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 いや、それはこの夢のような雰囲気が生み出した必然。まさに、時は熟せり、と呼ぶべきものだったのかもしれない。だがしかしやはり唐突に──

 唐突に、シンディが、穏やかな笑みを浮かべながら、言葉を吟味しながら、その言葉を口にしたのだった。

「とっても大事なお話。私たち二人にとって……いえ、全世界の人たちにとって、その将来に関わる、とても重要なお話……」

「……」

 何かが──

 何かが──

 何かが、ついに、きた──

 そう、思った。


 シンディが、何かを、今こそ明かそうとしている。

 とても大変なコトを……。

「……」

 チャコ、促そうとして、けっきょく声がでない。

 シンディ、自らを励ますように一度弱く微笑むと、言葉をつないだ。

「チャコ、あなたが4体の天使を従えていることを、わたしが知っている、と言ったら、驚くかしら……」

 そう言った。

 体がこわばる。

 そこから来たか。そう思った。

「……」

 天使、と彼女は言った。チャコの四天鬼のことだ。

 実際の姿形は、そんな美しいものではない。まさしく荒武者だ。天使とは、彼女一流の表現だ。だがそんなことはささいなことだ。大事なのは、その四人が、チャコのものだという事実なのだ。

 普通の魔女にはけっしてない、チャコだけの、チャコにさえ不思議な、チャコだけの天使だった。


 告白にあたり、まずシンディは、まっさきにその事実を指摘してきた。

 それは、何を意味するのか?

 ここからどう、話を展開させるのか?

「──」

 気を引き締める。チャコは意を決して返答する。まるで、真剣勝負だった。

「……驚かない! なぜなら、一度テンノージの森で、あなたにお見せしたことがあるから。もっとも、あなたはそのとき重体で、意識がもうろうとしていたようだったけど──」

 だけど、あなたは知ったはず。わたしの四人(のうちの一人、広目鬼)を認識したはず。確実に。

 なぜなら、そのすぐあとに、わたしのではない(・・・・・・・・)、白い翼をはやした美少年の形をした、それこそ天使が、現れたから──!

 あの天使は、あの時点で、わたしの鬼よりも強かった。なぜなら、私の鬼ができなかったことを、その天使は楽々としてのけたから。

 思い出す。センシューの森での、多聞鬼の言葉を──


『初めてでございますな……御上が意思を持って、我等を直にお呼び下されました』

『今や力百倍! お任せ、あれいッ!』


 これは、使役者の明確な意志で呼び出された天使は、力が桁違いになる、ということを、意味している。

 ということは、つまり──

 鬼よりも強かったあのときの天使は、つまり──

 つまり、ハッキリと意識されて呼び出された、ということなのだ。


 誰に?


 シンディ(彼女)しかいないじゃないか──

「……」

 あのときの彼女には、はっきりとした意識があって、だからこそ天使を呼び出せたし、また、チャコの鬼を認識できてもいた。

 そして今。

 認識できていたことを明らかにしたことにより、自分付きの天使の存在を、公言した……ことになる。

 このことは、なにを意味するのか?

 シンディは、話をどこに持って行こうとしているのか?

 ──

 ああ、カンタンである!

 ──

 チャコは心の中で、確信と納得とともに指摘する。

 あなたとわたし、二人の立場、力量は、まったく“同格”であるということを──!


「そう、あの“天使(ラファエル)”は、わたしの天使」

 心を読んだようにシンディが答える。彼女は、こちらの思考をすべて読んでいる。

「そして、あの“鬼”は、あなたの天使」

 真っ直ぐ見つめてくる。チャコは応じる。

「春の夜に、あなたから聞いた。わたしたちは、“極女王”だと」

「そう──地球に、たった二人だけの、同格の存在……」

 シンディ、声無くカラカラと笑った。

「“極女王”……地球の地軸の両端、いわゆる極点。そこに立って地球を見れば、わたしを中心に世界は回る! ただし極の一つは右回り、もう一つは──」

「左回り……反対ね、対抗するように、なにもかも……ハァ」

 チャコ、我知らずため息をつく。

 シンディ、いたずらっぽい表情になった。肩の緊張がほぐれている。

 それはもはやいつものシンディだった。

「人類ばかりか、地球そのものの未来、ひょっとして太陽系全体の宇宙空間にまで影響するコトよ? どう、この先、聞く勇気がおありかしら?」

 ニコッと笑う。

 おありですよ……シンディ。笑みを返しつつもチャコ、そっとつばを飲み込んだ。


 二人の格と立場を明確にした上で、さらに何を語るのか?

 この上、なにを言うことがあるというのか?

 ひょっとして対立? もしかして共和?

 いいでしょう。

 今宵、この夜。夢幻の道ゆきの果ての果てまで──シンディ、あなたにつき合ってあげましょうよ!


 ハラをきめて返答しようとしたときだった。

 なんともある意味、場違いな、それでいてある意味もっともふさわしい邪魔者──ちん入者が、出てきやがったのだ!












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