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ものすごくご都合主義な話になっています。



さて、我が家のサロンにておじい様+私VS父+母娘の構図が出来上がっております。

「さぁて、説明してもらおうか、エドヴィン君」

おじい様の普段よりも何段階も低い声が響きます。

「せ、説明とは?」

対する父はビクビク震えております。

ええ、私の前では威張っておりますがおじい様の前では小動物です。

「君の隣にいる二人についてだよ」

ニコニコ笑顔のおじい様に父はビクビクしている。

「私は……」

父の愛人が声を出すも、おじい様は華麗に無視(スルー)

ただ、父をじーっと見つめている。

父からの説明以外は聞かんという姿勢だ。

それに気づくことなく父の愛人はいかに自分が愛されているかを話しているが誰もその話に耳を傾けていない。

というか、よく本妻の父親の前で堂々と自分の方が~って言えるわね。

身分的にも我が家の方が遥か上なのに……


愛人のマシンガントークをBGMに父はしどろもどろになりながらおじい様に説明しているが、一言発するたびにおじい様から笑みが消えていく。

隣りに座っている私はその笑みが消える度に部屋の温度が下がるのを直に実感している。

目の前に座っている娘さんはのんびりとお茶を飲んでいる。


すごいな~

身内である私ですらおじい様の怒気が怖くて一滴の水すら飲めないのに。


全てを話し終えた父の顔色は真っ白だ。

おじい様の顔から笑顔が完全に消えていた。


「ほうほう、ではキャリーへの誓いは嘘だったという事だな。つまりは国王陛下にも虚偽の誓いを立てたと」

キャリーというのは私の母の名前でキャロラインという。

おじい様の末の娘であり、兄弟の中で唯一の女の子という事で皆から愛されていたそうです。

4人兄妹で全員年子。

一時期は筆頭王太子妃候補だったそうだ。

王太子殿下(現国王陛下)との仲も良好で、学院卒業後、即婚姻という関係だったそうだ。

周囲から見ても横槍を入れることが出来ないほどのラブラブだったとか。


なのに、なぜ父と……と思うだろう。


理由は簡単、侯爵家を継ぐはずだった母の兄たちが立て続けに流行病で亡くなったからだ。

しかも全員が未婚(学生)だった。

唯一生き残った母が侯爵家を継ぐために婿養子が必要になったのだ。

当時、王家に男児は王太子殿下一人。

王太子殿下が婿入りすることは不可能。

よって、王太子殿下の学友であり、親友であり伯爵家の五男だった父が侯爵家に婿入りすることになったのだった。


殿下と母はそれはそれはラブロマンス小説張りに別れを惜しんでいたとか。

周囲が何とかならないかと奔走したが良い案がなかったそうだ。

そして互いに新たな伴侶を愛そうと誓い、お互いの想いを禁断の魔術を使って消したという。

実際、殿下も母も新たに決まった伴侶を愛していた。


母の死をきっかけに陛下は母への想いを思い出したが、今は王妃様とお子様へ限りない愛情を注いでいます。

母への想いは美しい思い出とされているそうです。


今なら、母に二人以上の子を産ませて一人を侯爵家へという意見も出るだろうが当時はそういった発想がなかったそうだ。

ここ数代、王家には一人の子しか生まれなかったからだ。

しかし、現国王陛下には3人のお子様がいらっしゃる。


父の婿入りの際、国の調査機関が入り父に女の影がないことが報告されていたが、どうやら裏で金を握らせていたようだ。

侯爵家というブランド(金蔓)は父にとっても愛人にとっても魅力的だったのだろう。

親や友人にも秘密だった愛人(当時は恋人)と共謀して表向きは女性関係もなくキレイだと見せて、裏では隠れて母と結婚後も付き合っていたというのだからどうしようもない。


当時の国王と王太子(+各省の大臣達)の御前で母以外とは~と誓っていたというのに。

殿下の「こいつになら大切な女性ひとを任せられる」という信頼を見事裏切っていたのだ。


後に、そのことで国王陛下から謝罪された。

「俺に人を見る目がなかった。すまない」と。

ご自分をあまりにも責めるので(隣国より嫁いでこられた)王妃様や王女殿下達と一緒になって諌めたのはいい思い出です。


虚偽の報告を行ったという事で父の事を調査をした者達全員が何らかの処分を今更ながらに受ける羽目になるのはもう少し先の話。

国王陛下は大臣達が決めた処分は生ぬるいと思っていたらしいが、今更十数年前のことを蒸し返すのは外聞が悪すぎるという事で、裏で何やら行ったそうだ。

つまり、表向きはその後見つかった見過ごせない不正を理由に降格また解雇、その裏ではえげつない罰が与えられたとか。

裏の罰の内容は誰も教えてくれないので私にはわかりませんが……元調査員の家族がひっそりと王都から出ていったのはそれが原因ではないかと思っております。



「……で?」

再び笑みを浮かべるおじい様にお父様は気絶寸前。

「婿養子であるエドヴィン君にはこの家のことを勝手に決める権限はないんだけどな~」

「え?パパ、婿養子なの!?パパが侯爵家の人間じゃないの?」

驚いている娘さんに父は汗をだらだらかいて視線を彷徨わせている。


ああ、きっと侯爵という地位しか見てなかったんだな。

実際爵位を持っていたのは母なのに。

父はただの伴侶。

権限など一ミリもない。

今あるのは次期侯爵の父親という肩書だけ。


現在の父の立ち位置を言うと、私が成人する来年までは『侯爵家の領地経営の代理人(制限有)』なんだよね。

爵位自体はおじい様が今持っている。


父は領地の運営を私の代わりに行う代理人。

我が家の個人的資産を使用する場合はおじい様の許可が必要。

領地の資産は多少なりとも自由に使えるが、ちゃんとした使用用途を財務部(各領地に国から派遣されている官吏)に報告しないと横領と見なされる。

(官吏は2年単位で変わるので癒着はまずあり得ない)

などなど細かい決まり事を母と婚姻を結ぶときにちゃーんと契約書に認めてある。

おじい様から見せてもらったから確かだ。

サインの他に血判も押しているのになぜ忘れるかな。


「で、さらに我が家の資産を勝手に使っていることはこれ、この通り。ちゃーんと証拠もある」

おじい様はテーブルの上に分厚い……貴族名鑑並に分厚い紙の束をどんと置いた。


え?ちょっと待って。

母娘がこの家に来てからまだ3カ月よね?

たった3カ月でこの量なの!?


おじい様の許可を貰って中身を見ると……

まあ、飽きれたことに毎日のように商人を呼び付け、高価な宝石やドレスを買い付けてはパーティーを開いたり、私宛に来ていた招待状をもって参加していたりした。

それらのパーティーでいろいろ面倒事を起こしてくれていたようだ。


また、私のモノや母のモノを勝手に換金しようとしていたらしい。


馬鹿じゃないだろうか。

王家と公爵、侯爵家が所有する装飾品にすべて家紋と個人を認定する紋を入れる決まりがある。

勝手に売買や譲渡が出来ないようになっている。

ちなみにこれは平民ですら知っている事だ。

宝石商からの問い合わせ(請求書を含む)の書類が分厚いのは気のせいではないらしい。


また他家からの抗議文も多い。

どの家からも判子を押したような抗議内容だった。

読み終えた後、頭痛と胃痛が増した。

テオに薬を用意してもらおう。



「この方達は我が家の物を勝手に売買していたということですわね。これは立派な犯罪ですわ」

「何を言っているの?この家の物はパパのモノでしょ?パパの娘である私がどのように扱おうが問題ないじゃない」

娘さんはどうやら話が理解できていないらしい。

婿養子に入った父のモノのだから娘である自分も自由勝手にできると思っているのだろう。

友人たちが言っていた『お花畑の住人』という意味がよく分かった。

「今のエドヴィン君は侯爵家の人間じゃないよ?キャリーが亡くなったその時からただの『管理人』になったからね。キャリーの喪が明けた翌日には侯爵家からは籍を抜いてある」

勢いよく立ち上がって私の前に立った娘さんにおじい様が淡々と言葉を紡いだ。

「婚姻時に私達の前で誓ったよね?エドヴィン君が侯爵家の名を名乗れるのはキャリーと添い遂げている間だけ。キャリーの死または離縁した場合は籍を抜くと。キャリー亡き今、君は実家の名前を名乗っているはずだよ?国に提出する書類もすべて実家の伯爵家の名前を書いているよね?そうだろ?エドヴィン君?」

にっこりと、でも瞳は笑っていないおじい様に父は最終的に頷いた。


簡単に言えば、父は母が生きている限り侯爵家の人間として扱われるが、母の死または離縁をした場合は侯爵家から籍を抜くことが婚姻時の条件の一つだった。

我が国の公爵家と侯爵家は王家のスペア的存在であるため、血筋を大切にしているのである。

昔は近親婚を続けていたが、いろいろとあり今では王家、公爵家、侯爵家は3代おきに血の交わりを行う以外は伯爵家以下の者との婚姻をすることが定められている。


ちなみに私はちょうどお当番代(代々血の交わりを行う代の者をこう呼んでいる)の為、いずれかの家の誰かと婚姻を結び侯爵家を継ぐ予定になっている。

元々は母がお当番代で王家に嫁ぐ予定だったのが相次ぐ跡継ぎの死で、お当番代が私に繰り下がったのである。



「というわけで、我が家と関係ない君たちはさっさとこの家から出て行ってくれ」

「どうして!?」

「どうしてって……他人の、しかも侯爵家の私財を勝手に売りさばく罪人を我が家に置いておく理由がない」

「罪人って!私は……!」

娘さんが何やら叫ぼうとしたのを父が止めた。


あら、甘やかすだけじゃなくて叱ることも出来たのですね。

使用人の報告によれば、愛人の娘の我儘に際限なく甘く、なんでも許していたそうだ。

私にはいつも厳しく接していたのにね。

抱きしめられたことも褒められたこともないわ、多分。

母が生きていた頃はまだ優しかったという記憶があるけど。


娘さんは父の言葉に聞く耳を持っておりませんわね。


私はヒロインなの!

この侯爵家の娘じゃなきゃいけないの!

いずれは王太子妃になるの!


なんて喚いていますが……


ヒロインって小説の主人公にでもなった気でいるのかしら?

ああ、そういえば最近、平民の娘が母親を亡くして嘆いている時に、実の父親だと名乗る男が登場してあれよあれよというまに貴族社会に放り込まれ、高位貴族の子息に見初められるという話が流行っていたわね。

たしか童話のシンデレラにちなんで『シンデレラストーリー』っていうらしいわね。


侯爵家の娘って我が侯爵家の血を一滴も引いていないのに何を言っているのかしら?

ああ、でも父が本当のことを言わなかったから侯爵家の娘だと勘違いしているのね。


王太子妃って我が国に王子は()()おりませんのに……

第一王女(私の親友でもあります)が王位継承第一位で一応現在の王太子ではありますが。

女性のもとに嫁ぐつもりなのでしょうか?

まあ、第一王女様なら面白がって召し上げるかもしれないけど……

そもそも、平民が王家に嫁げるわけないのですが……まあ、いろいろ策を練ればできないことはないけど、確実に王家への支持は減りますわね。

特に選民意識の強い方達からは『自分より生まれが低い者が上に立つなんて耐えられない!』と言い出しそうです。

……考えただけで恐ろしいわ。

ああいう方達って、表ではにっこり笑顔を浮かべながら裏でこそこそと手を血で染めていますからね。



物語の『シンデレラ』は正真正銘の伯爵令嬢だから王家に嫁入りできたのに。


うーん、でも待って。

娘さんは『シンデレラストーリー』を望んでいるのよね?

じゃあ、その願いを半分叶えてあげるのも面白いかもしれないわね。


たしか、シンデレラは意地悪な継母と義姉に召使のように扱き使われるのよね。



「ねえ、おじい様」

「なんだ?」

「彼女、王太子妃になりたいそうだから、行儀見習いとして王宮に上げてみては如何かしら?もちろん我が家の紹介ではなく……そうね、お父様の実家からの紹介として」

私の言葉に娘さんは即座に反応した。

「しかし、王宮の行儀見習いは伯爵家以上は侍女見習い、それ以外はメイドまたは下女だぞ?」

「ふふ、彼女は王太子妃を目指しているのだそうだからちょうどいいのでは?ほら、巷で流行っている『シンデレラストーリー』を目指しているというならば……ね」

私が言わんとすることが分かったのか、おじい様は満面の笑みを浮かべた。

多分、親しい友人たちが私とおじい様の笑みを見たら即座に逃げ出していたのではないだろうか。

私もおじい様も意地の悪い笑みを浮かべている自覚はありますからね。


「わかった。城にはわしから話を通しておこう。よいな、エドヴィン君」

「…………閣下の良いように」

父はもはや反論する気もおきないのか元気のない声で答えた。

その傍らで母娘がキャーキャー騒いでいるが、いつまでその喜びが続くかしらね。



それからの展開は早かった。

おじい様が王宮に出向いて国王陛下に直にお話したことで母娘は二人そろって王宮に迎えられた。

元々の出が平民なので下女からのスタートだ。


配属先に文句をいう娘さんに王宮の侍女長様(王宮の使用人の中で一番偉い女性)がそれはそれは美しい笑みを浮かべて

「あら、お話を伺ったところ『シンデレラ』のようになりたいとか。ならばまず、下働きからコツコツと働いては如何かしら。運が良ければ高位貴族の方にその姿を見初められるかもしれませんわよ。侍女やメイドは基本、配属された場所からは離れられないので『シンデレラ』のように高位貴族の方に見初められるのは下働きの方が有利なんですけど……そうですか、下働きは嫌ですか。では、後宮(男性立入禁止区域)のメイドに欠員が出ているので……」

と誘導(?)して、滅多に高位貴族の子息が行くことがない厨房の下働きに配属させることが出来たとか。


娘さんは文句を言いつつも働いているそうです。

ただ、周りからは可哀相な子という目で見られているようですが。


口癖のように『いつか王太子様に見初められて王太子妃に!』なんて呟いているそうです。

王宮に勤めていてもまだ、王子がいると思っているあたりフォローのしようがありません。

母親の方は最初から、王族は無理でも高位貴族の子息に……という思いがあるようで、ちょっと見目の良い男性に言い寄っては邪険に扱われているとか……


あの母娘と我が侯爵家は無関係だという事は.国王陛下自ら周知してくださったので我が侯爵家には実質的な被害はありませんが、ことあるごとに娘さんが父は侯爵だと言い出すのには困ったモノです。

父の実家の伯爵家には確実に被害が及んでおりますが、父が契約違反していたので文句も言えないようです。

父が愛人を作らず、私の代わりに領地を治めていれば私が爵位を継承した後、父は侯爵家に復縁できるよう計画していたのですが、すべて水の泡になりましたからね。

それでも一応、実父の実家ですので可能な限りフォローはしておりますけど伯爵家の方達は社交界で肩身の狭い思いをすることになるでしょうね。

まあ、王宮に勤めている方は我が家の事情を熟知しておりますので早々トラブルに発展することがないのは嬉しい限りです。



母娘を王宮に送り出した後、父は侯爵家を出ていきました。

おじい様は私が成人するまでは居てもいいと言っていたのですが

「私は、侯爵家に相応しくありません」

と言って出ていきました。

母娘に使ったお金は何年掛けてでも返済すると言い残して。


実家から勘当はされずとも、社交の場に出ることを禁じられ伯爵領にて軟禁生活だそうです。


三日に一度のペースで謝罪文が我が家に届いているそうです。

おじい様は律儀に毎回読んでは薪代わりにしているそうです。

言い残していった返済金についてはおじい様がこっそり伯爵へに渡しています。

いくら裏切っていたとしても母亡き後、侯爵家の領地を治めてくれていたのは父です。

その報酬という形で伯爵家に渡しています。


父がこなしていた仕事は私が学院を卒業するまでおじい様とテオが引き継いでくれています。

もともとおじい様とテオが行っていた業務なので難なくこなしております。

私も簡単なモノから引き継げるように二人の下で勉強中です。


***


父が侯爵家を出て半年が過ぎた頃、母の事故死について進展がありました。


ただの事故ではなかったという事です。


父の愛人が酒に酔った勢いで話したそうです。

私の母を事故に見せかけて殺すように人に依頼したと。

その話を()()()()耳にした騎士団長様と宮廷筆頭魔導士様が密かに捜査隊を結成し真相を明らかにしました。


当時の現場捜査をした者達を吊し上げ……失礼、捜査した方達に懇切丁寧にお話を伺って、ここでもお金を握らされていたことが判明しました。


そのお金がどこから沸いて出たのか現在調査中です。

父からではない事は証明されているそうです。

父の実家の伯爵家はそれほど豊かな財政ではないで暗殺依頼をするほどのお金(小さな家を建てるほどの費用だったそうです)を用立てするのは無理だし、我が家はしっかり管理しているのでお金の出所がわからず、お金に関しては迷宮入りになりそうだとか。


やはり母は殺されていたのです。

すべては父を独り占めしたいという愛人さんの嫉妬のせいで。


今思えば、父も愛人さんも王家と我が家の事情に巻き込まれた被害者なのかもしれません。

ですが、父は母との婚姻を断ることも出来たのです。

父と母の婚姻は王令ではありませんでした。


父は学生時代から母に懸想しており、母の伴侶を決める時に自ら立候補したと言われています。


学生時代、母は王太子殿下の婚約者候補。

父は殿下の側近候補。

父は母への想いを一生涯蓋をし、臣下として仕えていこうと決意をしていたそうです。

殿下はそんな父の想いに気づいていたが知らないふりをしていたと言います。

母は気づいていなかったそうです。

殿下は何が何でも母を譲る気はなかったのですが、流行病で侯爵家の後継者が軒並み死亡。

侯爵家断絶は避けなければならない最優先事項でした。

二つしかない侯爵家は国が興った時からの親族であり、忠臣であり、表には出せない裏の仕事を受け持っていたからです。

我が家は主に魔導士として、もう一つの侯爵家は武の総締めとして国に仕えています。

表に立ったり裏に回ったりと、貴族社会では暗黙の了解というべき存在なのです。

この二家のバランスが崩れる時、国も崩壊の道を歩むと言われるほどです。


運命の悪戯か、母の兄が流行病で亡くなり母が侯爵家を継ぐことになった。

王太子殿下はその地位を捨てることはできない。(王家の唯一の子だから)

巡り巡って父は母と添い遂げることが可能になった。

一生隠し通すつもりだった想いを告げることが出来ることになったのだ。


だが、その時すでに誰にも知られない平民の恋人がいた。

母への想いを封印する代わり……身代わりとして選んだ恋人が。


一度は情を交わした相手を父は切り捨てることが出来なかったのでしょう。

ずるずると関係を続けていたと世話をする者に語っているそうです。


母亡き後は、母の面影を重ねていたといいます。

でも、母と愛人さんが似ている所は一つもなかったのですが……父はどこを重ねて見ていたのでしょうか?


似ているとすれば名前くらいじゃないかしら?

母はキャロライン。

愛人さんはキャロル。


まさか……ね。


それにしてもなんとも後味の悪い感じがします。

ですが、これが貴族社会というものなのかもしれません。

私がこの先生きていく世界はこういったことが日常茶飯事に行われる世界なのです。

私もいずれ、父や母のような状況に陥るのかもしれません。




もう少し続きます。



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