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112・エスピリトゥ大洞窟到着って話

セルバトロンコを出発し、エスピリトゥ大洞窟に向かい始めて二日目の朝。


「みなさん、おはようです!! あ、ヒイロさん、夜食にと頂いたサンドイッチとっても美味しかったです!! 昨夜は寝ずの番で見張ってたですが、特に何事もなくです!!」


リディエルは朝から気持ちの良い声で挨拶をしてくれた。

デイジー叔父さんは既に起きていて、朝ご飯の準備を始めていた。


「おはようございます、リディエルさん。他の方も寝ずの番ありがとうございました。デイジー叔父さんがもう作り始めてるけど、朝ご飯までもう少し待っててくださいね」


そう言って、俺は伸びを一つしてから、デイジー叔父さんの手伝いに向かった。

テーブルに食器を置き、出来た料理を並べていく。

マレッサ、パルカ、ナルカ、グノーモスは既に椅子に座って両手にナイフとフォークを握りしめている。


「わす、甘いのがいいのん」


「肉、肉がいいもん。肉が恋しいもん!! いっそリベルタ―で買った干し肉でもいいもんよ!!」


「まったく、精霊王と神の分神体の癖に食い意地はってるわね。もっと上品に出来ないのかしら。あ、私様はサンドイッチをお願い、野菜い多めで。あと紅茶も」


「あちしは美味しかったらなんでもいーよー」


色々と注文をつけるみんなだが、デイジー叔父さんは顔色一つ変えずニコニコ顔でテキパキと調理をこなしていく。

そして、朝食の準備が終わった所で、みんなで席について食事を始める。

わいわいと賑やかな食事風景にデイジー叔父さんはとても嬉しそうだ。

朝食が終わり、テントの片付けをしてから、俺たちは再びエスピリトゥ大洞窟に向かって移動を始めた。

飛んでいる最中、リディエルはエレメンタル・イーターの件は今からでも遅くないから断った方が良いと言ってくれた。

心配してくれる事は嬉しい、でも放っておいたら被害が大きくなるだけだし、今ならまだ封印から解かれたばかりで動きが鈍いとグノーモスが言っていた。

再度封印するなら、今の方が都合がいいと俺は思う。

俺が断らない事が分かるとリディエルは少し悲しそうな顔になった。


「そこまで言うのであれば、もう我々はお止めしないです。我々、神域の存在は基本的に竜種との相性が良くないです、残念ですが、お手伝いする事は出来ないです。……申し訳ないです」


「ごめんね、リディエルさん。心配ばかりかけて。手伝いに関しては気にしなくていいですよ、運んでくれたし、一緒にご飯食べたリディエルさんたちが怪我とかしたら凄く嫌だもん、俺」


俺の言葉にリディエルを含めた他の神兵たちも何だか複雑な顔をした。

何だ? 変な事言ったか俺?

その後は取り留めのない話をしながら、エスプリトゥ大洞窟に向かった。

ちなみにグノーモスは地の精霊王だけあって、地面からはあまり離れられないとの事で先にエスピリトゥ大洞窟に移動しておくと言って地面に潜っていった。

地面の中を移動するのだろうか。

そして、飛ぶ事数時間、お昼になる頃に俺たちはエスピリトゥ大洞窟の前にある小さな宿屋町

に辿り着いた。

ただ、建物の数に比べて、どうにも外を出歩いている人の数は少ない。

この大洞窟はセルバブラッソとジャヌーラカベッサを繋ぐ唯一と言っていい道のはずだ。

貿易商や旅人なんかがもっと多くいてもいいと思うんだが。


『エレメンタル・イーターが出たって話がもう広まってるって事もんね。出会わないように気を付けて大洞窟を進むより、もっと南下して安全な所からエスピリトゥ山脈を越える事にした方が安全もんからね』


『大洞窟の入り口に看板と柵があるわね、立ち入り禁止って事かしら? なんて書いてるの?」


看板には崩落事故多発中の為、現在通行禁止中と書いてあった。

エレメンタル・イーターの事は書いていない。

はて、どういう事だろう?


『まぁ、安直に強力な竜種が居ますなんて言えば、功名心の強い冒険者が大挙して押し寄せるでしょうし、無駄な犠牲を出さない為の方便でしょうね』


『精霊観測所からの勧告もんから、オラシオが手を回してるみたいもんね。魔王国との戦争がなければ、討伐隊くらいは差し向けてたもんかもね』


洞窟に入り口前でそんな事を話していると、リディエルが申し訳なさそうな感じで話しかけてきた。


「あ、あのですね、今、言うのもなんなんですが。一応、任務は完了したですから、そのぉ……」


「あぁん、ごめんなさいねぇん。あたくしったら気が利かなくて、はぁい、これあたくしが凝縮した高密度魔力を物質化した物よぉん。リディエルちゃんたち、運んでくれてありがとうねぇん。また、どこかで会えたらいいわねぇん、じゃ、気を付けて帰ってねぇん」


「は、はいです!! ありがとうございます!! あの、その……」


リディエルがデイジー叔父さんから高密度魔力を物質化した物、なんだか丸いビー玉みたいな感じ、を受け取った後、何かを言おうしながら目を泳がせる。

そんなリディエルの肩を他の神兵が掴み、振り返ったリディエルに対して首を横に振っていた。

何だろう?

俯いたリディエルは俺たちに向かって深く頭を下げた。

他の三人の神兵も同じように頭を下げる。


「ごめんなさいです、ただのSランクの魔物なら我らも手助けできるのですが、竜種は神への反逆者としての側面があるです。だから、我らは力になれないのです。ごめんなさいです……」


「リディエルちゃん、他の神兵ちゃん達も、心配してくれてありがとうねぇん。でも大丈夫よぉん。あたくしの愛に不可能はないわぁん、だから、また会いましょう。その時は腕によりをかけた食事をごちそうしちゃうわぁん」


リディエルたちは少し涙目になりながら再度頭を下げて、セルバトロンコへと戻っていった。

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