たちは!? そいつは世界を破壊する者、ぼくたち勇者同盟の敵なんですよ!! 何のんきにお茶なんてしようとしてるんですか!!」


「戌彦、この人と戦うのとお茶するのどっちがマシかな? この人、私たち三人を同時に相手しても、たぶん……いや、絶対殺せるかな? 目的を果たせないで犬死したいのかな?」


「……早く座ったら?」


二人に促され、戌彦は嫌々ながら席に着くのだった。

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