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161・いざダンジョンへって話

コンコンとドアがノックされる音で目が覚めた。


「デイジーちゃん様、ヒイロ坊ちゃん、おはようございやす朝ですぜ。簡単な朝飯の用意も出来てやすので支度出来たら、広間の所にきてくだせぇ」


「はい、わかりました」


ジャジャの声に軽く返事をして伸びをする。

寝る前のデイジー叔父さんの話が気になってなかなか寝付けなかったが、どうやらいつの間にか寝ていたようだ。

地下なだけあって、部屋の中は真っ暗だったがデイジー叔父さんは既に日課の逆立ち指立て伏せをこなしていた。


「おはようデイジー叔父さん」


「おはよう緋色ちゃん。今日はジャジャちゃんたちのダンジョン攻略のお手伝いよぉん。手早く終わらせて、マレッサちゃんたちと合流しちゃいましょ」


「うん、そうだね」


荷物をまとめてから、部屋を出て広間に移動する。

そこには既に所せましと盗賊たちが集まって、争うようにご飯を食べていた。


「おら、それはおれのだぞ!! 勝手に食うな!!」


「盗賊のくせに取られる方が悪いんだよ!!」


「つまり、自分が取られても文句はないって事だよな!!」


「せっかくデイジーちゃん様が作ってくださったんだぞ!! もっと行儀よく食えアホンダラ共!!」


ギャーギャーと実に賑やかである。

昨日の内にデイジー叔父さんが朝食べるようにと仕込んでいた煮込み料理は盗賊たちのお気に召したようで何よりだ。

どうやら俺とデイジー叔父さんの分は別で取り分けてくれていたようで、食べ損ねると言う事はなかった。

賑やかな朝食を終えて、俺たちは名も無きダンジョンへと向かう。


「よーし、おめぇら!! こちらのデイジーちゃん様とヒイロ坊ちゃんがダンジョン攻略に力を貸してくださる!! 今日こそあのダンジョンを完全攻略してお宝手に入れて、まっとうな生活に戻るぞ!! 気合入れろよおめぇら!!」


「「「「おおおおおお!!」」」」


軽く空気が震える程の大声をあげて盗賊たちは腕を高々と上げた。

盗賊たちの意気はかなり高いようだ。

と言うか、ジャジャってこの盗賊団のリーダーだったんだ、ちょっと意外だ。

てっきり下っ端寄りのメンバーだとばかり……。


「さぁ、お二方。どうか一発景気のいい言葉をお願いしやす」


「あーそう言うの俺苦手だなぁ」


「まぁ、景気付けってのは大事なものよぉん、緋色ちゃん」


そんな物なのかなぁ、と思っていると周りの盗賊たちの視線が俺たちに集中している事に気付いた。

こういう風に注目されるのはあまり好きじゃないんだが。


「えっと、その、出来る限りの手伝いはしますので、よろしくお願いします」


「うぉおおおおおおお!! 盗賊であるおれたちに丁寧な言葉遣い、こいつぁいい子だぁああああ!!」


「頭のお願いに即答で了解したって話だ、ハンパねぇいい子だぜぇえええええ!!」


「いい子過ぎて心配になるくらいだぁあああああああ!!」


何故か盛り上がる盗賊たち、テンションがおかしいぞ。


「はぁい、デイジーちゃんよぉん!! 緋色ちゃんはあたくしの自慢の甥っ子、とーーーってもいい子なのよぉん!! ダンジョン攻略がんばりましょうねぇん!!」


「「「うぉおおおおおおおおおお!! おれたちをあっと言う間に埋めたお方だぁあああ!!」」」


盛り上がり方がハンパない。

デイジー叔父さんの強さを目の当たりにしたと言うか体感した事が原因なんだろうな。

そんなこんなでテンションが高いまま盗賊たちは準備を整えて名も無きダンジョンへと向かった。

地上を移動せずに、地下通路を進んだ先にあるらしい。


「ダンジョンって俺は初めてなんだけど、結構あるものなの?」


先頭を歩くジャジャに俺は尋ねてみた。

異世界、ファンタジーと言えばダンジョンではあるが実際どんな感じなのだろうか。

そう言えばマレッサが以前、ゴッデス大蝦蟇斎さんがどこかのダンジョンを攻略しているとか言ってた気がする。


「そうですねぇ、ダンジョンってやつは自然発生する物と強力な魔物が自分の住処として作り出す物なんかがあるんでさぁ。魔力が強い場所にはダンジョンも生まれやすい傾向にありやすね。ダンジョン自体がある意味、巨大な魔物みたいな物っていう奴もいやす。ダンジョン内に魔物や宝物を生み出して外から人間や住処にしようとする魔物を呼び込んで、死んだ肉体を栄養にするって話でさぁ」


「それって、これからダンジョンと言う名前の巨大な魔物の腹の中に入るって事なのでは?」


「あっはっはっは、確かその通りでさぁ。まぁ、あっしらだって何回も入ってこうやって生きて帰ってきてる訳ですし、何よりデイジーちゃん様が居るんだ、心配なんざいりゃあしませんぜヒイロ坊ちゃん」


うーむ、楽観的だなぁ。

しかし、自然発生したり、強い魔物が作りだしたり、意外にダンジョンってそこらへんにあるんだろうなぁ。

前から不思議ではあったが、そう言うダンジョンの中にある宝箱とか魔物ってどこからやって来ているのだろう謎だ。

マレッサが居たら教えてくれたかもしれない。

今度聞いてみよう。


「一応、ジャヌーラカベッサには七大ダンジョンと呼ばれるSランク指定の超巨大ダンジョンの一つが存在してやす。『竜の胎』なんて呼ばれてるんでやすが、竜が湧いて出るとんでもねぇダンジョンでさぁ。まぁ、ジャヌーラカベッサで竜が軍に組み込まれてる理由でもあるんですがね。そこから竜の卵だの小さい竜だのを地上に持ち帰って育てて、人間に慣れさせて軍事利用してる訳なんでやす。ダンジョン産の竜を地上の竜たちはまがい物とか竜の端くれなんて言って、本当の竜ではない、みたいに下に見てるみたいですがね」


ゴッゾヴィーリアがジャヌーラカベッサの軍隊に配備されている竜を見てそんな事を言ったとデイジー叔父さんから聞いたが、そんな理由があったのか。

しかし、竜が湧いて出るダンジョンとか恐ろしい所もあったものだ。

絶対に近づかないようにしよう。

そんな話をしながら一、二時間程地下通路を歩くと、開けた場所に出た。

広場の中心には穴の開いた大岩があり、その穴の中には地下へと続く階段があった。


「さぁ、これがあっしらの小遣い稼ぎしてる名も無きダンジョン、その入り口でやす」


なんだかちょっと不思議な感じだ、ここから先は普通の地下とは何かが違う気がした。


「ちょっと空間が歪んでるわねぇん。この世界とちょっとズレた世界と繋がってるみたいだわぁん。ダンジョンって不思議な物なのねぇん」


別世界と繋がっている、デイジー叔父さんはそう言った。

不思議の一言で済ませていいのかは分からないが、この世界にはこういったダンジョンが沢山あるのだろう。


「さぁ、行きやしょう。浅い階層では弱い魔物しかおりやせんので、どんな感じかを確認しつつ、最下層を目指しやしょう」


ジャジャがダンジョンへの階段を降りて行き、他の盗賊たちも続く。

俺は少しの高揚と不安を胸に、ジャジャたちの後に続いて名も無くダンジョンへと足を踏み入れるのだった。

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