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死んだ幼馴染が異世界で魔王やってた  作者: ないんなんばー
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モンスターでも倒しに行かぬか

長くなりました。


今回もよろしくお願いします。

針の筵、という言葉があるが、それの優しいバージョンってどんな言葉があるんだろうか。


今の俺の状況は生温いジェルに全身浸かって、その上で周りを固められた様な、居心地は悪くないんだけど、どうにも落ち着かないみたいな、そんな感じ。


特にユーリカ以外の魔王二人。お前らだよ。ニヤニヤしながら見てんじゃねぇ。


まあその原因となってる我等が魔王様は、俺の左手に自分の右手を絡ませてニコニコしておられるので、振り解く気にとか全然なんないんだけどな。


「じゃあ、対勇者用の防衛人員なんだけど、まずはオリ君から言いたい事があるらしいよ。

それじゃあ宜しくね、オリ君。」


ユーリカに促され、俺は皆を一度見回す。

何を言いたいのか、何を言おうとしているのかは、おおよそ理解してくれているのだろう。

優しげだが、少し居住まいを正したように、皆が注目してくれる。


ありがたい事だ。待っていてくれる人が居ることは、こんなにも心強い。


「迷惑をかけた、すまない。だが、何となく俺に出来ること、俺のしたいことが分かってきた気がする。

これも、ユーリカを始めとした皆のお陰だと思ってる。

本当にありがとう。

それで、だ。勇者のことなんだけど、俺に戦わせて欲しい。

相手が何かを賭けて、覚悟を決めてやってくるなら、それを俺の試金石にしたい。

俺の覚悟を見て欲しい。相手にも、皆にも。

だから、頼む。俺にやらせてくれ。」


座ったままだが、深く頭を下げる。

さっきまでピーピー喚いてたヒヨッコが、ラリっておかしな事を言っていると思われるかもしれない。

けど、俺には必要な事だ。

勇者と覚悟を決めて戦う、いや、甘い言葉では誤魔化さない。

これは殺し合い。互いに成すための、成るための手段。


そんな気持ちを察してくれたのか、


「我は構わぬ。そも、元よりそのつもりである。」


ドラグが言ってくれた。


「お覚悟、確かに頂戴致しましたな。大変にケッコーな事だと思います。私も異論なんぞございませんな。」


「わたくしも異論ございません。オリジン様の成長、嬉しく思います。」


「自分は元々関わるつもりなかったんで大丈夫っす。頑張るっすよオリジン殿!」


クークー、マキナ、グロリアも続いてくれた。

何だよお前ら、良いやつすぎかよ。


「やはり人間と言うものは侮れぬのじゃ、この短期間で、よもや其処まで辿り着くとはのう。

これは妾達も扱いてやらんといかんな、グラン爺よ。」


「そうだね、立派なものだ。我輩たちにも頼ってよ?オリジン君。」


カミラ、グラン爺もありがとう。

こうやって、沢山の物が載っかった肩に、ユーリカも頭を乗せてくる。


「はぁ、なんかどんどん格好良くなってくね、オリ君は。

ちょっぴり寂しくて、たっくさん嬉しいよ。」


「そりゃ、アホみたいに引っ張り上げてくれるヤツが山程居るからな。」


さて、じゃあ、準備を始めよう。

新しい俺の、オリジンの幕開けだ。











あれから二週間。

本格的に第三隊の訓練に参加し、一応俺にも、ユーリカの近衛と言う役職が与えられた。

脱ニートである。


やってることはもっぱら訓練と、この世界や魔法についての勉強なのだが、やる気が違うとこうも違うのか、と思えるような成長っぷりで、どんどんのめり込んでいく自分がいた。


「いいっすよ!だいぶ鋭くなってきてるっす!

足元!そうっす!おろそかにしちゃ駄目っす!

振られない!食いしばる!回避を選ぶのが遅い!反撃が緩い!っす!」


足元への攻撃からの左右の連携、斬り上げたと思ったら、裏拳が来る。避けて胴を狙うも、甘かったらしく、衝撃と共に、地面に叩き伏せられていた。


「がっはっ!はぁっ、はぁ…ふぅ。」


口の中の土を吐き出しながら、仰向けになり荒い息を吐く。


あれ以来、グロリアも随分と厳しく稽古を付けてくれるようになった。

初めは、兵士の皆ってこんな厳しい訓練してんの!?と思ったが、遠巻きに、うわぁ、って顔してる第三の面々を見て、あ、これ特別プログラムだわ、と理解した。


まあ何しろ実戦経験が無い、格闘技の経験も無い、ナイナイ尽くしの俺にはこれでもまだ足りないくらいなんだろうと、半ば納得しているので、不満はない。


「どうするっすか?一旦休憩にするっす?」


「あー、うん。腕震えてどうにもなんないわ。少し休んでくる。」


あちこち傷だらけの体を引きずり、壁に背を預けて他人の訓練を見る。

これも訓練の一つだとドラグに言われ、ボンヤリと全景を見るように努める。


ああでもない、こうでもない、なんて考えている内に、ふっと顔に影が指した。


「随分と男前になっているようじゃな。」


「カミラ、来てたのか。」


自己治癒能力と、回復魔法を併用し、ちまちまと傷を治していると、いつの間にかカミラが側に立っていた。


「うむ、スキルも使いこなせているようでなによりじゃ。」


「必要なもんだけ、だけどな。特に回復系と水魔法には世話になりっぱなしだ。」


言いながら空中に水球を生み出し、頭から被る。あー、冷えて気持ちいー。


「こりゃ、妾が濡れるではないか。全く、新たなる一張羅が台無しになるところだったぞ。」


「ああ、悪い。今日も似合ってるぞ、その服。」


そう、なんとカミラは変態を脱却したのである。

具体的には白スクからフリフリワンピースドレスにメタモルフォーゼしたのだ。

尤も、戦闘服はアレのままだが。


「そうであろうそうであろう、やはり服にも拘りたい妾は、ユーリカからゴスロリなるものの情報を仕入れてな、何度も試案しながら妾の国の一番の裁縫師に作らせたのだ。

勿論、素材はアルケニー糸を始めとした高給魔法素材、硬質素材を使用し…」


「何度目だその話。」


相変わらずのうんちくロリである。だが、その知識で戦闘にスキルを組み込むやり方で、一番俺が分かりやすい方法を示してくれたのはカミラで、それから俺は更に自分に合った使い方を見いだせた、そのアドバイザーもカミラだったな。


お礼として、いつも白スクだったコイツに服を買ってやった。

そのワンピースを改造して作ったのがこのゴスロリドレスなのだから、まあ聞いていて悪い気はしないのだ。


「そういえば、何か用事だったか?」


思い出したように聞くと、おお、とカミラも思い出したように答えた。


「そろそろモンスターでも倒しに行かぬかと思うての。」





人物などなど


○カミラ…オリジンに買って貰ったワンピースを改造して服を作り、変態脱却。

買って貰った時はのじゃロリを忘れツンデレ化していた模様。


○オリジン…天然タラシから確定タラシに。育つべきなのはそこではない。


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