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163・ダンジョンって不思議な所って話

どうにも人型の魔物と戦うのは苦手というか忌避を感じてしまう。

オークカイザーさんが大きな人型だった事もあるが、どうしても人間を意識して何とも言えない感じになる。

それでも襲いかかってくる以上は倒す以外にないのだから、慣れるしかないだろう。

名も無きダンジョンの地下4階層では通常のゴブリンに加えて、より巨体になったホブゴブリンや武器や防具を装備しているゴブリンソルジャー、狼に乗っているゴブリンライダー、杖を持ってローブを着こんだゴブリンマジシャン、弓矢を装備しているゴブリンアーチャー、歌と踊りで仲間を鼓舞するゴブリンダンサー、何故か日本の鎧武者の恰好をしたゴブリン武者なんかが居た。

場違いなゴブリンが居た気もするが、隊列とか作戦もなくどのゴブリンも雄叫びを上げて突っ込んでくるだけだったので、対処はそこまで難しくはなかった。

アーチャーやマジシャンが突っ込んできちゃダメだろ。

雑なAI設定をされたゲームみたいな挙動だなと、思っているとジャジャがゴブリンたちの変な動きの説明をしてくれた。


「ダンジョン内で生まれた魔物の性能は基本的にダンジョンの主によって左右されやす。頭のいい魔物が主ならダンジョン内に居る魔物も賢く、力の強い魔物が主なら同じように力が強くなる傾向にあるんでさぁ。だから、たぶんこのダンジョンの主は脳筋で突っ込むしか能のない魔物って事が分かるんでやす。ただまぁ、あっしらにゃ物量で押されたらどうにもならないんで、この階層までが精いっぱいでやすがね」


いつもなら倒したゴブリンたちから装備や高値で売れそうなアイテムを漁るらしいのだが、今回はダンジョンの攻略を主な目的にしているので、余分な物は取らないようにしているとも教えてくれた。

倒されたゴブリンの死体を見て、軽く吐き気を覚える。

血の臭い、断末魔の叫び、広がる臓物、グロ系の映画とか見てもそこまで気持ち悪いとは思わないのだが、リアルで見るとさすがにキツい、申し訳ないが精神を安定させる魔法をかけてもらい、なんとか平静を保つ。

ゴブリンの死体なんかはしばらくすると、ダンジョンの床に沈んで消えていくそうだ。

どうやら、ダンジョンから生まれた物は死ぬとダンジョンに還っていくらしい。

ゴブリンたちが装備している装備類も同じようだ。


「ゴブリンたちの装備してる武器とかもダンジョンが一緒に生み出してるの?」


気になった事を尋ねるとジャジャは少し渋い顔をした。


「いやぁ、それなんですがね、実の所色んな話がありやして。魔物と一緒にダンジョンから生み出されてるとか、ダンジョンに挑んだ冒険者から奪ったとか、ダンジョン内で武器や防具類を売ってる奴がいるとか、どれがホントなのかは誰もしらないんでさぁ」


何とも不思議な話ではある。

ダンジョン内の素材で魔物たちが作ったにしては精巧に作られ過ぎているアイテムは多々あり、ダンジョン産の武器や防具は優秀なエンチャントがされている物や呪いがかかっている物など様々で、地上にも持ち帰る事は可能だと言う。

中には持ち出せない縛りがあったりするダンジョンも存在するらしいが。

武器や防具を魔物と一緒にダンジョンが生み出しているなら、なんでダンジョンはそんな事が出来るのか、なんでそんな事をするのか謎だ。

ダンジョンに挑んだ冒険者から奪ったにしては種類が豊富だし、同じ装備があり過ぎる。

ダンジョン内で魔物に武器や防具を売ってると言うのは、もはやなんで? という疑問しか浮かばない。

うーむ、訳が分からない。

たぶん、そういう世界なのだと無理矢理にも納得するしかないだろう。

ゲームじゃあるまいし、何かしらの理由だったりがあるのかもしれないが、今は気にしても仕方がない。

俺は今俺に出来る事をしよう。


「ジャジャさん、そこを曲がった先に何かヤバイのがあるみたい」


「へい、分かりやした。おめぇら、大盾と探知の用意しろい」


今の俺は守りのアミュレットを持っていないので、自分に死を与えるモノに過敏になっている。

死の視線を感じやすくなっている事から、強力な魔物や罠なんかを察知しやすい状態だ。

ジャジャさんたちが大盾で敵の攻撃に備えつつ、探知系の魔法やアイテムなんかで罠を探して、ダンジョン内を進んでいる。


「いやぁ、ヒイロ坊ちゃんのそのスキルは凄いのなんの。ここに来るまで、強力な魔物に奇襲出来たり、即死系の罠を避けれてるのはそのスキルのおかげですぜ。正直、デイジーちゃん様におんぶにだっこのボンボンだと思ってやしたよ」


「まぁ、その認識で正しいと思いますよ? この死に敏感になってるのもパルカのおかげだし」


「あっはっは、そこで死の神の名前が出るだなんて、こいつぁすげぇや」


何故か笑われてしまった、ホントの事なんだけどなぁ……。

結構神様って身近な世界だと思っていたのだが、違うのだろうか。

セルバは巫女の身体とは言え、かなり国民と関わっていたように見えたのが、他の国では違うのかもしれない。

そんなこんなで地下五階に続く階段の前に辿りついた。


「ここからはあっしらも初めて行く階層になりやす。敵の強さは今までの比じゃないと思いやすんで、どうかお気をつけてくだせぇ」


地下四階はゴブリンが主な魔物だった。

ダンジョンに出る魔物は千差万別らしいが、主の種族が強く影響するとの事だったので、おそらく人型の魔物だとは思う。

ここまでは大した危機はなかったが、ここからはジャジャたちにとっても未知の領域だ。

デイジー叔父さんがいるとは言え一層の注意は必要だろう、折り返しの階層だからこそ気を引き締めないと。

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