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153・絶賛落下中って話

「ぎゃああああああああああああッ!?!?」


とんでもない勢いで落下していくデイジー叔父さんとベッドで横になっている俺。

俺はベッドに横になっているのでそれほど風の影響はないのだが、凄まじい風切り音が恐怖を大いに煽る。


「まずはマレッサちゃん、パルカちゃん、ナルカちゃん、フィーニスちゃんと合流しないとねぇん。たぶん四人は一緒に行動してるはずよぉん。みんな緋色ちゃんを心配してたわぁん。元気な所をちゃんと見せてあげないといけないわよぉん」


風切り音が凄すぎてデイジー叔父さんが何と言ってるいるのかよく聞こえなかったが、マレッサやパルカの名前が聞こえた。

そう言えばと今更に気付いたが、いつも俺の近くにいたマレッサやパルカがいない。

俺のマジックバッグもなかったので、よく中に入っていたナルカもだ。

あと、気のせいかフィーニスの名前が聞こえた気がする。

後で色々とデイジー叔父さんに教えてもらわないといけないなと、改めて思った。

しかし、そんな余裕はドンドン迫り来る大地への恐怖で吹き飛んだ。


「おーちーるぅううううううううううッッ!?!?」


ベッドに全力でしがみつき、慌てふためく俺の目に小さな変わった姿の鳥が映った。

妙に首が長く、なんか羽が蝙蝠に似ていて、それよりも力強い感じ?

まぁ異世界だし、そんな鳥もいるよな、などと呑気に現実逃避をする俺。

ただ、その鳥がだんだんこちらに近づくにつれて、巨大化している気がする。

いや、気のせいじゃないなアレ、しかもアレ鳥じゃない、ドラゴンだ、アレ。

普通に数メートルは有ろうかと言う大きなドラゴンが大口開けて俺たちに高速で向かって来ているのだと分かった。

しかも、その背中には誰かが乗っており、鬼の様な形相で槍を構えている。


「なんかドラゴンに乗ってる人が槍構えて突っ込んできてるぅううううッ!!」


「あらぁん、可愛らしいドラゴンさんねぇん。でも、今ちょっと取り込んでるからごめんなさいねぇん」


そう言って、デイジー叔父さんは片手で空中を軽く払うような動作をしてみせた。

ただそれだけで、乱流が生み出され、荒れ狂った風に巻き込まれドラゴンは突如として明後日の方向に吹き飛んでいってしまった。

乗ってた人大丈夫かな……。


「あと一、二分もすれば地上ねぇん。ちょうどいい具合に町に降りれそうだわぁん。日頃の行いのおかげねぇん」


「あー、ねぇデイジー叔父さん」


「なにかしらぁん、緋色ちゃん」


「なんか周りを十数匹のドラゴンに囲まれてるんだけど」


デイジー叔父さんが下を向いて、落下地点の確認を呑気にしている間に、絶賛落下中の俺たちの周りを同じ速度で落下しつつさっきのドラゴンと似たドラゴンたちが周囲を包囲していた。

その背中にはさっきの人と同じように槍を構えた人が乗っている。


「貴様らッ、よくもコバヤスィを!! ジャネーラカベッサが誇るドラゴンライダーの恐ろしさを思い知らせてやる!!」


「焦るな、オッギィ!! コバヤスィを吹き飛ばしたあの強力な風、恐らくは一級以上の魔法!! なにより、こいつらはペーシモ・カルセルからの脱獄者だ!! 着地に関しても何らかの対策をしているはず!! 各自、魔法に注意しつつ、一定の距離を保ち、ドラゴンブレスの集中砲火で確実に仕留めるんだ!!」


「了解、隊長!!」


落下を続ける俺たちにピッタリと速度を合わせつつ、ドラゴンライダーの人たちは巧みな騎乗でドラゴンを操っている。

凄いなーとくだらない事を考えながらドラゴンを見ていたら、その口から火が溢れ始めた。


「デイジー叔父さん!! ドラゴンブレスが来るよ!! 大きさはだいぶん違うけど、もしゴッゾヴィーリアと同じかちょっと弱い位だったとしても、この数のドラゴンブレスは危険じゃない!?」


「そうねぇん、まぁ平気じゃないかしらぁん? 緋色ちゃん、今、視線を感じてるかしらぁん?」


デイジー叔父さんに言われ、俺は少し集中して死の視線を確認してみた。

パルカがいつの間にか授けてくれていた死の神の加護のおかげで俺は自分の死に繋がる敵意や殺意を視線として感じる事が出来るのだが、セルバブラッソやエスピリトゥ大洞窟での一件ではこれでもかと感じていた視線だったが、今この場においては視線を全く感じない。


「全然視線を感じないって事は……問題ないって事、なのかな?」


「罪人に容赦は無用だ!! ドラゴンブレス一斉射、放てぇッ!!」 


俺が首を傾げたのとほぼ同時にドラゴンライダーの隊長が大声をあげ、俺たちを取り囲むドラゴンたちが一斉に炎のドラゴンブレスを放ってきた。


「デイジー叔父さん来たよッ!?」


死の視線は感じてはいないけれど、猛烈な勢いの炎のブレスが迫ってきたらちょっと熱いし、恐ろしいものだ。


「緋色ちゃん、ちょっと加速するから舌を噛まないように気を付けてねぇん」


「え?」


そう言うや否や、デイジー叔父さんは空中を殴りつけて加速した。

その瞬間、俺は音を越えた。

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