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174・竜の胎の中って話

竜の胎へと繋がるらしい大穴を移動する事、数分。

開けた場所に出たのだが、先程の名も無きダンジョンとは周りの様子が明らかに異様に変化しているのが分かった。

床や壁、天井にいたるまでが何らかの肉で構成されており、血管の様な物も所々に伸びていて脈打っていて、どうにも恐ろしく巨大な生き物の中に入り込んでいる気分だ。

だめだ、どうにも視覚的に気持ち悪い、グロ系は苦手なんだよなぁ。

軽い吐き気に襲われつつも、体調回復の魔法は断った。

魔力消費は依然として増加したままのようで、俺の体調程度で魔法を使わせてしまうのはためらわれる。


「竜の胎って随分と生々しい場所なんですね……。申し訳ないけど、見た目がなかなかキツい……」


「竜の胎って名前は伊達じゃないって事でやす。まぁ生々しいって言うか肉々しいっていうのは仕方がないんでさぁ、材料が海竜帝レヴィアタン様のお体、行っちまえばハラワタを使ってるもんで」


「ハラワタ……道理で。っていうか、そのレヴィアタンって人の死体そんな勝手に使ってドラコーなんとかと地上を繋げて良かったんですか? 色々怒られそうですけど……」


異空間と地上を結ぶ通路になるほどのハラワタって一体、とも思ったが異世界だし、とんでもなく巨大な存在が居てもおかしくはないだろう、背中に監獄を背負ったまま飛ぶドラゴンなんかもいるんだし。


「いえいえ、海竜帝レヴィアタン様はご健在でやす。たかがハラワタを引っ張り出した程度で、海竜帝レヴィアタン様は死にゃしやせんぜヒイロ坊ちゃん。まぁ、ハラワタの通路とは言え、実際は魔法で空間捻じ曲げてやすんで、さすがに全てが海竜帝レヴィアタン様のハラワタって訳でもねぇんですがね」


「いや、ハラワタを引っ張り出されて生きてるの!? ドラゴンすごっ!?」


『まぁ、竜種の生命力は桁違いもんからねぇ、心臓とか頭が無くなってもしばらくは生きてるんじゃないかもん? 神に反逆した竜の連中は頭だけでも神を食い殺してたって話もん』


「それはもう生き物としてどうなのってレベルだな……」


ドラゴンって凄いんだなぁ、そんな事を考えながら竜の胎の中を歩いて進んでいると、見るからに幼い見た目のドラゴンが姿を現した。

ガルルルと唸っており、こちらを威嚇しているようだが何とも可愛らしく、あまり怖くない。

まぁ、ドラゴンとはいえ、こんなに小さいなら頭の一つでも撫でてみたいなる。


「こいつぁ、このダンジョンで生まれたドラゴンみたいでやすね。アレはダンジョン産のドラゴンなんで、どの血脈とも繋がってはいやせん。どうぞ気がねなく始末しちまってくだせえ」


始末って……、確かにダンジョンで生まれた魔物ではあるんだし、敵意むき出しだし、襲って来るなら始末するしかないけれど、襲ってこないならむやみやたらと始末しなくてもいいんじゃないだろうか。

そんな事を考えていたら、妙にウキウキなゴッデス大蝦蟇斎がジャジャに話しかけていた。


「ねぇねぇ、あの子ってダンジョン産まれのドラゴンって事なら私が貰ってもいいわよね? ドラコースパティウムから派遣される人権、って言うか竜権? のあるドラゴンじゃないやつよね?」


「ま、まぁ構いやしやせんが、ドラゴンテイムのスキルがないとダンジョン産とは言えドラゴンはテイムできませんぜゴッデスの姐さん」


「もーまんたいよ。そういうスキルが付与された魔剣を作るだけだから」


「へ?」


ジャジャの心配などどこ吹く風な様子のゴッデス大蝦蟇斎さんは、唐突に掌から細身の禍々しいオーラを放つ剣を作り出した。

俺が見ても分かるようなヤバめのオーラを放っているのだから、かなり強力な魔剣のはずだ。

マレッサが少し呆れた様子でゴッデス大蝦蟇斎さんを見ているのに気付いた、たぶん今までも同じようなノリで魔剣を作りまくっていたのではないだろうか。

作り出した魔剣をウキウキで高く掲げ持つゴッデス大蝦蟇斎さん。


「竜飼い魔剣ドラゴテイム!! まんまだけど、まぁいいわ。これで切られたドラゴンは私に懐くって訳よ」


自分の思った通りの魔剣を作り出す勇者特権『魔剣創造』、望んだスキルが付与されている魔剣、と言うていにすれば色々と好き放題に出来るみたいで汎用性がハンパない、チート過ぎないかアレ。


「さードラゴンちゃーん、お姉さんと仲良くしましょー。ドラちゃんがいいかなー、ゴンちゃんがいいかなー、強制的になつき度マックスになるから安心していいわよー」


ドラゴテイムを片手にルンルンな様子でドラゴンの子供に近づいていくゴッデス大蝦蟇斎さん、その様子はまるで仕事疲れの果てに犬や猫なんかの動物に癒しを求めている社畜のように見えて、なんだか少し憐れだった。

そんなゴッデス大蝦蟇斎さんにデイジー叔父さんが声をかけた。


「気を付けてねぇん、ゴッデス大蝦蟇斎ちゃん。その子、見た目の割に強いっていうか、たぶんその見た目で獲物を騙す系の子よぉん」


「ははは、そんな、まさか。こんなに可愛いのにそんな事ある訳ないですよー。さぁさぁ、お姉さんとこの子になりまちょーねー」


ヘラヘラと締まりのない笑顔でドラゴンの子供との距離を詰めていく様子は逆に恐怖であった。

あと、人前でそう言う赤ちゃん言葉を使うのはどうかなって思う。


「三十路の赤ちゃん言葉はなんだか心がつらくなるのでやめてくれません?」


「こっちの心がつらくなる事言わないで!! まだ三十路前よ!!」


俺の言葉になぜか激昂したゴッデス大蝦蟇斎さんの大声に反応したのか、いきなりドラゴンの子供の小さな体からスッと全身タイツを着込んだ成人男性のような体が生えてきた。

ドラゴンの子供を頭に被ったひょろ長い人間の様にも見えてなかなかにシュールである。

そして、近づいてきたゴッデス大蝦蟇斎さんに喰らいつこうと、可愛らしかった竜の口の中から狂暴な顔付きの別の竜の顔が現れた。

俺が危ない、と言おうと思った瞬間。


「チェンジで」


そう言い放ち、ゴッデス大蝦蟇斎さんは魔剣ではなく素手でその竜を八つ裂きにしてしまった。

体を魔剣化しているとは言っていたが、素手で竜を切り裂けるとは思ってもいなかったので、ちょっとビックリした。


「だ、大丈夫ですか、ゴッデス大蝦蟇斎さん!?」


「ん? あー、ヘイキヘイキ。ちょっと血が付いたくらいだし。ドラゴンをお供にするにしてもアレはないわー、擬態型とか無いわー。せめてロリとかショタとかイケメンとか渋いおじ様とかに変身するならまだしも、普通にエイリアンじゃん。次行くわよ次」


「ゴ、ゴッデスの姐さん、素手で竜の鱗を切り裂くだなんて……、強いとは思ってやしたが、ここまでとは、おみそれしやした。擬態型なんてへんちくりんなドラゴンが生まれてるって事はダンジョンの主は十中八九、ノワール様で間違いねぇ。てことはノワール様はダンジョンの主として竜の胎のダンジョン化の一端を担わされていると見ていいでしょう。なんとかダンジョン化した竜の胎から連れ出せれば、ダンジョンの主不在でダンジョン化は治まって、ダンジョンもいずれ霧散していくはずでやす」


「じゃあ、まずはノワールってお姫様の救出からだね。その後の事はその後で考えよう」


「へい、お願いいたしやす。魔法の地図によると竜の胎は横に広がるダンジョンみたいでやすね、階層を降りる必要はないんで、ひたすらに奥を目指すだけで良さそうでさぁ」


いや待て、擬態型のドラゴンを生み出すダンジョンの主ってなんだ?

それに、まだ気になる事が残っていた、名も無きダンジョンの方で法則が変更された事だ。

ゴブリン大将軍が法則を変えた可能性もあるが、タイミング的にはドラゴン似の魔物が出て来ていた時だったし、恐らくダンジョンの主がノワールってお姫様に変わった後だ。

魔力の消費量を増加させたり、デイジー叔父さんを弱体化させたり、明らかにこちらの邪魔というか潰しにきている感じがする。

なんだか、ややこしい事になりそうだなと思いつつ、俺たちは竜姫ノワールを救う為にダンジョンの奥に向かって歩き始めた。

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