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119・洞窟内での攻防って話

「体半分死なせるとか四肢の末端から死んでいくとか、あんな感覚をまた味わうのは絶対に嫌だぁああああ!! ルキフッ、はようなんとかせい!!」


「無理ですって陛下ぁあぁあああああ!? やばいやばいでございます!! パルカ様の眼が燃えるように赤くなっておられますゥううう!! あれこそ死の神の権能を相手に叩きこみ、『死』の概念を付与してあらゆるものを死なせる神の御業、死殺天使涅槃寂静デッドリーアルマゲドンッ!! ひゃああああああ、爺の指先の感覚が消えていくぅうううう!!」


「あーちょっと、ねぇ、えっとデイジーさん!? 平和的な挨拶って言ってたはずなんよ!? あっちの烏っぽい子、なんかあの二人をマジで殺そうとしてません!? 小生は確かにその子を人質にしようとはしましたよ、でも殺す気とかは更々なかったですし、だからそっちもちょっと手心とか、加えてほしいんよー!!」


空間が歪むほどのオーラを放っているパルカがなんか目からビームっぽいのを照射している。

ギリギリでそのビームをかわすリリシュとルキフだが、かすった所が死んでしまって、感覚がなくなっていっているようだった。

トシユキはガッチリと固められているアームロックから身じろぎすら取れずにいた。

パルカの行動を非難しているが、デイジー叔父さんは聞く耳を持っていない様だった。


「ダメダメよぉん。あたくしに向かって来ていたならまだしも、トシユキちゃんは緋色ちゃんを狙ったのよぉん? あたくしの最愛の甥っ子、とっっっても大事な家族を狙った……温厚が信条のあたくしでもちょっとプンプンってなるわぁん」


デイジー叔父さんの体からほんの少し怒りの圧が漏れ出て、周辺の空気が一気に重苦しくなった。

周囲の重力が数倍にもなったかのような感覚、俺はたまらず膝をついてしまった。


「あらやだぁん、あたくしったらついやりすぎちゃったわぁん」


デイジー叔父さんは自分の頭を軽く小突き、テヘペロっと舌を出した。

その時、ほんの一瞬、トシユキにかけていたアームロックが緩んだ。


「今なんよ、リリシュ殿!!」


「へ!? え、あぁ、任せよ、せいッ!」


パルカから逃げ回っていたリリシュが掌をトシユキに向けると、次の瞬間にはトシユキの姿は消えていた。

そして、気づけばトシユキはリリシュとルキフの近くに移動していた。


『空間転移魔法!? 絶位の魔法の中でも希少な魔法もん!! さすが、あんな感じのくせに元魔王なだけはあるもんね』


リリシュの使った魔法に驚嘆するマレッサ。

空間転移、対象を瞬間移動させる魔法だろうか。

マレッサが驚くくらいなのだから、たぶん凄い魔法なのだろう。

目の前に不意に現れたトシユキに一瞬面食らったパルカだったが、苛立たしげな声でリリシュ達に話しかけた。


『元魔王でありながら、人間を盾にするというのかしらリリシュ? アナタはそんな恥知らずな戦い方をするような子だったのかしら? 元とは言え魔王の矜持はもはや消え失せたという認識でいいわね』


パルカは纏っていたオーラをさらに禍々しい物に変化させ、リリシュ達に迫った。

その迫力にリリシュとルキフは震え上がる。


「ひ、ひぃいい!! ト、トシユキ、余たちは守護神であるパルカ様には逆らえぬ!! よって貴様が相手をせよ、分神体とは言え神は神、中途半端な攻撃は無意味と知れ!! 代わりにあっちの筋肉お化けは余たちに任せるが良い!! なに案ずるな、余はまお……元魔王、人間なんぞに力で遅れは取らぬわ、ルキフにしても魔王国の双璧を育て上げた実力は本物よ!! あやつに魔族の恐ろしさを教えてくれるわ!! 行くぞ、ルキフよ!!」


「ハハッ!! 陛下の御心のままに!!」


「あぁ、もう仕方ないんよ! 悪いけどこのまま全力で制圧させてもらうんよ!」


トシユキがパルカに迫る、おそらくパルカの謎のビームに対する何らかの対処法をがあるのだろう。

トシユキの喋った単語から、彼の身体能力は人としての上限に達している事が考えられた。


「パルカ、その人の強さは人間の上限まで上がってるはずだ、デイジー叔父さんが地面に埋めて対処出来なかったから、強さは神兵以上だと思う、気をつけてくれ!!」


俺の声を聞き、パルカは第三の目を大きく見開いてトシユキを見て、感嘆の声を上げた。


『へぇ、随分と変わったスキルね。どこの神の授けた物かは分からないけれど、とんだ変わり者がいたものだわ。異例の方法でこの世界に来たからでしょうけど、自身の認識する範囲内の世界をげえむ世界と置換する、世界の法則を自身の望む世界と入れ替えるスキルなんて神ですら保有している者は稀だわ。まぁ、だからどうしたって話なんだけれど、ね」


パルカが大きく羽を広げると辺りが急に暗くなり闇が濃ゆくなっていく。

そして、闇の中に無数の赤い光が浮かび上がってくるのが見えた。

それらは全てパルカの眼、あの闇は広がったパルカそのもののようだ。


「あ、これやばいやつなんよ、ガチで。回避不可の必中で抵抗無視の即死付与ってナーフしないとダメでしょこれ、小生死んだ」


闇の中に浮かぶ赤い眼からマシンガンのようにビームがトシユキに降り注いでいく。

トシユキは半ばヤケになったように叫んだ。


「うぉおおおおお、やけくそ絶対無敵バリアぁあああああ!!」


トシユキの周囲を透明な膜が覆っていく、二重三重に重なった絶対無敵バリア。

大層な名前のバリアはパルカのビームに触れた瞬間、死んだ。

薄いガラスが割れるかのような音をたてて、バリアはあっけなく崩壊。

トシユキはパルカのビームに爆撃によって、洞窟の壁まで吹き飛ばされてしまった。


「いかにトシユキと言えど、パルカ様には手も足も出ないか。さすがは余の国の守護神よ」


「左様でございますな。今の我らを圧倒する力があれど、神たるパルカ様には及ばなかったようでございます」


リリシュとルキフは今まさに二人まとめてデイジー叔父さんにアルゼンチンバックブリーカー食らおうとしている瞬間であった。

その顔は諦めの境地に達している。

デイジー叔父さん、せめて手加減してあげて……。

洞窟内に二人の叫び声がこだました。

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