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死んだ幼馴染が異世界で魔王やってた  作者: ないんなんばー
19/79

わたくしにお任せ下さい

今回もよろしくお願いします。

順調だった。

全てが順調だった。


訓練と、実戦と、因子の取り込みと、それから、生活においても。


順調だった、はずだった…


それが…



「はい、口を開けて下さいませ。」


どうしてこうなった。


スプーンを持ち、口元に近付けながら、マキナはそれはもういい笑顔を見せる。

元々の奉仕欲求をとことん満たせる機会を得て、ご機嫌なのだろう。魔族って体強そうだもんな。


さて、状況の説明だが。

突然、今日の朝起きられなかった、全身がダルくて重くて動かない。

あと、鼻血がヤバかった。今は止まってるけど。


すわ魔界特有の病気かと焦ったりもしたのだが、疲れが出ただけだと思われる。と言うのが医者の判断、人間の事は診たことが無いから恐らくだが、と念は押されたが。


まあとにかくは休めと言われ、部屋に残されたのだが、入れ替わりで入ってきたマキナがもうね。


寝汗の凄かった俺の服を脱がせ体を拭き、新しい服を着させてトイレの世話まで。

そして現在、飯の世話にもなっている。


「ごちそうさま。迷惑かけてスマンな。」


「いえいえ、この位は当然の事ですので。」


ニッコニコして答えるマキナ。

マキナのこの位がどのくらいかは知らないが、既に数時間は付きっきりで介護されてる気がするんだが。


飯を食って腹が満たされたからか、多少は体も楽になった気がしてきた。

まあ動けはしないんだが、それでも辛さが減ったのは助かる。


「しかし、時期が悪いな、俺も。

勇者御一行が来るまで後一週間しか無いってのに。」


これから追い込みって時に動けなくなるのは、精神的にキツイ。

この一日でどれだけの事が出来ただろうか、なんて考えてしまう。

何というワーカーホリック。


「逆にこの時期で良かったと考えませんか?

これ以上後のタイミングでは、流石に戦闘に支障を来していたかもしれません。」


「それはそうなんだが、なんかなぁ、情けなくてな。」


「休日をきちんと取らなかったバチがあたったのかもしれませんよ?

何にせよ、本日のお世話は全てわたくしにお任せ下さい。」


そんな風に、返される始末である。

これは大人しく寝てるしか無いな、と、目を閉じたところで、優しく頭を撫でられる。


なんつーか、贅沢だなあ。









夢、夢か。


これは夢だとはっきりわかる、そんな夢。


目の前に誰かが立っていて、何かを話しかけられる。


俺にその言葉は聞こえなくて、ただボーッと立っている。


やがて首を横に振りながら、その輪郭すらない誰かは消える。


まだ早い。


俺はなぜか、そう思った。










「ふあ?」


額に冷たい物が乗った感触で、目を覚ました。


横目で見ると、マキナはベッドに突っ伏していて、口元に人差し指を当てたユーリカが、マキナに毛布を掛けていた。


「早く良くなってね、オリ君。」


多分口の中だけで返事をしたと思う。

音を立てないようにユーリカは去り、俺は働かない頭で、マキナの寝顔って初めて見たな。

みたいな事を考えてた様な気がする。


熱で目がやられているのか、やけにクッキリとした視界に目を細めつつ、またうつらうつらと、波に呑まれるように、意識が落ちていった。





翌朝、目を覚ますとマキナは居なかった。

体調は完全に良くなっていて、むしろ絶好調を超えている様な気さえする。


布団を跳ね除け、足を一度上げてから、反動で跳び起きる。

やはり体が軽い。


これが超回復と言うものか、と、うろ覚え以下の知識で何となく納得し、軽くストレッチ等を行ってみる。


本当に不調はない。霞の様に消えてしまったようだ。


飛ぶ、跳ねる。訓練のように体を動かす。

ヤバイ、楽しい。

今まで以上に動く体。

クリアな視界。

思考に行動が追い付き、更に加速出来ると確信する。


そして、そんな俺だからこそ気付いてしまった。



枕 元 に あ る 大 量 の 抜 け 毛 。




「へ、ヘアァァァァっっ!!」


ガッと頭に手を当てる、ある。あるぞ!


ちょっと待て鏡、鏡ぃ!


「って、なんじゃこりゃあああ!!」


左半分が真っ白になった髪の毛、その中に青、黄色、紫の髪が一筋ずつ流れている。

右目の色は金、左目は赤と言う恐るべき厨二仕様。

そして何より。


「は、生えてる…。」


右の側頭部にある、2つ割れの角。

触ってみれば、ちゃんとざらざらプラスしっとりとした感触がある。

大した大きさではないが、そいつが天に向かいそそり立っていやがる。


マジかよ、遂に魔族の体になっちゃった感じか!?


「オリ君!どうしたの!?」


「オリジン様!大丈夫ですか!?」


雪崩込むユーリカとマキナ、振り返った俺と目があい、お互いに暫し沈黙する。


しばらくワナワナと震えていた俺達だが、ユーリカが俺を指差し、フロア中に聞こえる様な声で叫んだ。


「オリ君が魔族になっちゃった!!」



人物などなど


○マキナ…奉仕欲求なるものがあるらしい。メイド服は伊達では無かった。


○ユーリカ…さり気無い気遣いにヒロインちからの高さを感じる。


○オリジン…厨二病。


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