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 老人の予想は裏切られた。太古の両者、互角の戦いを繰り広げたのだ!

 咆吼をあげ、雄叫びをあげ――

 ガシャガシャと突撃し――

 激突し――!

 人骨集団が吹っ飛び――

 ドラゴンが横転し――

 屋台が派手に破壊され、温泉蒸気が吹き上がり、土埃がもうもうと立ち込め──

 わーわーきゃーきゃーという悲鳴、そんな中。

 太古の骨と骨、骨同士がぶちかましあい――


 ボキンボキン――!


 ゴキンゴキン――!


 乱れ飛び――

 人々の頭の上に、屋台の商品棚に、窓を割り家屋の中に、温泉の裸の人々の中に、おでんの煮鍋の中やら、手に持つラーメンドンブリの中やらに、まだピクピクカタカタと動く手骨やら足骨やら髑髏などなどなどが降り注ぎ──

 ──


 バトルフィールドの向こう側で、最初いぶかしげに眺めていた老人が――ハタと太股を打ったものだ。

「我、してやられたり! ぬかったわい!」

 シンディを幾分敬意のこもった眼差しで――睨み付ける。

「ネアンデルタール人の軍団であったか! そりゃ、ガタイも恐竜並みだわな」

 対するシンディ、昂然と胸を張る。だが老は言った。

「が、それでも地球王には、かなわんか……」

 その言葉の通りだった。やがてバトルは終了し、そこに生き残った(?)のは、秀磨の恐竜ただ一体だけだった。

「よくぞ健闘した。褒めてつかわす」

「まだよ!」

 シンディが叫び返し、彼女は一人、ドラゴンの前に進み出た。

「ああん? おのれ自ら相手しようてか?」

 秀磨は、幼い子供を見守るかのように微笑んでいる。

「やめとけ。お前の相手は、このドラゴンを通した、この儂なのじゃぞ。わからんはずあるまい――」

 シンディは下駄を蹴飛ばすように脱ぎ捨てた。素足で地面に立つ。両こぶしを口元に引き寄せ、真剣な顔付きでドラゴンに構える。

「ボクシングかい……? 両手の甲がこちらを向いておる。まっとうなトレーニングを受けておるのだな、感心感心……」


 シンディ無言。その場でタツタツタツとステップを刻み始めた――


「で、こいつと殴り合いでもするつもり……うううん?」


 静寂が、世界を包んだ。












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