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死んだ幼馴染が異世界で魔王やってた  作者: ないんなんばー
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侵攻戦について話そうか

今回もよろしくお願いします

「こりゃあ、とんでもない事になってんな。」


約一週間の旅を終え、百花城に帰ってきた俺を待っていたのは、組まれた足場と垂れ下がる養生幕。


一応隅っこの方に、歓迎、咲き誇る朱カミラ、お帰りオリジン!という、何となくやる気の感じられない垂れ幕もあった。


「一体どういう経緯があって工事なんて始まったんだ?」


現場監督を任されているグロリア(工事は第三隊がしている)に話を聞くと、侵攻戦で城が空くうちにリフォームをするのだ、とユーリカが張り切っているそうだ。


ちなみにリフォームされているのは、使われて居なかった外側の塔のの内の一つ。

今後絶対に必要な設備になるという事で、先に作り始めているとか。


「おーい!オリくーん!お帰りー!」


と、上の方からの声、見上げると、三階ほどの高さから、ゆっくりと降下してくるユーリカ。

黄色いヘルメットにオレンジのベスト、まさに現場スタイルである。


「おう、久しぶりだな。元気だったようで何よりだ。

カミラは色々手続きしてから来るってよ。」


「了解了解、それよりホラ、どうかなこの塔、後で内装とかを指示してくれると嬉しいんだけど。」


「いきなりだな、俺が決めるのか?」


「そりゃそうだよ、オリ君の塔だもん。」


最近は穏やかすぎて気が抜けていたのか、ユーリカの言葉に一瞬思考が止まる。

俺の塔?思い返してもそんな話は全く出ていなかったように思うが、工事の日程からしても随分と前から作られていたようで、覚え違いかと聞き返す。


「そんな話があったか?塔なんか貰っても、使う気が全くしないんだが。」


「もう、男ならちゃんと一国一城の主にならなきゃ。これからカミラにエリーゼ、アナちゃんも貰うんでしょ?しっかりしてよね。」


ユーリカの言葉から察するに、ようはこれ、


「つまり…後宮とか、そういうアレか、この塔。うわマジかよ、皆ここに住むのか?」


「あ、ちゃんと私の部屋もあるから安心してね!」


「いや、心配してるのはそこじゃない。」


というか、え、今のところ誰が入る予定なんだ?


「もしかして、部屋が足りないかもしれないの?結構沢山作ってるんだけど…」


「お前は俺を何だと思ってるんだ。」


いや、決して不満がある訳じゃなく。

何というかこう、ガッチリと結婚やら新居やらを、ちゃんとした形で見せ付けられると、何となく尻込みしてしまうというか、何というか。


しかも、今は侵攻戦の直前だ。これは確実に俺の勝利が前提になっているような気がする。

ここまでされて勝てませんでした、もっと言えば、俺が死んでしまいました、なんてことになったら、と思うと、背中が凍るようだ。


そんな空気を察してか、ユーリカは俺の手を握る。


「オリ君、もう悩むのはやめよう。勝っても負けても、ここに帰ってきて。何があっても、オリ君はオリ君のままでいて。


アナちゃんから全部聞いたんだ、神様とか、試練とか、私にはよく分かんないけど、きっと大丈夫だよ。だってほら、私達は一人じゃないんだから。」


そう、か。もう全部知っているのか。

なら、そうだな。生きないと。

くだらないなんて言いながら、一番気にしていたのは俺なのかもしれないな。


「まあ、あれだ。色々心配も掛けるだろうが、最後まで信じて付いてきてくれ、アグニには勝つし、世界だって救ってやる。」


手を強く握り返す。

そうさ、やるだけの事はやったんだ、勝って楽しもう、この世界を。





およそ2ヶ月ぶりに入る百花城は、当たり前だが何も変わっていない。

だが、少しは変わった事もあるようだ。


勇者の手紙が来た時と同じ会議室、俺の席はユーリカの隣ではなくなっていた。

丸い机の上、俺はユーリカの正面、グロリアとクークーの間の席に座っていた。


百花城近衛として、そして、一人の魔族として認められたような、そういう感動が押し寄せる。


「さあ、侵攻戦について話そうか。と言っても、今回は皆でオリ君のサポートをするんだけどね。」


ユーリカの一言から会議は始まる。

今回の侵攻戦の作戦は一つだけ、少数精鋭にして総戦力、この場にいる六人で障害を排除し、アグニの元に一直線に向かう。


道中の戦闘に俺は参加せず、アグニ戦に全力を注げるようにする。これだけだ。


「玉座の間には我が征こう、オリジン殿は一皮も二皮も向けたようである。ならば我はアグニ以外を抑えるのみ。」


ドラグが俺と目を合わせて言う。

ドラグの教えは俺の中で生きている。


「後続は私が死守しますかな。扉からは誰も通しませんぞ。」


「わたくしもご一緒致します。オリジン様の邪魔は決してさせません。」


クークーとマキナは俺に一礼する。

二人はいつも、俺に期待を寄せてくれる。それが嬉しい。


「私は外で暴れるっすよ!イフリートの野郎と今回こそ決着を付けてやるっす!」


グロリアには助けられっぱなしだ。

背中を託せる戦友は、やっぱりお前だよ。


「じゃあ私は城内の制圧かな、皆の負担を減らせるように頑張るね!」


ユーリカを守りたい、渡したくない。そんな想いから始まったんだ。

気付けばそれはきっかけでしか無かったが、その想いだけは決して消えない。


「そして俺が、アグニを倒す。元々は売られた喧嘩だ、派手に勝って見せ付けてやる、俺と言う存在を。」


アグニにも、神にも。


「うん、じゃあこれで会議は終了!出発は一週間後、最短で真っ直ぐ、全力で行こう!」


俺達は頷き合い、その日の為に気持ちを高めるのだった。

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