城内観光と参りましょう
長くなったので短めに二本です。
こちらは一ページ目です。
今回もよろしくお願いします。
さて、地獄の訓練(まだ基礎訓練でしかない)が始まり、一週間が経過した。
この頃には体も大分慣れてきて、ぶっ倒れる事はなくなっていたのだが、本日はお休み。
どうやら合同の軍事訓練?みたいなのがあるらしく、素人は流石にちょっと…てな具合で緩やかにお断りされた次第。
せっかくだから城とか城下とか観光したらどうっすか、と教官殿からの有り難いお言葉で、迷子防止の為に場内の散策をする事にしたのだ。
…よし、今日は太陽が黄色くねえな。
現在の因子の数は、たしか16。俺の体も随分と魔族化したのでは、と思うのだが、どうなんだろう。
…因子の数が日数より多いってのはどうなんですかねえ。
尚、ここ一週間で随分と知り合い、顔馴染みも増えたのだが、殆ど最低限の人員を残し訓練について行ってるので、城の中はとっても静かである。この世界は平和だ。
まあぶっちゃけ迷子になったら死ぬ気がするが。
「しっかし、広いよな、マキナとクークーは全部覚えてるのか?」
「はい。ですがご安心を、わたくしも全てを覚えたのは勤め始めて十年程たった頃ですので。」
「私もその程度でしたかねぇ。ともあれ、オリジン様に於きましては、こうして百花城の事を知ろうとして下さる事は、大変にケッコーな事ですな。」
後半のセリフ、鶏頭の執事さんがクークーである。
強いオーラを持ってんな、と思っていたのだが、聞いてみると百花城幹部のうちの一人、内政官プラス皆の目覚まし件、使用人統括。
ユーリカ付きであるマキナは別だが、城内の使用人のトップであらせられるのだ。
「取り敢えず、俺は自分の部屋以外は食堂2つと風呂、外庭の訓練場しか知らないんだ。なんか良さげな設備とかあれば、ガンガン案内してくれて良いからな。」
何しろここに来てから、訓練、飯、風呂、(なんやかんやして)寝る以外に殆ど何も出来ていないのだ。
俺の言葉に、二人は目で会話する。
すっげー、ホントにそんなん出来るんだ。
「ふむ、食堂巡りは基本と致しましても、やはり中庭は見ていただきたいですな。
一年を問わず、アルラウネ達の働きで、常に最高の美を提供できますので。」
「最上階の展望室は如何でしょうか?ユーリカ様の治めるご城下を一望する事が出来ますので、今後の観光等にも役立つかと。」
などなど、幾つもの意見が飛び出す。おっしゃ全部もってこい、俺に異世界を堪能させろー。
「では、城内観光と参りましょうか。」
「ここが一番人気の食堂、白百合食堂になります。
殆どの料理がユーリカ様監修で、主に日本食を扱っています。」
まず案内されたのは、純和風、建築物とかあまり詳しくは無いが、江戸とか明治とか位の雰囲気を持つ建物。てか、城の中に建物って。
「マジかよ、ご飯とか味噌汁とか納豆とかあんの?」
「ええ、御座いますとも。頑張って作りましたからな。
折角ですので、朝食は此方で頂きますか。」
暖簾をくぐり中に入る、おお、ノスタルジック、時代劇かよ。
木の椅子と机、小上りには畳風の敷物。メニューではなく、お品書き。
ここはほぼサキュバス達でやっているらしく、着物を着た金髪、銀髪の洋風女性ってのが、またなんか良い味出してる。
因みに朝食は焼き鮭定食を食った。
やっぱ和食だよ、和食。
俺普段和食とか全然食って無かったけど。
次はクークー提案の中庭、ユーリカもここが気に入ってるらしく、百花城と名付ける切っ掛けになった場所だとか。
ガラス張りの扉を開き中に入る。
瞬間、濃厚な花の香りが漂う。
城の中っていつも良い匂いがすると思ってたけど、ここがその正体だったのか、と、納得。
「如何ですかな?アルラウネ達の造園魔法の賜物であります。」
「すっげーわ、なんか、言葉足らずで申し訳ないぐらいだ。」
中庭ほぼ一面に広がる花と樹木、アルラウネとドライアドが花や枝を摘んでいる。
恐らく城内に生ける物なんだろう。
四阿やガーデンテラスを見た後、反対側の扉へ向かう。
向かう先は城壁側の前城、物見用と兼用で展望室があるらしい。
因みにこの世界はやっぱり平和で、知り合いの兵士に聞いたんだが、物見イコール休憩らしい。
せめて給料分は働こうね。まあ俺が言うなって話だけどさ。(現在ニート)
「少し長いですが、大丈夫ですか?」
扉をくぐった先にある階建を指しながらマキナが言う。
「おう、心配すんな、体力めっちゃ増えてるからな!」
人物、建築物などなど
○クークー…鶏頭の執事。百花城内政官。戦闘も熟すナイスガイ。
因みに目覚ましの声は「クックアドゥードゥー」ではなく「コケコッコー」
○白百合食堂…ユーリカ監修による異世界でどこまで日本をやれるのかの挑戦的施設。
現在食堂ランキング一位を独走中。
オススメは生姜焼き&唐揚げ定食。
○アルラウネの楽園…中庭の正式名称。季節、場所を問わず、様々な花や果実の成る美しい場所。
よく兵士がつまみ食いに来ている。
後にオリジンも常習犯に。




