素直になれない二人 〜不思議な靴は二人を結ぶ〜
皆さんこんにちは、まみやまみです!
楽しんでくださるととても嬉しいです!!
「お前、また先生に怒られたのかよ」
「はぁ⁉︎あなたに言われたくないわよ!ルイなんて私よりも怒られてるじゃない!学園に遅刻ばかりして……」
「ニアも人のこと言えねーだろ!あほ」
「ばか!」
「まぬけ!!」
いつものように言い合いをする私たちの間に友達が割入ってくる。
「あなたたち、少しは仲良くする気ないの?二人とも本当は優しいんだから……」
「「は?こんなやつが優しい?いいや、優しくなんかない!こんなやつ大っ嫌いよ(だ)‼︎」」
私と、ルイは同じ学園に通う同期であり、ライバルであり友達だ。というか、ほぼ毎日ケンカをする相手という感じなのだが。
どちらともなくケンカを始め、いつのまにか終結しているというのがいつもの私たちだった。なのに……。
「なんでこうなったのかしら……」
「それはこっちのセリフだし」
ピタリと寄り添う私たちは周りから見ればカップルだ。
「なぜ、そうなったのかというと、もちろんお客様のせいです」
営業スマイルを浮かべながら淡々と告げる店員に怒りが湧いているのはルイも一緒だろう。遡ること3時間前……。
「いたっ……あ、靴づれしたわ。もしかしたらサイズがあわないのかしら?」
うーん、そういえばこの靴を買ったのって結構前よね。最近は靴屋にも行ってなかったわ。そろそろ新しい靴を買わなきゃいけないわね。今日の放課後にでも靴屋にも行きましょう。
そう決めた私は放課後に靴屋へと向かった。
「まぁっ!最近はこんな型の靴があるのね!あらあら、こんなものも!これはちょっと……私には似合わないわね」
最近行っていなかったせいか、初めて見る靴がたくさん並んでいた。
「お客様、こちらはいかがでしょう?」
突然話しかけられてビクッと震える。急いで振り向くと店員が立っていた。
いつのまに後ろに……。
店員の手には不思議な形の靴が乗っていた。
「これ、ヒールがないわね。男性用ではなくて?」
「いえいえ、これは男女問わず履けるようになっているのです。そして不思議なことに持ち主の足にピッタリと寄り添うのですよ」
怪しさ満載な靴だが持ち主の足に寄り添うという部分には惹かれる。
「じゃあ、少し貸してもらってもいいかしら?」
「はい、どうぞどうぞ」
私は靴を受け取り、足を入れようとすると……。
「あぁっ!お客様、お待ちください!靴に足を入れないでください‼︎」
「……あなた、わざと私が足を入れた後にいいましたの?」
止められてももう遅い。ちょうど足を入れたところだ。
「いえいえ、私はお客様の安全第一に、気づいたと同時に言わせてもらいました」
そう言って営業スマイルを浮かべた彼の後ろに悪魔が見えたのは気のせいだろうか……。
「で、結局足を入れたら何がダメなのよ?あなたが言った通り足をピッタリと包んでくれてすごく履き心地はいいわよ?」
「そうなんです。ピッタリなんです」
「……何よ、どういうこと?」
「足が抜けないんです」
「は⁉︎」
グッグッと足を引き抜こうとするが全く抜けない。
「あのねぇ、あなた、何でこんなものをお客様に薦めてるのよ」
「ですが、結局履くことを選んだのはあなたです。私には何の責任も……」
ガチャ
突然店の扉が開き、誰かが入ってきた。
「あ……」
「げっ……」
私たちは顔を見合わせると同時に顰める。
「なんで、ニアがここにいるんだよ」
「それはこっちのセリフよ、ルイ。早く出てって頂戴!」
すると彼はフンッと鼻を鳴らす。
「そーゆーお前が出てったらどうだ?」
「私は靴から足が抜けなくて店から出れないのよ」
「は?……ダサ」
「っ‼︎」
怒りで殴りそうになるのを抑える。
「あなたね、淑女に向かって何よ!本当にあなたって……」
「お客様〜、こちらはいかがでしょうか?」
そう言って先程の店員がルイに差し出したのは私の足が挟まっている靴のもう片方。
「は?あなたいつのまに。というか、何をし……」
「いいな、それ。ちょっと貸してもらうな」
ズボッ
「あぁ〜!お客様、待ってください!!」
私が口を挟む前にルイは足を靴の中に入れ、狙ったように店員は声を上げる。
「あ?なんか問題でもあるのか?」
「それ、私が履いてる足が抜けない靴よ」
「何言ってんだニア。足は抜ける……抜けないっ⁉︎」
いくらルイがグイグイと足を引っ張っても靴からは抜けない。
「私が作ったこの靴は持ち主の足と全く同じサイズになるのです。まぁ、ちょうどよかったですね。私はその靴を誰かで試したいと思っていたところでしたし……」
「まさかそのために私たちをはめたんじゃ……」
「いえいえ、そんなことはありません!お客様第一ですので!」
胡散臭い笑顔を浮かべると店員はルイの足を持ち上げ靴を見る。
「うーん、足が抜けないこと以外には問題はなさそうですね」
「問題大ありだ!どうやったら抜けるんだよ!」
「まぁ、時間がたてば抜けると思いますよ?」
時間ってどのくらいよ!
叫びそうになるのを抑えながら私は告げる。
「帰らせていただきますわ!失礼します」
「あぁ〜!お客様、お待ちください!」
誰が待つものか!と勢いよく足を踏み出した瞬間。
「へ?」
「え?」
ビタッ
突然ルイがこちらに来て私にぶつかった。
「ちょっと、何よ、近づかないで!」
「いや、ちがっ、これは靴が勝手に動いて……」
するとスススッと店員がこちらに来て告げる。
「この靴は対になっているものが離れそうになると、自然にくっつくのてす。ほら、よくあるでしょう?靴が片方なくなるとか……」
靴が片方なくなることはあまりないのではなくて?
「おい、これって時間経つまでこのまんまか?」
「えぇ、そうなんです。」
そうして、冒頭に戻るわけなのだが……。
「時間がたつまで少しこちらでお待ちになってくださ……」
「断る」「お断りいたします」
このまんまじゃ、今履いている靴ごと研究されることを察した私たちは急いで立ち上がる。
「あなたと一緒だなんて癪だけど、仕方ないわ。ここは同盟を組みましょう」
「あぁ、賛成だ」
「え、あっ、お客様ぁ〜⁉︎」
私の実験体が〜という呪いのような声が背後からしたが気にせず私たちは走った。
「ふぅ……ここら辺で大丈夫かしら?」
「あぁ、まいただろうな。一旦休憩するか?」
「っ…ど、同盟を組むとは言ったけれど一緒にお茶会をするだなんて言ってないわよ?」
いつものくせでついつい口からそう、もれてしまう。
「ま、まぁ、しないとも言ってないけれどね」
「ぷっ……結局休憩したいんじゃないか」
うんともううんとも言えず私は黙る。
「じゃあ、入るぞ」
近くにあったカフェにルイは入っていく。私も急いでそのあとを追っかけた。と、いうか履いていた靴が勝手に動いてルイについてゆく。
「少しは女性に歩幅をあわせなさいよ。そんなんじゃ婚約者ができてもすぐに振られるわよ」
「ついてこれないような女性を婚約者にする気なんて毛頭ないから大丈夫だ。ニアにできるんだから他の女性もついてこれるだろ」
そーゆーことを言っているのではなくて……。
と言葉を続けようとしたがルイが席につき座ったので私も急いで座る。
「どれ食べるんだ?」
「うーん……ルイは?」
キラキラと宝石のようなケーキの名前が並んでいて正直迷いすぎて決められない。
「この、モンブランとアップルパイで迷ってる」
モンブラン!アップルパイ!
両方とも私の好物だ。
「ルイ、一つづつ頼んで半分こしないかしら?」
ニヤリと笑いながら提案するとニヤリとルイも笑って頷く。
「もちろんだ!」
「は〜、満足ね〜」
「あぁ、幸せだ」
思いのほか量はあったもののぺろりと私たちは平らげてしまった。
「やっぱり持つべきものは友よね〜。半分こできるのは嬉しいわ。こういう時だけだけはルイと友達でよかったって思うわ、本当に」
「だけってなんだよ、だけって」
そんなルイを無視しながら私は言葉を続ける。
「でも、こんな日ももうすぐ終わっちゃうのね……」
「いや、無視すんな。てかなんだよ。終わったりなんかしないだろ?」
「私、来週、婚約するのよ」
「……っ⁉︎」
重苦しい沈黙が流れる。
「応援してよね、新しい婚約者と仲良くできるように」
「誰と、誰と婚約したんだよ!」
大事なライバルを取られたせいなのか怒ってくるルイに苦笑いしながら答える。
「まだ、名前も顔もわからない人。明日、顔合わせの予定なのよ。昨日お父様に言われたわ。明日の顔合わせで問題ないようなら婚約させるって。世に言うところの政略結婚ね」
「ニアはそれでいいのかよ」
私は……。いや、私の考えなんて政略結婚を前には一蹴されるのだろう。
「私のことなんていいわよ。……まぁ、そう考えるとこの靴って有難いわね。ルイとじっくり話す時間をくれたのだもの。ルイと顔を合わすたびに喧嘩してたし、この靴がなければこうして話すこともなかったわね」
婚約するば軽々と異性に話しかけることは禁じられる。なぜなら、よからぬ噂を立てられることがあるからだ。だからこれからはルイとこうして話すことはできない。
「今までありがとう、ルイ」
「……そんな、最後みたいな言い方すんなよ」
と、言いながらもルイの声も沈んでいた。
「そろそろ、お店に帰りましょう。靴を持ち逃げされたって被害届を騎士団にだされても困るわ」
「……そうだな」
これが最後かと思うと胸の奥がズキズキと痛む。
なんだかんだ言っても、結局ルイのことは嫌いじゃなかったものね。ただ、友達と気軽に話せなくなるが悲しいだけ。
そう、言い聞かせて私は靴屋へと戻った。
「お客様、お戻りになられたのですね!さぁ、早速研究を……」
その言葉に私たちがヒッと息を呑んだ瞬間……。
カチッ
「あら?なんか、足が軽く……あっ」
「靴が抜けるぞ!効果が切れたのか!」
それを聞くと残念そうに店員は「はぁ〜〜〜」と息をつく。
「研究できず、ですね。……もう一度履くきはありませんか?」
「「ありません!」」
そう言うと、私たちは勢いよく靴屋を飛び出した。
そして次の日。
「ついに、婚約者とご対面ね」
「ニア様、憂鬱ですか?先程からため息ばかりですが?」
メイドがそう声をかける。
えぇ、もちろん憂鬱よ!と、言いたいところだがまだ会ってもいないのにそんなことを言うのは失礼だと思い直し口をつぐむ。
「大丈夫ですよ、なるようになります!」
「あなたは、ポジティブすぎるのよ」
まぁ、でも気が紛れたことには変わりはない。メイドにお礼を言うと私は婚約者が待つ部屋へと向かった。
「え……?」
ドアの向こうで立っていた人を見て私は思わず立ち止まる。
「えーっと……婚約者ってあなた?」
ドアの先にいたのは……昨日の店員さん。
たしかに貴族でもない人が魔法の靴を作れるわけはないわよね。というか、この人が本当に婚約者なの⁉︎え、すごく嫌なのだけど。
「いいえ、私は違いますよ。ただの店員です。婚約指輪を作りにきました」
その言葉を聞き、私はホッと息をつく。
「なら、私の婚約者は……?」
「この方ですよ」
店員が指差した先には……。
「……ルイ?」
「……ニア?」
え、待って、ルイが私の婚約者ということ?政略結婚の相手?
「な、何であなたが……」
「それは、俺が言いたいところだ。今日の朝唐突に婚約者のもとに行くぞとか言われたんだからな」
え?え?
ルイが婚約者だと言うことに驚きすぎで私の頭は混乱状態だ。
「ルイ、あなた、私が婚約者でいいの?」
ドキドキとガラにもなく跳ねる心臓を押さえつけながら私はルイに問いかける。
「まぁ、ニアでも別にいい」
その言い方にカチンときてついつい言い返す。
「つまり、ルイは誰でもよかったってこと?」
「別にそうは言ってないだろ。ていうか、ニアこそ誰でもよかったんじゃないのかよ?」
「は?勝手なこと言わないでよ!」
ついついいつも通り喧嘩腰になってしまった瞬間。
カチリ
突然店員が私の指に指輪をいれた。
「あー!お客さますみません!試作品段階の指輪をはめてしまいました!その指輪一度はめると時間が経つまで取れないんです!」
「は⁉︎あなたまたなの!何やってるのよ!」
店員は悪びれもせずにもう一つ指輪を取り出すとカチリとルイにはめた。
「あー!ついうっかり……」
「……ここまでくると怒る気すらわかないな……」
呆れたようにルイはため息をつくと言葉を続ける。
「ちょっと頭冷やしてくる。ニアが婚約者って知って混乱してるらしい……」
「えぇ、私もよ。頭冷やしてくるわ」
そう言ってお互い逆の扉に向かった瞬間。
「え⁉︎」
「は⁉︎」
指輪が思いっきりルイの方へ行き、ピタリとくっついてしまった。
「「……」」
「すみません、それも対になっておりまして、離れられないようになっているんです」
……。
「ふふっ」
「あははっ」
思わずどちらともなく笑い出してしまった私たちを驚いたように店員が見つめる。
「あぁ、別にあなたのことを許したわけじゃないから。でも……ありがとう。毎回あなたのお陰でいやでもルイと話さなくちゃいけないわね」
「そうだな」
ひとしきり笑い終わると私はルイに告げる。
「正直、認めたくないけど、あなたとの婚約できて、すごく嬉しいわ」
「実は、俺もだ」
ニカっと笑うとルイは私に手を差し出した。
「これからよろしくな、ニア」
そんなルイにつられるように私も微笑む。
「えぇ、よろしく、ルイ」
今はまだルイのことどう思っているとかはよくわかっていない。でも、いつかこの気持ちに言葉をつけれることを願って、ルイの手に出しは手を添えた。
end
読んでくださりありがとうございました!!
もしよければこの小説のいいタイトル、思いついた方がいたらアドバイスをくれると嬉しいです!!
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