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114・分からない事だらけで訳が分からないって話

『リリシュは先代魔王でルキフはその時の執事長よ。五年くらい前かしらね、リリシュが今の魔王に負けたのは。あとルキフは魔王国の双璧を育て上げた人物でもあるわ。獄炎のバルディーニと氷獄のヘンリエッテ、二人ともルキフが見出して育て上げたのよ。ルキフの実力自体はそこまでじゃないけど、誰かを育てるって事に関しては長い魔王国の歴史の中でも随一って言い切れるわ』


パルカも疑問に思ったようだが、なんでそんな人物がこんな所に居るんだろう?

エレメンタル・イーターの封印を解いたのもこの人たちなのだろうか。

先代って事は今は魔王でもなんでもない魔族って事だと思うが、元は魔王なら何か悪い事でもしたくなったとか?

いや、魔王だからって悪い奴ばかりって事はないらしいし、うーむ分からん。

それはそうと、もう一人の男の人だ。

デイジー叔父さんが言うにはあの人は俺たちと同じ世界からこっちに来たらしい。

勇者召喚された時、あの場に居なかったようだから、それ以外の方法でこの世界に来た可能性があるようだけれど……。


「もう一人は俺たちと同じ世界から来たっぽいけど、なぁマレッサ、召喚される以外の手段でも来れるのかこの世界?」


俺の問いにマレッサは腕組をして唸りながら答えてくれた。


『んー、ない、とは言い切れないもん。もし召喚以外でこの世界に来た場合はスキルだとか権能だとか特権だとかが付与されてない可能性が高いもん。そのままの状態でこっちに来ることになるから、だいたい魔物に襲われたり盗賊に襲われたり、まぁ長生きは出来ないはずもん。デイジーが一番強いっていう程もんから、元々それほどの力を持っていたか、何らかの存在が関与して勇者特権に代わる力を宿してる可能性、……可能性あるもんかなぁ? 次元を越えて世界を渡るなんて普通はありえな……、デイジーは例外中の例外として除外するとして、普通はあり得ないもん。うーん、珍しい事例過ぎて何とも言えないもん』


珍しい事例ではあるが、無い事もないって感じかな。

というか、あの見た目普通っぽい、ジーパンにTシャツというラフな格好の人が先代魔王よりも強いって事になるのか。

にわかには信じがたいが他ならぬデイジー叔父さんの言葉だ、あの人は先代魔王より確実に強いのだろう。

その時、デイジー叔父さんの投影する映像の中の男の人が急にこちらに掌を向けた。

すると、急に画像が乱れて何も映らなくなってしまった。


「あらぁん、見てたのがバレちゃったみたいねぇん。この距離であたくしのデイジーアイの情熱的な視線に気づくなんてやっぱり、敏感な子なのねぇん」


『地の精霊王ですら見通せなかった結界の中を普通にこの距離から見るデイジーちゃんのデイジーアイに気付いた上に妨害するなんて、やるじゃない。そんな事、並みの勇者じゃ出来ないでしょうね。デイジーちゃんの言うように、この人間がリリシュたちより強いってのも頷けるわね』


デイジー叔父さんのデイジーアイに干渉する程の力、とんでもない実力者である事は間違いない。

出来れば敵対なんてしたくはないのだが、どうしたものか。

あの三人がなんらかの協力関係にあるようなら、その内二人と知り合いのパルカが仲介してくれればなんとか話し合いが出来るかもしれないが。


「でも、一番気になるのはなんであんな所に居るのかって事だよね、やっぱり。先代魔王とその執事長、それにその先代魔王よりも強い人がいるなら、いくらエレメンタル・イーターが潜んでいると言っても洞窟から抜け出すくらい訳ないと思うんだけど」


「それは当人たちに聞くしかないわねぇん。さすがのあたくしも人の心の中を覗くのは趣味じゃないから、そんな事しないわぁん」


『出来ない訳じゃないもんね……』


『万能よねデイジーちゃん、むしろ全能なんじゃ……』


「あらやだぁん、あたくしだって何でも出来る訳じゃないわよぉん? でも愛に不可能はないの、愛は無限なのよぉん!!」


そう言って、高笑いするデイジー叔父さんをよそに、俺たちはエスピリトゥ大洞窟内で先代魔王とその執事長、謎の青年に遭遇した際どうするのかを話し合った。


「とりあえず、パルカがいる以上何があってもすぐに戦闘って事にはならないんじゃないかな?」


『どうもんかね? さっきのデイジーアイに気付いた事で自分たちを見ている存在、わっちたちに気付いたはずもん。それを相手がどう判断するかもんね』


「洞窟内の精霊はもういないから、わすはもう中の様子が見れないのん。ただ、あいつらは精霊狩りはしてなかったのは確かのん。敵ではないとは思うのんけど、封印に関しては微妙のん」


『精霊狩りはしてないけど、エレメンタル・イーターの封印を解いた可能性はある、っていうか実力的にはあの子たちしかいないでしょ。他に洞窟内で精霊王並みの力を持つ存在なんて、いるの? 』


「いないのん。今はどうか分からないのんけど、エレメンタル・イーターの封印が解ける前後で、あいつら以上の実力を持った存在はいなかったはずのん」


「じゃあ、封印を解いた可能性は限りなく高いって訳だけど、その理由はなんだろう? 訳も分からず封印を解いたのか、それともエレメンタル・イーターが封印されているって知ってたのか」


『エレメンタル・イーターが封印されていると知っていたなら、目的はエレメンタル・イーターそのもののはずもん。エレメンタル・イーターに何もしてない以上、知らなかったんじゃないかもん?』


『知ってたけど、想定以上に強かったから逃げるしかなかった可能性もあるわよ』


「ねー、先代魔王と執事長、更にその二人よりも強い人間がいるのに逃げ出したりするー? 物理ほぼ無効、魔法の耐性もすごいって言っても、五十年前の人間の冒険者たちが封印出来たくらいなんでしょー?」


『それは、……まぁ、ナルカの言う通りなのよね。リリシュとルキフだけでも、やりようはいくらでもあったでしょうし……』


どうにも話はまとまらない。

あの三人は何故あの場に留まっているのか。

本当にあの三人がエレメンタル・イーターの封印を解いたのか。

そして、あの三人は敵なのか味方なのか、はたまた無関係の第三者なのか。

どうにも、直接会って話さなければ分からない事だらけのようだ。


「もす、話まとまったんけ? はよ、行くもす。急がないとエレメンタル・イーターが起きるもす」


唐突に足元から聞きなれない声がした。

声のした方を見ると、体から火を噴き出している小ぢんまりした老人がそこにいた。

頭からは花火の様にパチパチと火花が散っている。


「もす、わては火の精霊王サラマンデルもす。よろすく」


なんか精霊王が増えた。

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