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136・最後の精霊王フィーニスって話

「話しは聞かせてもらったわぁん。リリシュちゃん、ルキフちゃん、トシユキちゃん、それに精霊王ちゃんたち、あたくしがあの外殻の中に詰まっているお肉ちゃんの半分は潰したわぁん。でも、奥の方に大物がいるみたいよぉん。なかなかに手ごわいわぁん、気を付けてねぇん」


周囲の肉塊の大群を口から炎を噴き出して焼き尽くしているデイジー叔父さんがそう言った。

半分、五百年分の肉を倒したって事か。

こっちに戻って来てからまだ数分かそこらしか経っていないはずなのだが。

しかも、奥の方にまだ何か大物がいるらしい。

デイジー叔父さんが大物と言うくらいなのだから、かなり強いはずだ。

いっそ、このままみんなで肉塊を倒し切ってからの方がいい気がする。

しかし、あの大きさの外殻の中からよくもまぁこんな数の肉塊が出てきたものだ、まだ半分くらい残っているらしいが、マジックバッグみたいに変な空間と繋がっていたりするんだろうか。


『リリシュやそこの人間より強いって事なら、急いでそのフィーニスって新しい精霊王は止めに行った方がいいわ。ほんの数分の違いで国規模の被害が出かねないわ』


『そうもんね、弱体化しているとは言え元魔王やそいつより強いって言うなら、わっち達が戦うよりもデイジーの方が安全だろうもん。』


うーむ、パルカやマレッサが言うのなら、ここはリリシュたちに任せるほかない。

ナルカも疲れ切って動けないようだからこのままマジックバッグの中に居てもらおう。


「それじゃ、上に行く前に餞別よぉん、デイジィイイイイイ・ヒィイイイイイリィイイイイイングッッ!!」


唐突にデイジー叔父さんが掌から謎の光をリリシュたちに照射。

一瞬身構えたリリシュとルキフだったが、体の傷が癒えていくのを見て構えを解いた。


「何かと思えば、癒しの魔法か。これ程の力を持ちながら回復までこなすとはな、多芸な事だ」


「陛下のおっしゃる通りでございますな。傷が完全に癒えてしまうとは、驚きの一言でございます」


「魔法じゃないわよぉん!! これはデイジーヒーリング、あたくしの愛のパゥワーとあたくし特製のアロマオイルの香りをブレンドした自然治癒力を高めるアロマテラピー!! リベルタ―で買っておいた植物をギュッと素手で凝縮して抽出したオイルの香りは格別よねぇん!!」


九割九分、デイジー叔父さんの愛のパゥワーのおかげだと思う。

魔法じゃない? とかなり困惑しているリリシュたち。


「フィーニスはわすら四大精霊王が一つになったような存在のん。エレメンタル・イーターの取り込んできた精霊の力も合わさって、より強大な存在になってるはずのん。精霊王より上、もはや精霊神とでもいうべき存在のん。いくらデイジーちゃんでも容易くはない……はず、気を付けてほしいのん」


「もす、これは言わばわてらの不手際もす。人間に尻ぬぐいさせるのは心苦しいもすが、頼んだもす。詫びは必ずするもすから」


「大した意味はないかもしれないうぉが、わいら精霊王たちの加護をデイジーちゃんと人の子に授けておくうぉ。こっちの世界が滅べば精霊界にも大きな影響が出るうぉ。頑張ってほしいうぉ」


「洞窟の出口までわーが風の道を作ったふぅ。それに乗って一気に移動するといいふぅ」


精霊王たちの言葉を受けてデイジー叔父さんと俺は頷いて、シルフィードの作った渦巻く風の道に飛び乗った。

マレッサとパルカも一緒に。


「ありがとう、みんな!! 無理しないで!! デイジー叔父さん、ごめん頼りっぱなしで!!」


「いいのよぉん、どんどん頼ってちょうだぁい。大人ってやつは頼られてなんぼなのよぉん!!」


風が一気に俺たちの体を移動させる。

凄まじい風圧を感じながら、真っ暗な洞窟の中を突き進む。

いや、これ、めっちゃ怖いんですけど。

速いし暗いしで、すんごく怖い。

俺は情けない事にぎゃあああああと叫び越えをあげて、エスピリトゥ大洞窟の最奥を後にした。

最奥に辿り着くまでに何時間もかかっていたのが嘘かのように俺たちは整備された交通路まで五分とかからずに一気に戻ってきたが、急にシルフィードの風の道が掻き消えてしまった。


「出口まで風の道を作ってたんじゃないのか、シルフィードの爺ちゃん!?」


『これは、別の風に干渉されて消された感じもん!! すでにフィーニスに捕捉されてるみたいもんよ!!』 


ゾクリと背筋に寒気が走る。

周囲のそこかしこから刺さる様な死の視線を感じた。


「デイジー叔父さん!! あちこちから何か来る!!」


次の瞬間、洞窟の壁から無数の岩の棘が俺たちに向かって飛んで来た。

更に奥から炎も迫ってきているのが見える。


「あらぁん、熱烈な歓迎ねぇん」


デイジー叔父さんは慌てる事なく、空を殴りつけ拳圧で岩の棘を全て粉砕。

炎に対して、フッ!! っと力強く息を吹きかけて竜巻を生み出して炎を掻き消した。


「へぇ、やるじゃん。じゃあこれはどう?」


不意に洞窟内に響いた幼い女の子の声、それと同時にデイジー叔父さんの生み出した竜巻に逆回転の竜巻がぶつかり相殺、その余波で突風が洞窟内に吹き荒れ、更に洞窟内だというのに津波が襲ってきていた。


『岩に炎、風に水もんか。四大属性をこの規模で扱うなんてとんでもないもんね』


『しかも、今のはただのお遊びでしょうね。まだ力に慣れてないだけなら、早く潰すべきなんだけれど』


デイジー叔父さんが迫りくる津波に凄まじい熱量を宿した拳を殴りつけ蒸発させたが、熱量が凄すぎたのか洞窟内に高温の水蒸気が爆発的に広がった。


「あっつッ――くない?」


『魔力壁で保護してるから、問題ないわよ人間。しかし、あの水量を一瞬で蒸発させるだなんて、相変わらずねデイジーちゃんは』


『なんか、あっちでめちゃくちゃ熱がってる人影があるもんよ』


マレッサが指差す方に目を向けると、ゴロゴロと地面をのたうち回る人影が一つ。


「あっちゃぁあああ!! あっちゅい、あっちゅい!! 人間の分際でぇええええ!! 絶対、ぜぇーーーーったいにぶち殺すんだからぁああああ!!」


「もしかして、あれがフィーニス? なんだろう、あまり脅威を感じない……」


うーむ、リリシュや精霊王たちがヤバイって言ってたからどんな恐ろしい奴だろうと思っていたんだが、ちょっと拍子抜けだ。

ただ、トシユキがメスガキがどうのって言ってたな。

どういう事だろうか。


「最強に無敵な精霊たちの頂点であるフィーニスちゃんにこんな事した罪、万死に値するんだから!! ザコザコの人間の癖に生意気、虫みたいに潰れて死んじゃえぇぇええッ!!」


フィーニスがそう叫んだ瞬間、ゴゴゴゴッと凄まじい地響きと共に激しい揺れが起きる。

そして、洞窟全体にヒビが入り始め、一気に天井が崩れ落ちてきた。

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