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死んだ幼馴染が異世界で魔王やってた  作者: ないんなんばー
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別録・勇者ガラルドの躍進〜成長編その7〜

また間が開きました…


書く書く詐欺になってしまい申し訳ありません。


本当に一段落したので、また更新させて頂きます。


今回もよろしくお願いします!

日は徐々に傾き始めている。

アリア達は少し大回りして、巨獣を見下ろせる小高い丘に来ていた。


「ここなら射線が通りやすそうだな、どうだ?」


「うん、大丈夫。見下ろせる形になるなら、焦らずに溜められると思う。」


オリジンはそれを確認すると、他のメンバーに話をしにいく。


その背中に、アリアは聞きたかった事を飲み込んだ。


―どうしてガラルドにあんな言い方をしたの?


あの時はアリアも頭に血が登っていて、フォローも何もなく出てきてしまった。

ガラルドが頑張っているのも、勇者として皆の期待に答えようとしているのも、アリアや他の人達を守ってくれているのも分かっている。


今回は敵が強くて、ガラルド一人の力ではどうにも出来なかった。

それでも、ガラルドは必死に模索して、あのモンスターを倒そうとしていた筈だ。


だからこそ、オリジンがガラルドを否定するような事を言ったのが驚きだったのだ。


(二人がいれば、きっとなんだって出来るのに。)


そこまで考えて、頭を軽く振る。

今は敵を倒すことだけを考えなければいけないのだ。





「これで最終打ち合わせだ。

そっちの五人は俺達と一緒に攻撃に回る、必ず進行方向を塞ぐように動くこと。

めちゃくちゃ怖いだろうが、防御魔法がある限り死にはしない、気楽にふっ飛ばされてくれ。

こっちの五人はアリア達を守ってくれ、攻撃の余波、小石の一つもアリアと殿下に通すな。二人の集中力が攻略の鍵だ、責任は重大だが、まあ大丈夫だろう。

アリア、俺達は後退しながら戦う、なるべくひきつけてから魔法を頼む、倒せなくても魔法を打ち続けてくれ。

リシュリー殿下、防御は任せます。兵達を死なせないでやってください。」


アリアは頷いて、他の人達を見回す。

皆、本気の目をしている。当たり前だが、ここには強い意志と、覚悟を決めた戦士しか居ない。


どうしてここにガラルドが居ないのかと思う。

今更だが、ガラルドと離れて戦うことが、こんなに不安になるとは思っても見なかった。


だから、つい口を開いてしまった。


「ねえオリジンさん、聞いてもいい?」


剣を抜いて、魔力を高めているオリジンが振り返る。

この人は、いつも熱い。その熱量で、皆を、誰かを、想いを、熱を呼び覚ます。

それに充てられて、私も、ガラルドも我武者羅に強くなってきた。


「どうした?」


落ち着いた声、きっと、あのモンスターを倒せないなんて微塵も思っていない。


「ガラルドを外したのは、どうして?」


だから、何か考えがあると思った。

アリアはそれが聞きたくて仕方がなかった、でなければ、本当にガラルドが見放されてしまったような気がするから。


オリジンは少しアリアを見つめた後、溜息をついて口を開いた。


「そりゃお前、あいつだけ戦う体制になってなかっただろ、だからだよ。」


「戦う、体制?」


「そうだ、兵士とかってのはさ、後ろに誰も居ない戦いなんて、一度だって無いんだよ。

守りたい国があって、守りたい街があって、守りたい家が、人が居る。

そういう気持ちとか、覚悟とか、心って言ってもいい、そんなもんを全部背負って、前に向かって進むんだ。

だから、折れない、だから戦える。

もちろん、俺やマキナだってそうだ。」


オリジンの言葉は、凄く良く分かる。自分だって、誰かの為に戦ってきたのだ。


「勇者ってのはさ、そういう奴らの先頭に立たなきゃいけないんだろう、誰かの背中を見るんじゃなくて、誰もが背中を見るような、そういう風にならなきゃいけない。


だが、今のアイツは駄目だ、後ろを気にしてばっかで、守るって事の意味が分かってない。

自分の後ろに居る奴が、戦うために居るんだって事が分かってない。

それに気付かせてやらなきゃ、アイツは本物になれない。

だから、今回はお留守番だ。だいぶ頭も茹だってたみたいだしな。」


「そう、なんだ。」


オリジンの言葉が、耳に痛い。

勇者のパーティーだって認められたかった、そんな気持ちが恥ずかしい。

きっと私達のちっぽけな背中なんて、目にも止まらなかっただろう。

皆が見ているのは、頭の上に輝く、勇者の冠だけ。


「私も反省しなきゃ、戦うことについてなんて、考えたこともなかったわ。」


「それで良いんだよ、ホントはな。誰も彼も、戦わなくちゃいけないから戦ってんだ、それが無意味で有りたくない、これはそういうお話しで、俺の生き様みたいなもんだ。」


そう言ってオリジンは苦笑する。

それが凄く大人に見えて、アリアはガラルドに願った。


沢山悩んで、怒って、悲しんで、それでも戦ってきた私の幼馴染の勇者。


だから、今回は私が頑張るのを見ていて。


きっと本当の意味で、私は貴方の側に立つから。




一陣の風が吹いて、思考を打ち消す。辺りには緊迫した空気が漂う。

オリジンは全員を見渡して、準備が整った事を確認すると、軽く手を上げた。


「最初から全力だ、俺達で奴を倒すぞ。全員、進め!!」


マキナが、兵士達が、そしてオリジンが駆け出していく。


その身を護るのはリシュリーの防御魔法、淡く光るヴェールが全員を包み、溶けて消える。


決戦は、間もなく始まる。


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