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死んだ幼馴染が異世界で魔王やってた  作者: ないんなんばー
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一人言・もう一度、会いたいよ

もし、もしもだよ?


もし、私が、家族が増えるって言ったら、嬉しい?



あの日、聞きたかったことを聞く機会は、永遠に失われた。



死にたくない!

それが、「私」の初めての思考だった。


柔らかい草の感触に目を開ける。

昔遊んだ裏山のような匂いに、ビックリして起き上がった。


周りには、木、木、木。

まるで森の中、うそ、なんで?

私はさっきまでオリ君と一緒に居たのに。


「あうっ…!」


頭と体の痛みに、思わず呻く。


そう、そうなんだ、思い出しちゃった。

私は、もう、


「死んじゃったんだ、わたし…」


それは後悔、絶望、無力感、怒り、苦しみ、嘆き。

そんなこんなでごちゃごちゃになってしまった感情が、口から叫びとして吐き出される。


「ああああああああああああっっ!!」


力が奔流する。辺りの一切合切を薙ぎ倒し、宙を渦巻いてこんな世界消えてしまえと暴れまわる。


幸せだったのに、もっと幸せになるはずだったのに、幸せにしてあげたかったのに!


「あああああっ、ああ…うっく、うああ…」


それはもう叶わない、遠い夢に、なってしまった。


暫く泣き喚いた後、サラサラとした白い糸が視界に映り、ようやく気持ちが落ち着いた。

触れてみると、自分の髪を触っている感触がする。


「なに、これ?」


え、どうなってるの?

髪が白い、ううん、それだけじゃない、体のあちこちに変な感じがする。

背中から何か生えてるみたいだし、しっぽ?が動いて、動かしているみたいな気がする。


「うひゃあ!」


見下ろして見ると、全裸だった。

思わず変な悲鳴をあげて、()()()()で体を覆い隠し、尻尾を大事な場所に巻いて隠す。


「は、はね?それに尻尾まで…ど、どうしよう!」


こんなんじゃオリ君に変だって思われちゃう。


「あ…」


そのオリ君は、居ないんだ。


また襲ってきた悲しみに動けなくなった後、気持ちをなんとか持ち直して状況を把握しようと辺りを見回す。


「うわあ、これ、私がやったんだよね?」


周りにあった木が、10メートルくらいの広さで薙ぎ倒されている。土も抉れたりしていて、結構めちゃくちゃ。

体は変になっちゃってるし、この惨状を生み出した謎パワーが体にあるのも感じる。


死んだと思ったのに、どうなってるんだろう?


「そもそも、ここって何処なんだろ?」


私達が住んでいた所の近くには、こんな立派な森なんてなかった。

何か不思議な事が起こって、何処かにワープみたいな事をしちゃったんだとは思うけど。


「羽が生えてるんだし、飛んで見たら分かるかな?」


そう思って、羽を広げると、胸が丸見えになったので畳んだ。


「うん、止めとこう。」


流石に全裸で空は飛べないよね、そもそも飛べるかわからないし。


とりあえず、無理をする事はやめておいて、周りの木や植物を調べてみることにする。

私達って結構野生児だったし、見た事ある植物があればそこから方角とか色々と調べられるし。


「と、思ったんだけどなぁ。」


見た事ある植物が無かった。もしかして、外国?

そしたらもっと大変、不法入国だし、この見た目だから、悪魔刈りとかされちゃうかも?


「困ったなあ、こういう時はいつもオリ君に頼ってばっかりだったし。」


隣にいない人を、想う。

死んだと思ったのに、何故か私は生きている。

なら、どんな見た目でも、どれだけ距離が離れていても。


「…やっぱり、もう一度、会いたいよ。」


その思いを口に出していうと、なんとなく、自分の進みたい道が見えてきた気がした。


「生きよう。こんな場所でなんて迷ってられない。どんな事をしても、もう一度会うんだ。」


体を隠す羽を広げる。

羞恥心を感じてる暇なんかない。


出来るかなんて自問しない、ただ、飛ぶんだ。


私は空へと飛び上がる、羽が風を掴んで、不思議な力が私を浮かせる。


私が居たのは大きな山のてっぺん付近だったみたいで、なだらかな斜面の下の方に、大きな町が見える。


行こう、それで、始めるんだ。




これは、死んだ私が、もう一度貴方に会うための物語。


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