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113・精霊狩りって話

遠く離れていくリディエルたちの姿が見えなくなるまで手を振り、その後俺たちは一旦昼ご飯にする事にした。

人通りはまばらでどこか閑散としている。

とりあえず、近くにあった飲食店に入った。


「いらっしゃい、注文が決まったらお声かけください」


店員さんがそう言って水の入った木彫りのコップを置いていく。

メニューは壁に掛けられている板に刻まれているようだ。


『肉!! 肉があるもん!! 肉、大トカゲの肉盛り頼むもん!!』


『……ここらの大トカゲってアレでしょ? サラマンダーもどきの精霊混じりじゃないの? 食べて大丈夫なヤツそれ?』


『肉は肉もん。わっちそこまで肉にはこだわらないもんよ。でも、さすがに人肉は勘弁もん、まだ人間たちが原始的な頃、なんか神に人を捧げるーとかでたまに捧げられてたもんけど、人の肉なんて業が染み込んでて臭くて食えたもんじゃないもん』


『まぁ、分かるけどね。私様の所にもたまに供えれてたわ人肉。要らないって言ってるのに。セルバの所では心臓とか捧げられてたんだっけ?』


「物騒な話だなぁ……。生贄とかそんな感じかな?」


中々に物騒な話しをしつつ、マレッサの要望通り大トカゲの肉盛りを注文、他にサラダとかスープなど色々と注文し、しばらくすると料理が運ばれてきた。

食事に舌鼓を打ちつつ、周囲を見てみる。

客はどうやら、俺たちだけのようだ。

カウンターには頬杖をついている恐らく店主であろう老人と調理器具を洗っている店員さんの二人、店の広さを思えば店員はもっといてもいいとは思うのだが。


『洞窟の崩落事故自体は実際にあったんだろうもん、エレメンタル・イーターが出る前から。それが原因で段々と人足が遠のいたんじゃないかもん? 料理の味自体は悪くないもん。デイジー、後でこの肉を仕入れておくもん』


どうにも食い意地の張った神様である。

とは言え、崩落事故か。

もしかしたら、エレメンタル・イーターの封印が解かれたのと関係があったりするのだろうか。

俺は食事が終わった後、店主らしき老人に話を聞いてみる事にした。


「ごちそう様でした、料理美味しかったです」


「おう、お粗末さん。あんた、こんな時にここに来るなんざ、情報を仕入れるのが遅い旅人か何かかい? ジャヌーラカベッサに行くにゃここを通るのが一番近いが今は無理だな。当分、というかいつ通れるようになるか、皆目見当もつかねぇ」


「やっぱり看板に書いてた崩落事故のせいですか? どのくらい前から起きてたんですか」


店主は周りを見回して俺たちの他に客がいない事を確認し、ため息をついた後、改めて話をしてくれた。


「一か月くらい前から崩落事故はあったんだよ。まぁ、規模は小さかったし、みんな大して気にはしちゃいなかったが、中には精霊が暴れてるなんて言う奴もいたがよ。今にして思えば、そいつの言う通りだった。アレはきっと荒れ狂う精霊なんだろうさ、アレが居座ってる以上、エスピリトゥ大洞窟はもう使えねぇ」


「アレ?」


「姿を直接見た訳じゃあないが、見たやつが言うには竜の姿をした怪物だとよ、精霊と同じ光を纏ったでっけぇ口の竜だったらしい。竜の姿をしているから竜種なのかもしれねぇが、下手に騒ぐと名を上げたい冒険者がわんさか来る、そうなると治安が悪くなるからな。それを嫌ってか領主はまだ、討伐依頼をだしてねぇみたいだ。早いとこどうにかしてほしいんだがな。あんたらもジャヌーラカベッサに行くんならもっと南の方、名も無き大密林手前まで行かねぇと、エスピリトゥ山脈を越えられないぞ」


「そうなんですね、ありがとうございました」


そう言って、俺たちは店を後にした。

店から出ると、店の壁に寄りかかって座るグノーモスがいた。

果物を食べながら、洞窟を眺めている。


「おっす、やっと来たのん。店の店主が言ってたのんけど、一か月前から精霊がざわついてたのん。それが崩落って形になった現れてたのん」


『なんで、精霊がざわついてたのかしら? 一か月前ならエレメンタル・イーターはまだ現れていないはずでしょ?』


「精霊狩りのん。精霊を捕らえて売り飛ばす人間がいたのん。昔からそう言う奴はいたのんけど、今回はその規模が大きかったのん。そのせいで精霊がざわつき、エレメンタル・イーターの封印が露出したのん」


『今回の騒動はつまり人間のせいもんか、厄介な生き物もんねぇ。自分で自分の種族の首を絞めるとか。まぁ、いつもの事もんけど』


『で、露出したエレメンタル・イーターの封印はそいつらが解いたの? 前に誰かが封印を解いたって言ってたけど、そいつらしかいないんじゃない?』


「そうのんけど、違うのん。封印を隠匿していた精霊が捕らえられた事で、封印が露出した際に精霊狩りは封印を解こうとはしてたみたいのん。強力な封印だったのんから、何かお宝でもあると思ったんじゃないかのん? でも無理だったのん。前にもいった様に、わすら精霊王に匹敵する存在じゃないと干渉不可能な封印のん。でも、実際に封印は解かれたのん、結果として精霊狩りのほとんどはエレメンタル・イーターに食べられたのんけど、数人は洞窟の外に逃げ出して洞窟内の出来事を一部脚色して、他の人間に伝えたのん」


そこまで聞き、話を軽く整理する。

つまり、以前から精霊狩りは行われていたが、一か月前に大規模な精霊狩りがあった。

それで、精霊がざわついてエレメンタル・イーターの封印が露出して、精霊狩りはその封印が何を封じているか分からないまま解こうとしたが無理だった。

そこに何者か、精霊王に匹敵する力を持つ何者かが封印を解いた事で、エレメンタル・イーターが復活、洞窟内で暴れだして今に至る。


「――って事でいいのかな」


「そんな感じのん。ちなみにエレメンタル・イーターは洞窟内の精霊を食い尽くした事で、多少腹が膨れて、今は洞窟の最奥で寝てるのん。安全に近づくなら、早い方がいいのん」


「でもさー、その封印を解いた奴が誰なのかとか、どこに居るのかとか分かってないんでしょ? 洞窟内にまだいる可能性もあるんだしー。敵対するにしてもしないにしても、そいつが何処にいるのか、誰なのか位分かってた方がよくない?」


ナルカの言葉はもっともだ。

どうにか調べる事は出来ないものか。


「わすらも手をこまねいていた訳じゃないのん。封印が解かれたのが、だいたい二日程前くらいのん。その後、洞窟内から精霊を逃がしたり、保護したりしてたのん。その時、わすらですら近づけない結界が張られてた場所があったのん。たぶんそこに封印を解いた奴らがいるはずのん。中を見る事すら出来なかったのんから、誰かまでは分からなかったのん。最奥に行く道の途中にその結界はあるのん。今も出て来てる様子がないのんから、気になるなら寄ってもいいかものん」


うーむ、精霊王ですら中を見る事の出来ない結界かぁ。

気にはなるが、その中から出て来てないなら、いっそ無視してもいいんじゃないかなぁ。

あぁ、でも通り過ぎた後にエレメンタル・イーターと挟み撃ちとかにされたら嫌だな。


「デイジィイイイイアァアアアイッ!!」


唐突にデイジー叔父さんが叫んだ。

みんな凄まじくビックリしている。

デイジー叔父さんは指を丸の形にして、眼鏡のように目に当てている。

ここから洞窟内の結界の中を見ようとしているのだろうか、いや、まさか、さすがのデイジー叔父さんでもそんな事……出来そうだな。


「見えたわぁん」


あ、やっぱり。


「うーん、三人居るわねぇん。大きな角の女の子と執事風のおじいちゃん、それに見た目普通の青年って感じだわぁん。一番強いのはこの青年みたいねぇん。恰好からして、あたくしたちと同じ世界から来た子、でも勇者召喚で来た子の中にはいなかったから、違う方法でここに来たのかしらぁん? それに、マレッサちゃんたちの言う勇者特権とは違うモノが宿ってる感じがするわぁん。こんな子たちよぉん」


デイジー叔父さんが空いている手から魔力を放ち、魔力にデイジー叔父さんが見えているであろう景色を投影した。

投影された景色の中に三人の人物が写る。

それを見て、パルカが声をあげた。


『あら、リリシュとルキフじゃない。何でこんな所に居るのよこの子たち?』


どうやら三人の内、二人はパルカの知っている人物の様だった。

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