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ばいおろじぃ的な村の奇譚  作者: ノラ博士
45/62

其ノ四拾五 冥婚で子供を授かる村

 奇妙な村だった。


 日本の村山盆地へ続いて位置する、渓谷の土地。山間を川が流れ、風の吹き抜けるこの場所は、その隣する盆地と比べて季節の移り変わりに差異があり、夏の暑さはあまり続かない。しかし、流石にお盆である今の時期だと、同じく酷暑を感じさせる気温となっていた。

 周辺の地質には、間隙に富む凝灰岩の構成するところが多いため、ニイニイゼミの鳴き声しみ入る(しず)けさに包まれており、そのお陰で幾ばくかの清涼さを感じられてはいる。それは幸いと言っていいだろう。


 それにしても、やはり蒸し暑い。日本の夏は湿度が高い傾向にあるので、世界を旅していると尚更にそう感じられる。この短いトンネルを抜けたら、また強い日差しにさらされるのかと、やや気が滅入る。

 …そういえば、このトンネルはつい先日、大雨で土砂崩れが起こって車ごとの生き埋めがあった場所か。今朝のニュースだと、脱水症状などで複数名が亡くなっているのが発見された、という話だった気がする。


「――ていうわげで、通夜があるっす」「今日、あるっす」


 昼の陽光を浴びながら進んでいった先、川沿いの集落に差しかかって間もなく。黒っぽい服を着た2人組の男性が、少し重々しい口調で言葉を発していた。話し相手は、民家の軒先に立つ中年も終盤の女性である。


「まだわげえっけげんどな、冨樫さんとごろの息子さん…」


「んだ」「んだっす」


「こんやぐしゃば、のごすてなあ…」


「ほだなこどだがら、久すぶりにアレがあるっす」「今夜、あるっす」


「……しぇめで、んぼこは生みだぇよなあ」


「んだ」「んだっす」


 思いがけず、中々に気になる会話が聞こえてきた。タイミングと若い男性という情報を考慮するに、トンネル事故での死亡者の葬儀があるのだろうか。

 何にしろ、通常なら相容れない「死者」と「子作り」が絡められた儀式の気配がする。やや早計かも知れないが、こういう時は、最も面白い状況を想定して動くに限るものだ。凍結保存した精子を使うわけでもなさそうな雰囲気だったし、これは期待したい。


 私は辺りを散策して、それが開催されるのにそれっぽい場所がないか、探してみることにした。まだ日も高いことだし、そのくらい悠長に過ごす時間はあるだろう。


 まずは、長い石段を上っていく先々にある寺院群だ。木々に囲まれ山肌に、危うい崖上の岩肌に、ブナ材をふんだんに用いた造りのお寺が点在している。急峻な地形のあちこちに配されている様からは、まるで山全体が寺院であるかのような印象を受ける。ただ、ピンと来る感じではなかったな。


 次に、凝灰岩が風雨による侵食で形を成された奇岩怪石だ。ダイナミックな曲面を呈する巨大な岩塊、その表面をスケールの大きい海綿状の窪みが覆っている。そうした、滑らかさと等間隔性を感じさせる構造は生物的にも思え、アントニ・ガウディの建築を彷彿させすらする。あと、ちょっと涼しい。


 その後は、ついでに寄ることにした小さなお堂だ。ふむ、観音堂か。南京錠がかけられていて、扉のわずかな隙間からしか中は見れないが、視認された大きな絵馬らしきものから、何かを感じる。…着飾った男女が描かれているそれについて、私は、考古学などに詳しい後輩に電話で聞いてみることにした。


「それは、ムカサリ絵馬でしょうねえ」


 2回かけて出なかったものの、すぐに折り返しで連絡がきた。そして現状をざっと説明したところ、私が欲しかった情報をすらすらと話し始めた。


「先輩は、冥婚というものをご存知ですか?」


 ええっと、主に供養のために行われる、死後婚のことだったか。そうだ、中国を訪れていた時に、冥婚の相手になる新鮮な死体を売買したり、殺して用意するといったケースを目にしたことがある。


「それはまた、極端な例ですね…! でも、それなら話が早いです。東アジアや、東南アジアでちょくちょく見られる風習で、多くの場合は、未婚のまま死んだ男性のために行われます。ちなみに、死後伴侶も死者であることまで求められるのは、事例としては少ないですね」


 なるほど、私が中国で見知ったのはハードなものだったらしい。


「山形県の一部地方に今も残る、ムカサリ絵馬という風習は、マイルドな部類になりますね。冥婚の相手は生者ですらなく、非実在の異性と共に、婚礼衣装を着た姿を絵馬に描く、というものなんです」


 つまり、私が先ほどその絵馬を見かけた観音堂は、死後婚と関わりのある場所ということか。今のところ、これが1番当たりっぽいな。

 後輩はこの後も、ムカサリの語源や、発祥は江戸時代だが第二次世界大戦を経て流行したこと、それと山形県のこの地方における葬儀に関する風習について、丁寧に教えてくれた。このくらいの前提知識があれば、今夜に行われるはずの儀式を目の当たりにした際に、戸惑いなどが軽減されるはずだ。


「何か面白いことが分かったら、教えて下さい!」


 肯定の返事をして、通話を終了する。…おそらくは、ムカサリ絵馬とはまた異なるタイプの冥婚、それによって子を成す不思議を実現させるメカニズム。それらについての参考情報は得られなかったが、あとはフィールドワークあるのみだ。場所が本当に観音堂なのかも定かでないので、夕食を早めにとってから、村内をもう少し探ってみるとしよう。

 その様に決めた後、私は目を付けていた食堂へすっと入った。おお、クーラーが効いている。席につき、名物だという芋煮の定食を颯爽(さっそう)と注文する。


「おまぢどうさま」


 少し早めの時間帯だったからか他の客は1人だけで、頼んだメニューは5分そこそこで運ばれてきた。では、頂くとしよう。

 ほふ、ほふ。暑い時に熱いものを食べるのは少しどうかと思ったが、頼んで正解だったな。素朴な醤油ベースの汁に、牛肉とナガネギの風味が出ていてほっとする味になっている。それが染み込んだお麩もいい感じで、サトイモはねっとりした軟らかさ。うん、美味しい。


「矢萩さん、通夜には参加するのがい?」


 私以外で唯一の客が、店員のおばさんに小声で話しかけていた。眼鏡の聴力サポート機能を強めにして、骨伝導でも声を拾う。聞こえてないていで食事を続け、口にはご飯を投入する。


「そりゃあ、念仏講だがらね。御詠歌うたいに行ぐっすよ」


「観音堂、きれいにすておいでよいっけな」


「んだっす。アレもあるす、ちょうどよいっけね」


 よし、今夜は観音堂に行けばよいな。念のため、他にも通夜が行われないかはチェックしておこう。


 3時間後。新月すら沈んだ暗い空、雲の合間から少しばかりの星明かりだけが地を照らす。結局、今日この辺りで行われる通夜は1件だけであった。私が生物学的なものと想定する儀式、村人たちがアレと呼称するものは、この観音堂がその開催場所である蓋然性が高いだろう。

 ん、鈴と鉦鼓の音が聞こえてきた。参列者はもう皆が集まったようで、お堂の扉は閉じられている。私は裏手へと移動して、わずかな隙間から観察を開始した。


「よ~き~み~ち~に~

 す~す~め~ば~す~す~む~

 よ~の~な~ら~ひ~

 ひ~と~の~こ~こ~ろ~は~

 い~は~き~な~ら~ね~ば~」


 これが御詠歌というやつか。年配の女性たちが歌っていて、その中の1人は芋煮のお店のおばさんだ。他の参列者は……室内を見渡すのはちょっと難しい感じだが、全部で20数人といったところか。女性は子供と年配の者ばかりで、婚約者らしき人が見当たらないのは少し気になる。死角にでも居るのだろうか?

 納棺は既に済んでいたようで、男性の顔だけが見えるように開かれている。年齢は三十路にも至ってないくらいに見える。確かにまだ若かったのだな。


「よ~を~て~ら~す~

 ほ~と~け~の~ち~か~い~

 あ~り~け~れ~ば~

 ま~だ~と~も~し~び~も~

 き~え~ぬ~な~り~け~り~」


 仏様を称えるという歌が続けられた以外には、特に珍しくもない通夜の時間が過ぎていく。やや退屈に思えてきていたのだが、深夜になり、もうそろそろ日付が変わるくらいになった頃、参列者たちがぞろぞろと外へ出ていった。半通夜だったのだろうか。それとも、外に出て何かを執り行うのだろうか。

 そう考えていると、白無垢の花嫁衣裳を身に(まと)った女性が、古びた和装の老女と共に入れ替わりで入ってきた。よし、それっぽくなってきたぞ。


 2人が座った場所は隙間からでもよく見える位置取りで、助かるな。…ふむ、老女の方は、所作からして盲目のようだ。右手にはムクロジの実を連ねたものを持っている。イタコなどが儀式で用いる、イラタカの数珠というやつだろう。ハナマルユキやヤクシマダカラといったタカラガイの貝殻、ツキノワグマにニホンイノシシのだと思われる牙も挟まれており、これぞ呪具といった趣である。


 その老女が、(ひつぎ)を開いた。ドライアイスの冷気がもやっと揺れる。中に納められていた男性は、紋付き羽織袴を着せられていた。花嫁の方を見た時点で明らかだったが、やはりこれは、ムカサリ絵馬とはまた違ったかたちの冥婚なのだろう。

 花嫁は、新郎の顔に手を添えて眺めている。その優しい触り方と眼差しからは、故人を愛していることが察せられた。後輩がこの地方の風習として話していた前火葬、つまり通夜の翌朝には火葬となると、こうして見て触れられるのは残り半日を切っている。最期の逢瀬というわけだ。


 おや。そんな感動的な場面において、老女は新郎の下腹部へと右手を突っ込んでいる。その手付きからして、陰囊(いんのう)の切開を数珠の牙で行っているのだろうか。いや、今ちらっと見えたのは、メガロドンの歯の化石だ。ステーキナイフにも似るその鋸歯(きょし)は、肉を切るのに適している。「天狗の爪」として崇められることもあるので、呪具にセットするのにもぴったりだろう。

 なお、この老女の持物はもう1つあり、それは紅く染めた絹らしき布を幾重にも被せた、40センチメートルくらいの長さな竹の棒である。左手で握り締めて、顔が見えないくらいの顔先で祈り振っている。


 手術として見ると、あまり手際が良いとは言えないものだったが、どうやら成功はしたようだ。新郎の下腹部から戻された老女の右手には、ぱんぱんに膨らんでいる精巣が握られていた。長径が5センチメートル半近い概ね球形のそれは、明らかに通常の状態ではない。精巣腫瘍ともまた違いそうだが、これは何だろうか?

 そう考えている内に、老女はその玉を己の太腿(ふともも)で挟み、大きなサメの歯によって切り込みを入れていく。そして、その中から()()()を取り出した。


 何だ、これは? 精巣の内部にこんな球体が形成されるとは、一体どんな…いや、そうか。その可能性はあるか。質感も似ているし、それなら儀式の説明もつく。そうなると…おおっ!?


 私が考察を進めている間に、老女はその珠を花嫁のところへと持っていき、股を開くように指示をしていたようだった。そして、花嫁は、既に準備されていたその若く湿った秘部を露わにした。白い珠を押し当て軽く前後に滑らせて、正確な位置を把握したらしい盲目の老女は、手にした珠を奥へ、奥へと押し込んでいく。

 花嫁は、白磁の様に透き通る顔肌を紅潮させ、上品な吐息をか細く漏らしている。ゴルフボール大の球体をその様にされては、無理もないだろう。そして、なるほど。理にかなっている。


 この儀式の肝は、間違いなくあの珠であろう。ならば、当然ながらそれを調べたい。どうにかして取り出したいが、さてどうするか。まずは様子見だ。花嫁が眠ってくれれば楽なのだが。

 …ほう。花嫁は、新郎の横に敷いた布団で寝るようだな。ロウソクの火に照らされた空間で、棺を開け放ったまま夫婦が共に横になる。翌朝までとなる最期の一夜を、2人だけで過ごすのが儀式の締めであるらしい。老女は、何やら祈祷(きとう)をした後に退室していった。ガチャンと施錠される。


 およそ3時間後。花嫁が確実に眠りについたのを見計らって、私は観音堂の中に忍び込んだ。天井からなら入れるのは、夕方の内にリサーチ済みである。音を立てないようにそっと降り立ち、まずは室内を見渡しておく。

 おお……、これは圧巻だな。隙間から覗き見ていた時には気が付けなかったが、お堂の中の四方の壁は、いや天井に至るまで、数多のムカサリ絵馬で覆い尽くされていた。死者との婚姻が行われた(あかし)にこうも囲まれると、ちょっと奇妙な気持ちになってくる。


 その場でゆっくりと回転しながら、絵馬に込められた想念を感じようと順に目にしていく。…よし、余裕があればまだ見ていたいが、夜明けも近いことだしそうもいかない。

 私は、新郎の方へと足を運び、先ほど老女が切開した部位に指を入れた。花嫁の中に納められた珠は、手術の手(さば)きからして左側の精巣から取り出したものに違いない。私の考えが正しければ、右側にも珠はあるはずである。よし、これが精巣だな。うん、やはり控えめではあるが膨らんでいる。メスで切開して…直径2センチメートルくらいの珠を入手出来た。


 もう少しで薄明になる。ゲノム解析を始めておきつつ、また天井をアクセス路として外へと出よう。村からそこそこ離れたら、今回の様子を後輩に共有しておくか。白い珠に関わる部分については、伏せておくとするが。


「その老女は、スゴイですね! それは、オナカマですよ、きっと」


 今回は1コールで反応があった。ああ、イタコの類いは東北のあちこちに存在していたが、呼び名などに地域差があるんだったか。山形ではそう呼ぶのだな。

 盲目のオナカマ、本場の純正の巫女が現存し、その作法が受け継がれてきたことに、大変に興奮しているようだ。生物学の分野で言うと、絶滅していると思ったら再発見された、みたいな感じなのだろう。


「まさにそうです、たぶん。ただ、左手にだけ持っていたという紅い布付きの竹の棒ですが、それはトドサマといって、2本1対で用いるものなのですが、そこの伝承は変質してるみたいですね。2本のトドサマはそれぞれ男女を意味していて、左手で持つのは男のトドサマなのが本来の作法なんですよ」


 死者の子種を得ることが目的なのだと考えれば、男のトドサマだけ持っていたとして、そこに呪術的な意味合いを見出せそうな気はするが、どうなのだろう。まあ、今回は生物学的な説明だけで済みそうではあるが。

 こんな感じで、この後も話は色々と盛り上がり、夫婦2人だけで最期の夜を過ごすタイプの冥婚が珍しいこと、遺体が腐りにくい雪国ならではでないかという考察、遺体と添い寝(という省略した私の説明)では子を成せないので第三者がまぐわうのではという仮説など、楽しい通話がしばし続いた。また、直に会う機会にも語らおう。


 さて、ゲノム解析の結果が出るまでもう少しだ。それまでの間に、組織の観察をしておくか。オリハルコンのメスで珠を両断し、その断面を顕微鏡で観察する。一見するとトリュフ的なマーブル模様であり、実際それと同様であろう形成プロセスを利用してと思われる、精細管に似た構造が発達している。その内側には精原細胞らしきものも確認される。やはり、偽男根化したマラタケとそっくりである。

 マラタケは、私が以前アマゾンの奥地で発見したハラタケ目に属するキノコであり、生きた男性に感染すると精原細胞を取り込んで、その維持と精子形成を行うという稀有な特性を持っている。

 キノコは胞子を飛ばして、遠く離れた土地までやって来ることがある。日本にマラタケの近縁種が存在しても、驚くほどのことではない。そして、それが利用されていたとしても。


 ふーむ、マラタケにおいてセルトリ細胞の機能の多くを代替する特徴的な細胞、それと配置も形体も一致する細胞が存在しているな。それに、管状の構造の開放部に近い部位には、精巣上体と分泌腺の能力を兼ね備える周期的な膨大部…らしきものも確認される。左右の精巣内で片方だけが大きくなることも含めて、観察される特徴の多くが、この珠がマラタケ、あるいはその近縁種であることを支持している。


 もうゲノム解析は完了しているな。うん、思った通りだ。このキノコの内部からは新郎の細胞が検出されているし、菌糸のゲノム情報からは、このキノコがマラタケの変種と呼ぶべきものだという結果になっている。生者の男性に寄生するところから、精子を数ヶ月間は形成し続けるところまで、根本となる特性に変わりは無い。

 とは言え、違いも存在する。アマゾンのマラタケは、菌糸が尿道を伝って精巣まで達すると偽男根を形成し、それに少し遅れて体表からもキノコを生やす。一方で、こちらのマラタケ変種は、体表からはやや生じにくく、特に土中に埋まっていないあの様な状況では、ほぼ精巣にしか生じない、というシミュレーション結果になっている。


 また、マラタケ変種は、傘と柄に明瞭に分かれた一般的な形にはならず、丸い形のまま外に出ない地下生菌に似た状態が維持されるようだ。

 これには当然、どうやって子孫を残すのかという疑問が抱かれる。マラタケなら、胞子を飛ばすキノコは体表から生やしていた。地下生菌であれば、捕食者に食べられることで散布されるというストラテジーだ。マラタケ変種も、キノコの外側近くに胞子を作る組織が発達はするようだが、体内に埋もれたままでは意味が無い。おそらく、今回の様に儀式に使えるからと、人の手で保たれてきたのだろう。


 想像するに、ムカサリ絵馬が流行したのと同時期、かの戦時中には、子を残すために利用されていたのではなかろうか。男性は常日頃からマラタケ変種を持ち歩き、出兵する時も懐に忍ばせて、戦地で死を覚悟した時にはその胞子を尿道に触れさせる。そうして、キノコだけが遺品として帰国することもあったのだろう。

 その習慣は今に至るまで受け継がれており、今回のトンネル事故にて活用された。私にはそう考えられる。まあ、その辺の歴史的なところについては、考古学部門に話を振ってもいいかもな。


 夜の間は多かった雲は風に流され、何にも隔てられず太陽が空を昇ってきた。ふと振り返ると、まばゆい朝日が冥婚の村を輝かせているのが目に映る。

 あの花嫁は、妊娠が分かるまでキノコを腹に留めておくのだろう。死者の子供を孕んで、生んで、育てる。……観音堂で見られた無数の絵馬からは、死者の念などは感じられなかった。婚姻を果たせて成仏をした、あれはそういった儀式の記念に過ぎないのだと思う。そして、子を成せたのなら尚更であろうなと感慨に(ふけ)りながら、私は次の村へと歩みを進めた。

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