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150・新たなる精霊王って話

「人の子、ヒイロよ」


急にオリーゴが話しかけてきた。

いきなりどうしたというのだろうか。


「どうしたオリーゴじいちゃ……見た目は若いからオリーゴでいいか。どうしたオリーゴ?」


「今より、わえらの精霊王としての座をフィーニスに明け渡す、すなわち譲渡」


精霊語でのフィーニスとの会話で何か思うところがあったのだろうか、どうやらオリーゴはフィーニスを正式な精霊王にするらしい。


「それでフィーニスは助かるのか!?」


「無論。器を砕かれたフィーニスに精霊王という新たな器を与える事で、いずれ正しき精霊王となるだろう」


「ありがとう!! でも、そうしたらオリーゴはどうなるんだ?」


「オリーゴとしての意識は消えるが、多少矮小化したわえらに戻るだけ、これぞ回帰。人の子が案ずる事はない」


「いいのか? 消えるって事は死ぬって事じゃあないのか?」


「否だ。元は一つであれど、四つに分かれていた期間の方が遥かに長いのだから今の状態の方が異常なのだ人の子よ。何より、精霊は不滅、ゆえにわえもまた不滅だ。長い年月の果てにまた顕現する事もあろう。ただ、精霊王としての責務を放棄する事になるのは心苦しいが、フィーニスを生き永らえさせるにはこれしかあるまい」


「……オリーゴ、本当にありがとう。何もお返しが出来ないのが心残りだけれど……」


「そう思うのならば、その分フィーニスに返すがよい。これは継承でもあるのだ。さぁ、フィーニスよ受け取るがよい、これぞ精霊王の証、精霊の王冠である」


「いや、それで精霊王の継承できるの!?」


俺の疑問を当然の様に無視して、オリーゴが恭しくフィーニスの頭に王と書かれた王冠を被せると、フィーニスの体がまばゆく光りだし、抱きかかえていた俺の手から離れ空中に浮き始めた。

それと同時にオリーゴの体にヒビが入り、だんだんと崩れていく。


「五十年という、わえからすればわずかな時の遅れこそあったが、今こそ正しき新たなる精霊王の生誕の時!! フィーニスよ、己を知り、人を知り、世界を知るがよい!!」


そう叫んだオリーゴの体から四つの光の玉が飛び出し、その瞬間にオリーゴは完全に砕け散って消えてしまった。

四つの光はそれぞれ茶色、赤色、青色、緑色に光っており、数秒ふわふわと宙に浮いていたかと思ったら、手足が再生されてつつあるフィーニスの中に入っていった。

やがて、光が収まると完全に体が再生したフィーニスが地面に降り立ち、ゆっくりと目を開けて俺を睨みつけた。

いや、なんで睨むんだ?

まぁ、いろいろあるんだろうが、もう大丈夫そうで良かった。


「フィーニス、もう大丈夫か?」


俺の問い掛けにフィーニスは口をもごもごさせて、何かを言いたそうな様子だった。


「雑魚の癖になに無茶してんのよ……馬鹿じゃないの」


そう言ったフィーニスの体の中から、四色の玉が急に飛び出してきた。


「素直じゃないのんねぇ」


「もす、命を助けられたもすから、照れずに礼くらい言うもす」


「どういう顔で何と言えばいいか分からないと見えるうぉ」


「五十年前に自我の芽生えがあったとしても、生まれ落ちたのはつい先ほど、情緒はまだまだ幼いふぅ」


光の玉が四大精霊王の声を発したので俺はとてもびっくりしてしまった。


「その光って精霊王の爺ちゃんたちだったの!?」


驚く俺の周りを光の玉となった精霊王たちが飛び回る。


「そうのん。オリーゴが言ったようにこんな矮小な一精霊になってのん」


「まぁ、腐っても元精霊王もす。四人集まればフィーニスを抑える事くらいはできるもす」


「精霊王としての楔の役目はフィーニスが背負ったうぉが、その内に流れ込む負の想念の処理をわいらが手助けするうぉ」


「精霊の力を霧散させる封印も健在ふぅ。世界に精霊の力を還元する事で元素の安定化を促すふぅ。そうする事でフィーニスは精霊界におらずとも世界に影響はあまり及ぼさないで済むふぅ」


四大精霊王言う事全てを理解できた訳ではないが、フィーニスが精霊王としてやっていく為の手伝いをこの四人がするって事だろう。


「つまり、いろいろな問題は解決できたって事で良いんだよな? フィーニスが消える必要も心配もないって事で良いんだよな?」


「安心するのん人の子。フィーニスはわすらを含めて安定した存在になったのん。もう、大丈夫のん」


グノーモスの言葉に俺は心底ホッとした。

そんな俺の前にフィーニスがやってきて、もじもじしながらまだ何かを言いたげなそぶりを見せた。


「あの、その……なんて言うか……」


「ん? どうしたフィーニス?」


中々言葉の続きを言わないフィーニスにしびれを切らしたのか、ナルカがマジックバッグからにゅるりと姿を現した。


「じれったーい。すっぽんぽん子、そういう時はありがとうって言えばいいよー、あとごめんなさいもねー」


「う、うるさいわね、分かってるわよ、そんな事!!」


ナルカの言葉に声を荒げながら、フィーニスは呼吸を整え、改めて俺を見た。


「えっと、その、助けてくれてありがとう。あと、殺そうとしてごめんなさい。竜も精霊王たちも神の端末たちも死の精霊のアンタにもたくさん迷惑かけたわ、ホントにごめんなさい」


そう言ってフィーニスは深々と頭を下げたのだった。

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