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なんとなく浮かんで書いているもの。

ご都合主義がいかんなく発揮されています。


「今日から、ここで一緒に暮らす」

父が連れてきたのは一組の母娘おやこ


父が二人を優しい笑みで見つめている。

父の表情から女性も少女も満更でもない笑みを浮かべた後、すっと視線を私に向けた。


その視線は氷の冷たく、私の心を恐怖に陥れた。


まずい、このままだとこの人達に殺される。


咄嗟にそんなことを思ってしまった。


私の実母は数年前に事故で亡くなっている。

その時の父の嘆きから両親は仲が良かったのだと思っていた。


だが、しかし!


父は私や母に隠れて愛人を作り、私と半年しか違わない子をもうけていた。

母の葬儀の時の父の嘆きは演技だったのだろうか。


そして、愛人を我が家に招き入れると言う。



私は大きなため息が出そうになった。

なったが、にっこりと笑みを浮かべてなんとか無難に簡単な挨拶を済ませ、自室に戻った。

「テオ、テオはいる?」

執事のテオドールを呼ぶと、彼はすぐに私の部屋を訪れた。

「お嬢様?如何為さいました?」

テオドールは私の祖父の代からこの家の執事長を務める人。

私のことも実の孫のように可愛がってくれている。


「テオ、おじい様たちは父があの人達をこの屋敷に入れることを許可したの?」

「いいえ、エドヴィン様の独断です。私も先ほど初めて知ったのです」

あ、エドヴィンというのが父の名ね、どうでもいいけど。

「そう、ならこの手紙をおじい様に至急届けて。一秒でも早く」

「わかりました。では、私の孫のロランに頼んで魔法便で送ってもらいましょう。そろそろ来る頃でしょうから」

「え?でも魔法便はかなり高額よ……私自身が今自由に使えるお金は少ないから……」

「ふぉふぉふぉ、大丈夫です。わが一族は大旦那様とお嬢様に命を救っていただいたのです。その時のお礼がまだ返しきれておりません。ロビンも喜んでやってくれますよ」

テオが言い終わるか、終わらないかのタイミングで、一人の青年が姿を現した。


そう、扉からではなく空間から。


「お嬢!大丈夫か!?」

「ロビン!?」

「じいちゃんからお嬢が大変だって通信が……あれ?」

「ロビン、せめて窓から入ってこい!」

叱るテオドールにロビンは肩をすくめているが、いやいや普通玄関からでしょう。


「私は今のところ、大丈夫よ。ロビンこそ仕事は?」

「上司にじいちゃんの緊急通信見せたら『なんだと!?一大事だ!すぐに行け!私の代わりに彼女の手足となれ!』と強制的に転移魔法掛けられた」

ロビンの上司ってたしか、宮廷筆頭魔導士の……?

ずいぶん昔に遊んでもらってことがあるあの方よね?

常に冷静沈着で、年頃のお嬢様方から熱烈なアプローチを受けつつも笑みひとつ浮かべず無視をされているという辺境伯家の方の事よね。


「ふぉふぉふぉ、やっぱりあの方も愛するお嬢様のことになると私情を仕事に挟むのですな。いつもはきっちりと分けていらっしゃるのに……ユカイ、ユカイ」

「そういえば、あの人お嬢にベタボレだっけ……で?じいちゃん、俺は何をすればいい?」

テオの意地の悪い笑みを見てロビンは小さくため息をついていた。



テオはロビンに先ほどのことを掻い摘んで話していた。

「は?マジ?」

「ワシだってビックリしておるわ。ということで至急、お嬢様からのこの手紙を大旦那様に届けてくれ」

「了解!魔法便を使うより俺が行った方が早いから俺が直接届けるよ。超特急で。しっかし、何勘違いしてんのかね、エドヴィン様は」

「大体は予想できるが…………頼んだぞ、ロビン」

「任せて!じいちゃんのためにもお嬢のためにもすぐ行ってくるわ」

言い終わるか終わらないかのタイミングでロビンは再び空間に消えていった。


まあ、今回は他の人(父と母娘)に見られると不味いのでよしとしよう。


「テオ、私の食事はテオ達と同じものを用意しておいて」

「お嬢様?」

「すごく嫌な予感がするの。ロビンがおじい様の返事を持ってくるまででいいの」

先ほどの母娘の視線。

あれは私を確実にこの家から追い出そうとしている。

いえ、追い出すだけならまだいい、最悪事故死あるいは病死を狙っている。



「それから、我が家の資産が勝手に使われないよう今まで以上の監視を。もし、父があの母娘に使ったら証拠(領収書など)を揃えておいて」

「了解いたしました」

その他にも色々と細かい指示を出し、あの三人の世話役(父のお気に入り)以外の使用人に同じ指示を出しておいた。

全員から了承の返事が即返ってきたのには驚いたが、なんとか予防線は張れたと思う。


予想通り、私の夕飯に毒が混入されていた。

使用人がわざと私の分と娘さんの分を間違えて配膳すると、

「ちょっと、配膳を間違えないでよ!私を殺す気!?」

「皿を間違えただけでなぜ、殺すと言う発想になるのかしら?」

「あんたの皿にだけ毒を仕込んだのだかr…………」

とあっさりと自ら毒の混入を告白。

テオがその時の状況を魔道具で記録しており、後日、裁判の証拠品として警備隊に提出することになるのだが、私は記録されていることにすら気付いていなかったのである。

まあ、この程度の毒なら私が生まれた時から持っている『光の加護』で瞬時に浄化されちゃうんだけどね。

毒に慣れていない二人にとっては致死量かもしれないけど。


ちなみに父は外出中だったのでこの騒ぎを知らない。


私は喚いて食堂をめちゃくちゃにしている二人をしり目に、使用人たちが新たに用意してくれた食事を頂いたのだった。

二人を宥めているのは父のお気に入りの使用人。

まだこの屋敷について半日も経っていないのに母娘の態度に辟易している様子だけど、私に助けを求めるようなことはしない人たちなので無視しています。

ああ、母娘の分の代わりの夕飯はありません。

だって、使用人と同じものなど食べられないって騒いでいましたからね。

プチっと切れたシェフが食べたければご自分でお作りくださいってしれっと言っていたのにはスッとしたわ。


あ、割れた食器類はあとで請求しないとね。



その日の夜遅くにロビンがおじい様からの返事を持ってきた。

その手紙をテオにも読んでもらった。

「ふぉふぉふぉ、大旦那様も相変わらずですね。では早速手配をしましょうか」

と笑いながらも、おじい様からの指示を次々と部下に振り分けているのは流石である。

ただ夜中まで働かせることになってしまった使用人達(父のお気に入りは除く)には申し訳なく思う。

ある程度落ち着いたらまとまったお休みとお給金の値上げをおじい様に相談しなきゃいけないわね。



おじい様の指示で私は翌日には学院の寮に戻った。

私は王立魔術学院の生徒なので普段は寮で生活している。

父から緊急の用事だと呼び出されたので一時帰宅していただけである。

緊急の用事って言うのがあの母娘の事だったのよね。

いつもは手紙に一行だけの連絡しかしないくせに何考えているのかしら。

私とあの母娘を会わせて何をしたかったのかしら。

まさか堂々と我が家の家名を名乗らせるつもりなのかしら。


まあ、それは土台無理だけどね。

書類審査で却下されるわ。


我が国の婚姻は全て国が把握している。

婚姻を結ぶとき婚姻届を、離縁するとき離縁届を国に提出し、許可が降りないと正式に認められない。


特に貴族間の婚姻は審査が厳しい。

我が家も貴族、それもこの国に二つしかない侯爵家である。

特に我が家は王家とも関わりが深い家のため、色々と手続きが面倒なのよね。



********


父があの母娘を我が家に招き入れたことは社交界にあっという間に広がった。

学院の友人達に根掘り葉掘り聞かれたけど私も正式には紹介されていないのでなんとも言えない。

そう、正式には紹介されていない。

「一緒に暮らす」と父が宣言しただけだから。

ただ、父の愛人とその娘ってこと以外は何も知らないのよね。

だから曖昧な笑みだけを浮かべておいた。

ちなみに、これもおじい様の指示通りです。


3ヶ月ほどたった頃、おじい様から

「さて、ちーっとばかし早いがお仕置きを始めようか」

といった内容の手紙が届き、一時帰宅を余儀なくされた。

私の知らないところで終わらせてほしかったです。

友人達に「ちょっとバトルしてくる」と告げたら満面の笑みで「完膚無きまでに叩き潰せ」とエールを送られてしまった。


あの母娘は方々で我が家の名前を勝手に使っては騒動を起こしている。

それに友人たちの家族が巻き込まれている。(現在進行形)

騒ぎが起こるたびに私のもとに人が集まってくる。

幸いにも皆さん私に同情して協力してくれているので助かっている。

もし、皆さんが敵にまわったら……と思うと確実に路頭に迷うでしょうね。


後日、一軒一軒お詫びとお礼に向かわないといけないわね。


いろいろと仕事を増やしてくれて……あの母娘、どうしてくれよう……


********


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