そこは一面の花畑
頭がぼーっとする。まるで寝起きのように。
あと5分、寝かせてほしいって、わがままになってみたい。
ーーー私、何してたんだっけ?
気がつくと辺り一面の花畑に囲まれて......って。
ーーーあ。死んだのかな?ここは天国?あの世の境目?まあ、どうでもいいか...私。決して幸せな人生ではなかったけれど、これでやっとうららから解放される...
解放されるんだ...
そして再び目を閉じる。
「......たは......だよ。」
「......な...だよ。」
「ぼくた...は............いっしょに.........。」
ふにっ。
もふっ。
にゃ〜〜。
ーーー......?にゃー?
再び目を開ける。
するとそこには、子猫達が私を取り囲むようにして座っていた。
なかには......
私に乗っかりごろごろしている猫、
私によじ登ろうとしている猫、
手のひらをぺろぺろと舐めている猫、
あくびをかいている猫、
蝶々を追いかけている猫、、、
猫
猫
猫?
ーーーそうか。子猫。
私は子猫と戯れていて、道路に飛びたした子猫がいて、それを追いかけて、
追いかけて、?
ーーートラックにひか...............
「ひかれてないよ?」
と、猫が喋った。
ーーー猫が喋った?
「あなたは自由だよ。」
「自由なんだよ。」
「ぼくたちはあなたといっしょにいたい。」
ーーー猫が喋ってるーーー
ーーー私よ。冷静になれ。猫はそもそも喋らない。そう、普通は喋らないのだ。
よく思い出してみる。
あの時、なにがおきたのかを......
晴れた日のとある朝、うららにしては珍しく私よりも先に大学に向かったみたい。
今日は一人になれました。
一人でいられるたった少しの時間が、私の救いであり唯一の幸せです。
今日はたったそれだけの事で、久し振りに笑えました。
いつもより足取りが軽く、機嫌がとても良い。
いつもより笑えていたからでしょうか?
小道を歩いているとたくさんの子猫達が寄ってきました。
とても癒される。
目がクリクリしていてとても可愛い。
そっと抱き上げるともふもふしていて気持ちいい。
何分かそうして子猫と戯れていると、真っ白い1匹の子猫が道路に飛び出そうとしてーーー
子猫を助けようとして私は.........
道路に飛び出した子猫を空中で抱きとめた。
抱きとめたはいいが、もう2メートルくらいの所に、目の前に猛スピードで迫る大型トラック。
まるでスローモーションの様に1コマ1コマ、自分の置かれている情景が360度見えてくる。
運転手は寝ている
スピードの落ちる気配は全くない
今から避けようとしても100%間に合わない
ーーーこの子だけでも......
そう胸の中で祈った。
そして、
「......んっ。ここは......」
気がつくと私は辺り一面の花に囲まれていた。
そう。私は、ひかれたと思った。
しかし、私は息をしていて、現にこうして生きている。
生きているよ?
と証明するかのように、私の心臓はばくばくと動いている。
叫んでいるかのように、全身に血液を巡らせている。
「だいじょうぶ?」
「むねの所、いたいの?」
「ねえ、なんで泣いてるの...??いたいから??」
そう答え、私を心配するかのようにすり寄ってきた子猫達。
私の顔を覗き込み、にゃー。にゃー。とないている。
猫が喋っている事への疑念もどこかへ飛んでいって、この状況をどこかで既に受け入れようとしている自分がいる。
「あなたたちも一緒にないてくれるの......?」
そう言い、私は一匹一匹の子猫達を順番に撫でた。
撫で終わり、私は、
「痛くないし、大丈夫だよ。なんだか、嬉しくなって、感極まって、泣いちゃったみたい」
不思議とちゃんと笑えた。
「人間は嬉しくなった時に泣くの...?」
そう首をかしげる子猫達を見て、よりいっそう笑えてきた。