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125・再び洞窟の最奥へって話

トシユキが俺たちと一緒には来ない事は戦力的にも残念ではあるが、パルカも言っていたが無理強いは出来ない。

その時、ナルカがにゅーっとスライム状の手をあげた。


「ならねー、あちしがリリシュとルキフ手伝うよー、精霊王様たちも手伝うみたいだし、あちしがんばるよー」


『あら、ナルカはいい子ね。リリシュとルキフ、精霊王たちにナルカ、人間はまぁその守りのアミュレットがあればなんとかなるかしら、ちゃんと離れてなさいよ。この中で一番弱いのはアンタなんだから』


パルカがクッキーを頬張るナルカの頭を羽で撫でながら、俺の顔を見る。

確かに俺が一番弱いのは間違いないが、みんなが頑張ってる中、一人離れているってのはちょっとなぁ。


「いや、俺もデイジー叔父さんと一緒に行くよ。もし俺に何かあったら、たぶんデイジー叔父さんは俺を優先しちゃうだろうから。俺も一緒にエレメンタル・イーターの魂に干渉する場に居た方がデイジー叔父さんも守りやすいだろうし。それに近くに居た方がマレッサとパルカに信仰を捧げやすいだろ?」


『まぁ、それはそうもんね。わっちたちの神位魔法の余波にあてられた事もあるし、多少耐性もついてるだろうもん。わっちはそれでいいと思うもん』


『私様は正直、反対だけど、人間の言う事も一利あるわね。仕方ないわ、無茶だけはしないでよ人間』


「もちろんだ。だいたい無茶なんてした事ないぞ俺は」


『はっ、よく言うもん』


『本当にね』


何故だろう、マレッサとパルカが呆れた様子で俺を見て、ため息を吐いている。

何か変な事でも言っただろうか?

そんなやりとりをしている間にデイジー叔父さんがテーブルの上の片付けを始めていた。


「話はある程度まとまったかしらぁん? じゃ、ちゃちゃっと片付けちゃうわねぇん。リリシュちゃん達も手伝ってくれるみたいだし、出発の準備があったら今の内にしてくれると助かるわぁん。あぁ、そうそう、洞窟内の元素の乱れでリリシュちゃんたちはここから動けなかったのよねぇん。あたくし特製のパンケーキ、紅茶、クッキーを食べたから、しばらくは元素の乱れの影響を受けないわぁん」


「なんと!? ……確かに、妙なバフが付与されておるようだ、一体どんな魔法をあの料理に仕込んでいたのだ? 万全ではないとは言え、余が腹をこわ……体調を崩す程の元素の乱れの影響を受けないとは信じがたいのだが」


「確かに何らかの守りの力を感じます。ですが、承諾を得ずに陛下の飲食物にその様な魔法を仕込むのは、大変遺憾ではありますな。今は一魔族に過ぎないとは言え、陛下は元魔王であらせられますので、配慮の程いただきたかったですな」


驚くリリシュを見て、ルキフは不満げな顔をデイジー叔父さんに向けた。

ルキフはリリシュに忠誠はかなり高いようで、デイジー叔父さんが何も言わずに魔法か何かをホットケーキなんかに込めていた事を怒っているようだ。

ちょっと怖い。


「あらぁん、ごめんなさいねぇん。あたくしったらちょっと配慮に欠けてたわぁん。ちなみに魔法なんかじゃないわよぉん、込めたのはあたくしの愛ッ!! 溢れんばかりの愛をギュギュッと込めたのよぉん!!」


デイジー叔父さんは素直に頭を下げて謝罪した。

込めていたのは愛らしいが、愛にそんな効果が……いやデイジー叔父さんだし、気にしなくていいか。


「愛でそんなバフが付く訳が……いや、マジでなんかバフが付与されてるんよ、何これ?」


『まぁ、デイジーの愛は何でもありもんから』


『デイジーちゃんの愛ならそのくらい普通よ』


「さいですか……」


デイジー叔父さんの愛発言に困惑するトシユキだが、マレッサとパルカが特に気にした様子がないのを見て、どうやら飲み込んでくれたようだ。

たぶん、納得は出来てないだろうけど。

そんなこんなでティーパーティーの片付けは進んでいった。

マジックバッグにティーポットやテーブルクロスなんかを入れて、軽く手をパンパンと払う。


「デイジー叔父さん、食器とかティーセットの片付け終わったよ」


「ありがとう緋色ちゃん、じゃ、そろそろ出発しましょうかねぇん。リリシュちゃんとルキフちゃんはあたくしたちと一緒に来るとして、トシユキちゃんはどうするのかしらぁん? 残念だけど、お手伝いはしてくれないみたいだから、ここでお別れって事になるのかしらぁん?」


「まぁ、そうなるんよ。リリシュ殿、ルキフ殿、短い間だったけど、賑やかで楽しかったんよ。それじゃあ、お達者で」


トシユキはそう言って、軽く手を振って一人歩き始めた。

その背中にリリシュとルキフが話しかける。


「ついては来ぬか……トシユキがそれでよいと言うなら余はもはや何も言わん。トシユキよ、世話になったな。貴様は余たちの命の恩人である、何か困った事があれば魔力を込めて余の名を呼ぶがよい、どこに居ようと必ず助けに駆け付けようぞ」


「トシユキ殿、ここでの別れは爺としましては大変残念でございます。どうか、お元気で」


その声にトシユキは振り返る事はなかった。

俺たちも移動し、エレメンタル・イーターの元に続く道に戻り、先を急ぐ事にした。


「それじゃ、エレメンタル・イーターの元に行くのん。少し時間を食ってしまったのん。ちょっと急ぐのん」


「エレメンタル・イーターが眠りについて、それなりの時間が経ってるもす。いつ目覚めてもおかしくはないもす。寝ている内に制圧できるなら、それが一番楽もす」


「ここから先は更に精霊の力が濃ゆく、元素が乱れてるうぉ。周囲に漂う精霊の気配全てがエレメンタル・イーターの気配と同じ、気配察知は不可能と思っていいうぉ。目視による警戒は怠らないでほしいうぉ」


いつエレメンタル・イーターが襲いかかって来てもおかしくない状況、周囲を警戒しつつ俺たちは洞窟の奥へと進んでいくのだった。

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