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144・空から来たる神って話

『ヒイロはもう少し、話し合いと言うものを大事にしてほしいもん。セルバブラッソの時もそうだったもんけど、自分にはこれしかできない、だから今やろう、っていうその瞬発力は何なんもん? 前にも言ったもんけどビックリするもんから、次からはちゃんと今から信仰するぞっていう意思表明をしてほしいもん、いいもんね?』


「すまないマレッサ。この中じゃ俺が一番戦力にならないから、思い詰めてしまって。本当にすまない。マレッサたちの意思も確認せずに信仰してしまって」


『まぁ、信仰ってわざわざ神の意思を確認してするようなものじゃあないんだけれどね。いつもの事でしょマレッサ。人間はこういう人間なんだから、言うだけ無駄よ。いちいち信仰に許可なんていらないわよ。人間がそうすべきと思った時にすればいいわ。ただ、ビックリしたのは確かだけれど』


「パルカも悪かった。今度からは気を付けて信仰する」


羽を生やした人の姿になったマレッサとパルカに軽く注意を受けてしまった。

言われてみれば、いきなり信仰するのも失礼なのではないだろうか、いやまぁ信仰なんて本人の自由なんだし、パルカの言うように俺の意思で信仰してもいい気はする。

ただまぁ、驚かせたのは事実だ。

次からはもう少し考えて信仰するとしよう。


「人間さんの信仰って変わってるよねー。普通の信仰じゃこんな風にならないよ。もう貰った力の留め方はバッチリだから、無駄にはしないからねー」


ナルカはニコニコとご機嫌な様子で背中にある粘液状の羽を羽ばたかせてみせた。


「あぁ、ナルカは凄いからな。俺の代わりにみんなを助けてやってくれ」


「任せてー」


ナルカの隣で、二メートル程の身長と見せかけではない戦う為に特化したような、もはや美しいと形容しても差し支えない筋肉を持つ壮年の男性が佇んでいた。

上半身は裸で下はゆったりとしたズボンの様な物をはいており、更に体にはフィーニスにあるようなタトゥーが入っている。

誰だこの人?

いや、頭に王って書いた王冠被ってるし、目が宝石のようにキラキラしてるし、妙にフィーニスと特徴が似てる。

まさかとは思うが……。


「まさか、人の子の信仰が遥か古代に四つに分かたれたわえらの身体を再び一つとするとは、まさに驚愕。フィーニスと同じ状態である今ならば、対等に戦う事も出来ようぞ、実に僥倖。地のグノーモス、火のサラマンデル、水のオンディーヌ、風のシルフィード、四大精霊王が大いなる時を越え一つとなりしこの身、まさに始まりの精霊王オリーゴと称するに値する、これぞ起源!!」


「あぁ、やっぱり精霊王の爺ちゃんたちか。俺の信仰のせいでなんか合体しちゃってごめん」


精霊って合体するんだな、知らなかった。

頭を下げる俺に精霊王の爺ちゃんたち、改めオリーゴはうむ、気にするなとそれだけ言って、ゴッゾヴィーリアとフィーニスが戦っている空中を見上げた。


「最後の精霊王、そして精霊竜王を名乗りしフィーニス、今こそ世界への回帰の時!!」


そう言って、オリーゴは凄まじい突風を巻き起こして、一人でゴッゾヴィーリアとフィーニスの戦いの場に突っ込んで行ってしまった。


『あーもう、何一人で突っ走ってるもんか!! ヒイロの信仰せいで、なんか気分が盛り上がったもんかねぇ。待つもん、お前が封印魔法を使う手筈もんよ、ノリで突っ込むんじゃないもーん!!』


『やれやれね、大昔の力が戻って力に当てられたのかしら? ナルカ行くわよ、四大精霊王が一つになってるから、あんなのでも今の私様たちよりは強いわ。サポートしつつ、フィーニスの動きを止めるわよ』


「はーい、姉母様!! あちし頑張るよー!! すっぽんぽん子ぶっとばーす!!」


一人で突撃していったオリーゴに呆れつつ、その後にマレッサとパルカ、ナルカが続く。

こうなったら、もう俺に出来る事は本当に何もない。

ただ、みんなの無事を祈るばかりだ。

俺の信仰で強くなったマレッサ、パルカ、ナルカ、精霊王の爺ちゃんたち、これならなんとかなるだろうと、心の中で安堵した。

だが、俺は理解できていなかった、デイジー叔父さんが何かに備えるという事実がどれほどとんでもない事なのかを。

俺は皆の戦いを見ていた。

戦いに横槍を入れられたゴッゾヴィーリアが怒りだし、フィーニスもろともマレッサたちにドラゴンブレスを放ったが、みんなは力を合わせて魔法壁を作ってドラゴンブレスを防ぎ、隙をついて竜の身体から人型の身体を生やしているフィーニスの身体を拘束、精霊の力を霧散させる封印魔法をかける事に成功した。

決着は間近と思われた。


「思っていたより、早いわねぇん……、ねぇ緋色ちゃん。緋色ちゃんはフィーニスちゃんも助けたいわよねぇん?」


「え? う、うん、もしできるなら改心して精霊王としてきちんと生きて欲しいとは思うけど……」


「うんうん、やっぱりそうよねぇん。なら、頑張らないとねぇん」


デイジー叔父さんはそう言って笑顔になった。

そして、戦っているみんなに向かって大地を揺るがすような大声で話しかけた。


「みんなーーー!! これから、すっごい子がここに来るわぁん、死にたくなかったら、全力で防御してねぇん!! あたくしでも守り切れる自信がないわぁん!!」


デイジー叔父さんの衝撃波を伴う大声に、戦っていた全員の動きが止まり、その言葉の意味を咀嚼するのに数秒の時間を要していた。


『ッ!? パルカ、ナルカ、オリーゴ、この際ゴッゾヴィーリアとフィーニスも手伝うもん!! 全力で魔法壁張るもん!!』


『近くまで登ってきてたリリシュたちに念話で全力で防御するよう伝えたわ!! 人間、こっちに!!』


パルカが咄嗟に魔法で俺を引き寄せ、自分の後ろに隠す。

 

「貴様ら、何を抜かすかッ!? 今の今まで殺し合っていた者同士で守り合えだとッ!?」


「そうですよ、筋肉精霊に端末共!! 精霊の力が無くても、この場に居る全員ぶち殺すなんてフィーニスちゃんには簡単なんですよッ!!」


「然り、何故協力する必要があるのか、実に疑問!!」


「デイジーちゃんが守り切れる自信がないって言う程だからねー。たぶん力合わせないと、死ぬよー」


デイジー叔父さんの守り切れる自信がない、などと言う信じがたい言葉にマレッサとパルカとナルカは瞬時に思考を切り替えて防御の体勢に入ったが、ゴッゾヴィーリア、オリーゴ、フィーニスは納得など言っていない様子だ。

当たり前ではある。

さっきまで殺し合っていたのに、いきなり協力して防御しようだなんて、普通は無理だ。

どうしたものかと逡巡していると、何かが近づいて来る恐ろしい程の圧を感じた。

俺なんかが感じる程だ、他のみんなも感じたに違いない。

その場に居た全員が冷や汗を流し、困惑した表情を浮かべ、硬直していた。


『急ぐもん、お前ら!! 間に合わなくなるもんよッ!!』


マレッサの言葉にハッとしたゴッゾヴィーリアとオリーゴ、そしてフィーニスは納得のいっていない表情のまま、魔力壁を作るのに協力を始めた。

数秒後、大地の遥か彼方から声が響いてきた。

その声はどこか幼さの残る声でありながら、大地を揺るがす程の衝撃と圧を伴い、俺たちに襲いかかってきた。


「このおれを待ち受けるなどと言う、その浅慮、その豪胆、その軽挙、愚かしさもここに極まれりだ!! だが、その思い上がりもまた良しッ!! 見事、おれの一撃を耐えたならば、名を名乗る誉を与えてやる!! だが、頭が高いぞ、まずは平伏し、おれを崇めよッ!!」


空に広がる雷雲を消し飛ばしながら、それはデタラメな軌道を描いて空から接近して来ていた。

それはエスピリトゥ山脈の真上で止まると、身構えているデイジー叔父さん目がけて音を置き去りにして一直線に落下を始めた。

デイジー叔父さんと落下してきた存在との激突の衝撃により、その日、エスピリトゥ山脈の一部が消滅した。

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