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111・その封印を解いたのはって話

夕食を終えて、俺たちはテントの中で寝る事にした。

ありがたい事に神兵たちが夜の間、寝ずの番をしてくれるとの事。


「高密度魔力だけじゃなく、美味しい食事もいただけましたですから!! 遠慮は無用です!! 皆さんの安全は我ら神兵にお任せです!!」


リディエルをはじめとした神兵たちはよほど食事が美味しかったのか、妙に張り切って寝ずの番をしてくれた。

俺は大丈夫かどうか不安ではあったのだが、マレッサやパルカが言うには元々神兵は地上で活動するにあたって睡眠は不要なのだという。

まぁ、今は節約の為に短時間の睡眠はとりつつ交代して寝ずの番をしてくれるらしい。

強さもSランクの魔物とも対等に戦えるから心配する必要はないと、二人はさっさと寝床に入って寝てしまった。

俺は寝ずの番をしてくれる神兵たちに夜食のサンドイッチと紅茶を渡してから、布団に横になった。


「はぁ、エレメンタル・イーターがこれから向かうエスピリトゥ大洞窟に最深部に潜んでいる、かぁ。周辺の精霊は既に逃げだしてるけど、洞窟内部の精霊はもう手遅れ、か……」


安易にグノーモスのお願いを聞き入れた事をリディエルに咎められはしたが、後悔はない。

俺としては、むしろエレメンタル・イーターの事を先に知れたのだから助かったくらいだ。

何て言ったって、ナルカは精霊だ。

しかも、飛び切り変わった生まれの。

マレッサとパルカの神力も吸収してる以上、万が一ナルカが食べられたりしたら、エレメンタル・イーターは神の力も取り込む事になりかねない。

そういう存在がいる事を知れた以上、事前の対策や対応がとれるというもの。


「まぁ、わすはエレメンタル・イーターを倒してとか、始末してとかは言ってないのん。もう一度封印する為に無力化してほしいだけのん」


布団に横になった俺の目線の先にいるグノーモスと目が合った。

いつの間に……。


「封印の為の無力化って、それ倒すより難しいんじゃないのか? 封印する魔法とか道具とかはともかく、無力化って気絶させるとかか?」


「ちょっと違うのん。気絶と言うより、しばらくの間身動きを完全に封じてくれれば、あとはこっちでなんとか封印するのん。元々、あれの体から精霊の要素を取り除く為の封印だったのんけど、誰かが封印を解いたみたいのん。だから、わすたち四大精霊王がわざわざ精霊界、こことは違う次元の世界からやってきたのん」


「誰かが封印を解いた? いったい誰が?」


「さぁのん? 故意に解いたのか偶然解けたのか、それは分からないのん。でも、普通なら精霊王並みの力がないと封印を解けないし、何より干渉する事すら不可能のん。封印を解いた奴は精霊王と同等程度の力があると見ていいのん。封印を解いた事が偶然なら、敵対する事はまずないのん、でも、もし封印を故意に解いていたのなら、戦う事になるかものん」


「エレメンタル・イーターに精霊王並みの力を持った存在かぁ。話し合いで解決とか出来ないものかな」


「ブハハッ!! 話し合いかのん!! 人の子、それは戦うよりももっと難しい事のん。話しかけた次の瞬間には人の子の首が飛ぶ事になるのん。悪い事は言わないからやめといた方がいいのん」


俺の考えはグノーモスに一笑に付されてしまった。

まぁ、甘いってのは分かっちゃあいるが、話し合いの余地があるような相手なら話し合いで解決した方が早いとは思うんだがなぁ。


「明日、エスピリトゥ大洞窟に着いたら、エレメンタル・イーターの居る最奥までの道案内をするのん。精霊たちも協力するように話しは付けるのんから、洞窟内で迷う事はないのん。詳しい事はまた明日話すのん、じゃおやすみのん」


「あぁ、グノーモス爺ちゃんもおやすみ」


そして俺は眠りにつく為に目を閉じた。

外では神兵たちが何か話をしている。

虫の音やフクロウみたいな声がしているせいでよく聞こえはしない。


「任務はエスピリトゥ大洞窟まで運ぶ事。私たちの任務はそこで終わり。あとはマムから高密度魔力を受け取って本隊に合流すれば、後は関係ない事……」


「美味しい食事を気前よく提供してくれた事は感謝している。この見張りがその恩返しだ。元より、本来なら人間と関わるような立場じゃあないぞ、オレたちは」


「分かってるよ、そんな事。でもさ、いい子だよあの子。マムの甥ッ子なだけはあるよね。私たちに対してもさ、普通に接してくれたし。なんか話してると心地いいんだよね」


「うちは、ヒイロさんを危険な目には合わせたくはないです。出来れば助けになりたいです……けど」


「相手がエレメンタル・イーター、精霊を喰らう悪喰きの竜。竜種の中でも飛び切りの変わり種。Sランクの魔物を相手出来る私たちでも竜種はどうしようもない。万全の状態の本隊が対処にあたるなら、一時的は討伐は可能。でも、あれは精霊の不滅性も取り込んでるから」


「そう遠くない内に復活するな。その場合腹が減ってるから、より狂暴性も増してるはずだ。討伐し続ける何て事、神の命でもないのに無理がある」


「心苦しいけど、私たちに出来る事はたぶんないよ。もし、私たちの内の誰かが食べられたりして、力を取り込まれたらかなり厄介な事になるし、……やっぱり手助けは出来ないよ」


「分かってるです、分かってはいるんです……」


何を言ってるのかは聞こえなかったが、何か真剣な様子だと言う事は分かった。

どんな内容の会話をしていたのだろうと、気にはなったが盗み聞きなんてよくない。

ウトウトとする意識の中で、俺はあの神兵四人に何事もないようにと思いながら、意識を手放した。

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