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169・ほかの勇者はどうしているのかって話13

「ふわぁ、良く寝た。あ、マレッサちゃんオハヨー」


真っ暗な空間の中、左目に眼帯を付け、色あせたジャージを着た女性、ゴッデス大蝦蟇斎が呑気に毛玉姿のマレッサに挨拶をした。


『オハヨー、じゃないもん!! お前がラビリンスをぶっ壊したせいで生き埋めになってから何日経ってると思うもんか!!』


『ラビリンス』と呼ばれるダンジョンをゴッデス大蝦蟇斎が魔剣創造の勇者特権で破壊した為に二人はその瓦礫の下敷きになって身動きが取れない状態になっていた。


「ほんの二、三日くらいじゃない? いや、ほら自分って体を魔剣化してるからお腹も空かないし喉も乾かないから、時間間隔がちょっと狂っちゃってるのよねー」


『一週間は経ってるもん!! 何が悲しくて神の分神体であるわっちがこんな真っ暗な地中で生き埋めなんて生き恥晒さなくちゃならないもんかー!!』


「別に誰も見てないから晒されてはいないんじゃない? ネットで晒されて、炎上するよりはるかマシってもんよマレッサちゃん」


「たまに言ってるけど、そのネットってなにもん? それになんで晒されたら燃えるもん? お前の国は火あぶりの刑でもある野蛮な国もんか?」


「うーむ、説明が難しい。とりあえず、世界規模でやり取りが出来る伝達系の魔法の一種って思ってもらえたらいいかしらねぇ。炎上は、まぁなまじ平和が続いたもんだから野蛮な娯楽に飢えてるんでしょうね。危険の及ばない安全な場所から自分の正体が一切バレずに悪とされる存在を一方的に殴ってるなんて、はりつけにされてる人に石を投げるのとそう変わらないし、アナログな暴力かデジタルな暴力かの違いでしかないもんねぇ」


『魔法技術が存在しない世界の在り方はわっちには想像もできないもんけど、随分とおっかない所もんね、お前の世界は』


マレッサはなかば呆れつつそう答えた。

そんなマレッサの言葉を聞きながら、ゴッデス大蝦蟇斎は新たな魔剣を創造し始める。


「そう? 人間がいるなら、どんな世界も似たり寄ったりだとは思うけど、ね!!」


ドゴンッと唐突に魔剣を爆発させ、周囲に空間を作るゴッデス大蝦蟇斎。

その突然の出来事にマレッサは慌てふためいた。


『ぎゃあああああ、いきなり何するもんか!?』


「いや、そろそろマレッサちゃんの愚痴も聞き飽きたし、『ラビリンス』のクソっぷりへの怒りも治まったから、いい加減に動こうかなって思って爆発する魔剣で周囲の土を吹き飛ばしたんだけど」


『自分やわっちを巻き込んで爆発させるなもん、おバカ!!』


「まぁまぁ、今の爆発じゃちょっと足りなかったみたいだから、もう少し威力強めので一気に地上に行くからもうちょっと我慢してね」


そう言って、ゴッデス大蝦蟇斎は先程よりも更に強力な魔剣を創造する。

何が起こるのかを察知して、マレッサは声をあげたが、もう遅かった。


『いや、ちょ、待っ――』


「魔剣は爆発だーーー!!」


マレッサの声を無視してゴッデス大蝦蟇斎は足元に力強く魔剣を突き刺し、魔剣を爆発させた。

ズガガガガァアアアアンッ!! と爆音を轟かせ大爆発を何度も巻き起こしながら、ゴッデス大蝦蟇斎とマレッサは一気に地上へと向かった。

連続した爆発によって、瓦礫と共に大量の土砂を巻き上げて地上に戻ってきたゴッデス大蝦蟇斎とマレッサ。


「ぺっぺっぺっ、口に土入った、気持わる、ぺっぺっ!!」


『む、無茶苦茶もんこいつ……』


「地上に出れたからもーまんたいよね、マレッサちゃん。さて、っと……」


地上に出たゴッデス大蝦蟇斎の目の前にはモンターニュネールが誇る山岳騎士団の一個大隊の陣地があった。

地下の爆発の衝撃でテントは倒れ、馬は恐慌状態となり多少の混乱状態であった。

彼らはモンターニュネール国が管理していたSランク指定の超危険ダンジョン『ラビリンス』の崩壊事件の調査の為にここに駐留していた。

ラビリンスの崩壊跡地から大爆発と共に現れたゴッデス大蝦蟇斎を山岳騎士団団員たちが物凄い怪訝な表情で見つめる。


「そこの女、何故そんな所から出てきたんだ?」


「今の爆発、もしやお前が?」


「ちょっと名前と住所、所属など詳しい事を詰め所でお聞かせ願えますか?」


「そんな事は無いと思いますが『ラビリンス』崩壊に関して、何かご存じでは?」


ゴッデス大蝦蟇斎はじりじりと迫ってくる山岳騎士団団員たちを前に滝の様な汗を流しながら、ゆっくりと後ずさる。


「い、いやぁ、何と言いますか、あはははは」


『ラビリンス』を破壊したのが自分だとバレたらヤバイ。

物凄い怒られる、こんないい歳してガチ目に怒られるのはさすがにへこむ、そう考えたゴッデス大蝦蟇斎の取った行動は実に短絡的だった。


「うぉおおおおお、魔剣煙幕ぅうううううう!!」


ゴッデス大蝦蟇斎が一振りの魔剣を地面に投げつけると、その魔剣はパキィンと音をたてて砕け散り、一気に白い煙が広がって周囲一帯の視界をゼロにした。


「くそ、煙幕だと!? 怪しい、怪し過ぎる!! 総員、あの女を最重要参考人として、拘束せよ!! 絶対に逃がすな、多少の怪我は致し方なしだ!!」


「「「「承知!!」」」」


一旦、魔剣の力で空中に逃げたゴッデス大蝦蟇斎は焦りつつも新たな魔剣を創造し、その柄を握りしめた。


「ヤバイヤバイヤバイ、どうしようマレッサちゃん!! この連鎖爆発式の十連魔剣をばらまいて、何かも吹っ飛ばして証拠隠滅とかしちゃダメかな!?」


『うわぁ、コイツ罪に罪を重ねるつもりもん。いいから、とっととここから離脱するもん。別の国に移動した方がいいもんね。オラシオなら外交的圧力かけて罪を不問に出来るかもしれないもんから、マレッサピエーに行くといいもん」


「え、マジ!? 分かった、すぐ逃げるわ!!」


ゴッデス大蝦蟇斎は背中から翼型の魔剣を生やして、その場から、モンターニュネール国から逃げ出し、空路にてマレッサピエーを目指す。

その途上でゴッデス大蝦蟇斎はジャヌーラカベッサの首都であるジャヌーラトーロ上空に差し掛かる。


「ねぇねぇ、マレッサちゃん。あそこってなんの街? 結構大きいけど」


『ん? あれはジャヌーラトーロもん。ジャヌーラカベッサの首都にして、竜の胎と呼ばれる竜を生み出すダンジョンがある珍しい街もん』


「竜を生み出すってどういう事?」


『ダンジョン内で出てくる魔物はダンジョンの主に影響を受けやすいもん。ラビリンスでも巨人種の魔物が出てたはずもんよ。ジャヌーラトーロが擁する竜の胎は竜がダンジョンの主もんから、ダンジョン内では竜が発生しやすいもん。それらをテイムする事でジャヌーラカベッサは竜騎士を数多く輩出してるもん』


「つまり、竜をペットに出来るダンジョンって事ね?」


『あ、なんか嫌な予感がするもん』


ゴッデス大蝦蟇斎の返答にとてつもなく嫌な気配を感じ取ったマレッサ。

そして、その予感は的中してしまう。


「育てたら後々超美形の人型になったりするものよね、竜って」


『いや、どこ情報もんか、それ?』


「という訳でちょっと寄り道しよっか、マレッサちゃん」


『お前、ラビリンスぶっ壊した張本人って分かってるもん!? まだそんなに経ってないのに国が管理するダンジョンに潜ろうとするとか理性溶けてるんじゃないかもん!? だいたい、竜の胎はジャヌーラカベッサが管理するダンジョンもん、ドラゴンテイムのスキルを持つ王族関係者以外は中に入る事は許されてないもん!!』


「わかった、じゃあバレないように一気に行って一気に逃げればオーケーよね!! それもオラシオ宰相が外交圧力でうやむやにしてくれるわよね!!」


『分かってないもんコイツ!! もみ消し要求とか最悪もん!!』


「大丈夫、街中には突っ込まないから、ちょっと離れた場所からそれっぽい魔力溜まり目がけて突っ込むだけだから、先っちょだけだから!!」 


『訳わかんない事言うなもん!!』


「レッツ、テイム、ドラゴーーーーーン!!」


そう言い放ち、ゴッデス大蝦蟇斎はダンジョンと思われる魔力溜まり目がけて、一気に急降下を始めた。

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