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死んだ幼馴染が異世界で魔王やってた  作者: ないんなんばー
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プロローグ

まともな公開作品は初投稿になります。

よろしくお願いします。

乱れ咲く赤い華、景色がゆっくりになるなんてアレは全くの嘘だ。

地面に跳ねる身体、ソレはまるで人間の形じゃないのに、顔だけはキレイなままで。


「ゆ、りか…?友梨佳ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


微笑んだ表情、俺はその笑顔が何より好きだった―





「ああああ!…あ?」


叫びながら目を覚ます。

急に大声を出したからか、喉が痛い。涙に濡れた目は今日も腫れているようで、朝日に照らされた部屋がぼやけて見える。


「……畜生が。」


誰に向けたでもない悪態は、何処にも届かずに消えた。




また、朝が来た。

起きる度に感じる絶望と後悔と虚無感を置いておいて、体だけはいつものルーチンを繰り返す。

顔を洗い、トーストを水で流し込み、着替えて仕事に向かう。続ける意味が有るのかさえ考えず、ただ徒に浪費していく日々。


俺の人生はあの日に終わった、だからいつ死んでもいいし、むしろ早くアイツの所に行きたかった。

何年も前の事なのに女々しい、そう言った奴はこの苦しみを知らないのだろうか。

復讐なんて考えるな、そう言った奴はこの怒りをを鎮める方法を知っているのだろうか。

彼女の為にも生きて、そう言うのなら、俺に生きる意味を教えてくれよ。


今日も万事無干渉な1日が終る。

家に帰って繰り返すだけの、飯、風呂、就寝。寝る前に必ず思い出す笑顔。

「もし、私が」と言った彼女の最後の言葉、あの言葉が、「死んでしまったら」と続くなら、俺はなんと返せただろうか。

一生愛し続けるよ。こんな体たらくで?

悲しくなる事言うなよ。悲しみなんて言葉じゃ現せない。


「その時は俺も一緒だ。」


ポツリと漏れた声が、本心なのかもしれない。死にたくないんじゃない、生きたくないんだ。


目を閉じた瞬間、何故か、帰り道で流れていた明日の占いの結果が頭に浮かんだ。


―待ち人来たれり。




また、朝が来た。

相変わらず喉は痛いし、目は重い。健康では無いことを示すサインは幾らでも出ているのに、それでも繰り返す事を辞めないのは、とっくに壊れているからなのか、訪れるはずのそのおわりを待っているからなのか。


味のしないトーストを流し込んだ時、


(…う少し…)


声が聴こえた気がした。

ついに幻聴が聴こえ始めたか、と、ついつい苦笑が漏れる。

これはいよいよ終わりも近いな、なんせ、アイツの声によく似ていたような気がしたから。


(成功したかも!開く、開くよ!)


ほら、また聴こえた。涼しげで、滑舌が良くて、元気で、聴いてる方が励まされる様な、そんな、声。


「友梨佳、会いてえよ…」


思わず呟き、涙が溢れた。友梨佳、友梨佳友梨佳友梨佳!


「もう生きてるのが辛いんだよ!お前を守れなかった後悔で潰されそうなんだ!頼む、頼むよ、俺をそっちに連れて行ってくれよぉ…、友梨佳ぁ…。」


膝から崩れるように、蹲る。もう、限界だ。

今日だ、今日、死のう。


意味のない言葉を喚きながら、俺はそんな風に意志を固めていた。


だから、気付かなかった。


声はまだ、聴こえ続けていた事を。





(なんか、すっごいパワー来てる⁉今しかないよ!世界の壁なんかぶち抜け!3、2、1、いっけええええええ!)





涙が収まり、ようやく顔を上げた時、ソレは突然現れた。

闇、漆黒、無、そんな感じの単語が当てはまりそうな丸い穴。

あまりの事に身動き一つ取れないうちに、その穴から、白い、綺麗な手が生えてきた。


「なんだよ、これ。」


一呼吸置いて動けるようになった俺は、何故か、その手に惹かれた。本当なら、後退りするものなのかもしれない。

だが俺は、どうしてもその手に触れたかった。


手を伸ばす、指先同士が触れる。驚いたように、お互いに一度手を遠ざけ、今度は求め合うように、指を絡ませる。

不思議と恐怖は無かった。むしろ、高揚する自分がいた。

相手の手に力が籠もる、それは、まるでこちらに来ようとしているようで、俺は迷わず、その手を引いた。


真っ白でスラリとした腕、ストールのような物を羽織った肩、その次は足、赤いパンプスがこんなに似合う足を俺は見たことが無い。

その足が俺の部屋の床を踏みしめ、長いスカートを履いた脚が更に体を穴から引き出す。

真っ赤なドレスの様なワンピース、黒いストール、白、もしくは薄青に輝く長い髪が現れ、最後に出てきた顔を見た瞬間、俺はその女性を抱きしめていた。






「うわわっ、凄い熱烈歓迎だねオリ君。」


「友梨佳!友梨佳ぁ!」


「もー、そんなに私に会いたかったの?ってか、よく私だって判ったよね、髪もこんなだし、顔も前より美人になったのに。」


「判らないわけ、ないだろうが。お前、マジで、あれか、もう、なんだよ、お前、マジで。」


「…泣いてる?よね、当然だよね、ごめんね、私、居なくなっちゃって。」


そう言って彼女は、俺から離れ、俺が大好きなあの笑顔を浮かべた。


「えへへ、迎えに来ちゃった!」


そう言った彼女を、俺はもう一度抱き寄せた。


人物などなど

○庵(オリ君)…主人公。恋人だった幼馴染を亡くして、何年も苦しんでいる。

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