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死んだ幼馴染が異世界で魔王やってた  作者: ないんなんばー
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ようこそ、侵入者よ

「邪、魔だオラァ!」


剣を大きく薙ぎ払って組み付いて来た奴以外を吹き飛ばす。

腕にしがみつくスケルトンを振り払い、足を掴んでいる奴の頭蓋骨を殴って砕く。

魔法で焼き払うか?

いや、奥に何が居るか分かったもんじゃない、ここで消耗するのは良くないはずだ。


数十体はいたスケルトン達を倒し終わって、辺りに敵の気配を感じなくなり、俺はその場に座り込んだ。回復魔法よりも効果は何段か落ちるが、自己再生で傷を癒やす。

ヤバイとは聞いてたけど、ここまでとはなあ。



サリーの鍛冶屋から出た時、鉱石を袋一杯にすることしか考えていなかった俺は、すぐに坑道の場所が分からないことに気付いた。

折り返そうとした時、袋に何かが入っているような感触がして、開けて確かめてみると、中には坑道までの地図と、坑道の見取り図が入っていた。

こういう細かい配慮をしてくれたのはユーリカだろう。


俺の馬鹿さ加減はまだまだ治ってなかったのかという自嘲と、ユーリカもマキナの事を諦めるつもりなんて更々無かったのだと嬉しくもあり、心の中で盛大な感謝をして、坑道への道を急いだ。


坑道はいっそわかりやすいくらいに厳重に封鎖されていた。

光魔法と回復魔法を併用した結界に覆われた入り口の周辺には、流石にアンデッドは湧いていないものの、アンデッドが発見され、討伐が上手く行かなかった時以来この状態なのだとすると、中はえらいことになっているんじゃないかと思う。


アンデッドはアンデッドを呼ぶからな、意志のないアンデッドが嫌われる理由だ。

更にはこんな暗くて狭い場所に大量のアンデッドを押し込めている現状、上位のアンデッドが生まれている可能性もある。

意志のあるバンシーやリッチならいい、話し合いで解決できる可能性も残っている。

しかし、それが凶悪な意志なきアンデッドだった場合。


「殺し合いだろうな、言うまでもなく。」


自らの装備を見て、ごちる。

剣はいい、だが、防具に関しては人間界で揃えたものだ。品質もイマイチの取り敢えず的な量産品。

こんなことになるのなら、魔界でちゃんと装備を整えてから来るべきだったと、今更しても仕方のない後悔をしてしまう。


それでもまあ、やるしかない、いや、俺がしたいと思っていることだからな。


多少の時間をかけ、体が癒えたころ、俺は再び坑道を奥へと進んでいった。



最下層まであといくらかの場所に辿り着いた。何時間かかったのかは分からないが、袋に半分ほどの鉱石が溜まっている。

しかし、ミスリルが見つからない。

見取り図の印の通りに他の鉱石が見付かっている以上は、ミスリルだけを誰かが集めていると考えるのが筋だろう。

それは当然、この先に居るであろうヤバ気な雰囲気を醸し出す何者かだろうし、そいつが殺気とか怨念とか、そういった物を他者に向けることに躊躇いのない奴だというのはわかる。


話し合いの案は却下だな。奪い取るしか無さそうだ。


疲労の濃くなってきた体を動かす為に、ここまで節約してきた回復魔法を使う。

携帯食料と水を飲み、少しでも回復に努める。

とっくに俺が侵入していることなんて分かっているだろうに、何のアクションも起こさず待ち構えているというのが厭らしい。

明らかに意思があると言外に告げている。


「…行くか。」


最悪、今日、俺は人を、殺す。





ただの行き止まりであった筈の場所が、随分と大きくなっている。

数えるのも嫌になる程のアンデッドと、鉱石食いと言われるミミズのモンスター。

その奥に、青白い顔をした男が見窄らしいローブを着て立っていた。


「ようこそ、侵入者よ。」


「そりゃお互い様だろ、その上アンデッドまで撒き散らしやがって、こっちは迷惑してんだよ。」


「それはそうとも、その為の準備なのだから。

入り口の結界が外れれば、街はさぞ愉快な事になるだろうね。」


しわがれた老人のような声、そこには嘲りと共に、世の中に恨みでもあんのかというほどの怨念が籠められていた。

こういう輩は向こうの世界にも山程いた。控え目に言ってクソ野郎だ。


「まあいいや、俺はミスリルが欲しいからお前をぶっ潰す、何か異論はあるか?」


「無いとも、弱者は強者に搾取される。生前の私がそうだったようにね。だからこそ、まあ、君の夢物語に付き合ってあげようじゃないか。」


「じゃあ死んでくれ、フレイムガスト。」


炎を纏った暴風が吹き荒れる、こんな場所で火魔法とか自分でも頭湧いてるんじゃないかと思うが、アンデッドに有効なんだから仕方がない。


炎はスケルトンを焼き、その骨を撒き散らしながら更にダメージを与えていく。

しかし、男を守るように立つ数体のスケルトンだけは、何の効果も無いかのように盾を構えていた。


「驚いたよ、素材たちがバラバラじゃないか。君を使えば、さぞや強力なスケルトンが作れるだろうね。」


「…お前、そのスケルトンは元人間か。」


「そうとも、強者になった私にこそ許された禁術、私のようなモノを生み出した世界は、きっと崩壊を望んでいる。

だから!私はこの力で復讐をするのだ!私を蔑んだ者達に!私を愚かだと罵ったあいつらに!」


男は激昂したあと、急に冷めたように俺を見る。


「だから、君にも死んでもらおう。」


そう言った男の目は、暗く淀んでいた。

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