ワンナイト人狼3戦目、そして…
もうミスできなくなり焦る翔太、しかし人狼部への切符を掴むチャンスを逃したくないという思いから、何とか心を落ち着かせる。
最後のカード配りが終わる。
役職を確認し、作戦を練る。翔太はカードを確認したが顔色を悪くするしかなかった。最後の戦いでどうゲームを展開するかを考えると絶望的である状況であったからだ。
そして、議論が開始される。
翔太(これはやばい。だがヒントがなさすぎる!)
内心、焦りたい気持ちがあれど言葉にするわけにはいかない。
今回は全員が何かしらの作戦を練っているのか、前の2戦とは違い、誰も何も名乗らない状況が続く。
しかし、そんな緊迫した雰囲気の中、痺れを切らした香織が発言する。
「じ、実はあたし怪盗なの!そして、誠と交換して市民だったの!」
翔太「!!?」
「さすがにもう言わないとダンマリになっちゃうと思って!」
慌てた様子も含め、嘘の焦りか、市民としての焦りかが分からない挙動である。
待ちきれず、といった感じの言い方だったが為に残りの3人の香織に対する反応は半信半疑であった。
しかし、残り時間があと僅かとなったところで翔太が喋り出す。
「誠!俺は占い師だ!今回はまじだ!そして先生が人狼だ!何故なら残り2枚は市民と怪盗だからだ!」
「なに!?だが、翔太が本物である証拠も…」
それを割るように話を続ける翔太。
「大丈夫だ、聞いてくれ。俺は占いの結果から残りカードが市民と怪盗である以上、先生・香織・誠の3人の内から2人を探す必要があった。だが俺には誰が人狼か分からなかった。けど、香織がいないはずの怪盗を騙った事からまず1人目の人狼が香織という事までは判断できた。あとは…」
「桜井、騙されるな。あいつが占い師の証拠なんてどこにも…」
「待ってください先生、まだ途中です!!」
あまりに明快な翔太の考察を良しと思わなかったのか、篠原が話を割って入ろうとする。
しかし、そんな篠原の制止も振り切り翔太は続ける。
「俺が占い師として黙ってのは2人の人狼を炙り出す為だ。そして、香織が怪盗として交換した相手を誠に選んだ事から誠は絶対的に市民だと確信した。」
「待ってくれ翔太。仮にそうだとしたら香織は仲間である先生を庇って、先生を怪盗の交換相手として選ぶんじゃないのかい?」
真剣な表情の翔太の推理に対してしっかりと理由を把握しようとする誠。
「そこなんだよ!香織が先生を交換相手にすると誠と俺からの疑いがかかる可能性を恐れたんだ。先生と香織が人狼同士でお互いを庇う為にしている行動じゃないかって事を!そして…さらに」
「ピピッ!」
ここで議論終了のタイマーが鳴る。
翔太の熱い弁明が誠に伝わってないにしろもうこれ以上議論することは許されない。
「よし、これで最後だ。全員投票先は決まったな?いくぞ、せーの!」
篠原の掛け声とともに全員が指を指す。
結果は翔太が篠原に、香織が翔太に、篠原が翔太に、そして誠が篠原に投票した。
よって、篠原2票、翔太2票の同票で2人が処刑される。
「負けたぜ。やるな伊角…」
そう少し笑いながら市民側の勝利を伝える。
「よっしゃああ!」
最後に勝てた事にホッとしたのか思わず大きな声で喜ぶ翔太。
「あーあ、負けちゃたかぁ〜」
「仕方ねぇよ。けど小野も咄嗟にあの行動は良かったぞ。」
落ち込む香織に賛辞を送る篠原。しかし、篠原が本当に賛辞を送るべき相手は他にいた。
「翔太。どうして投票先を先生にしたんだ?僕が香織じゃなく先生に入れるとわかってたのかい?」
そう、本来であればいないはずの怪盗を騙った香織が翔太にとっては絶対的に人狼であり、翔太が投票すべき相手であったのだか翔太は投票先を篠原にしている。
「誠だからだよ。お前は俺の事も多少なり疑ってたはずだろ?議論時間最後に俺が慌てて喋った事で俺が人狼やそれこそ怪盗である可能性を探ったはずだ。そこでもし俺が怪盗で、人狼も2人いたとしたら先生と俺が交換してる可能性も追ったはずだ。」
翔太の推理に驚いたと言わんばかりの顔で頷く誠。同様に篠原も目を見開いていた。
「そうだよ。良くわかったね。僕は自分が市民だったから誰が人狼かなんて全然分からなかった。けど、翔太が香織を敵対構造に置いた事で僕の中で翔太と香織が人狼同士である可能性が消えた。翔太はおそらく敵対する香織から1票もらう事、そして翔太が怪盗であった場合は先生と交換しており、さらにそれを考慮した先生が翔太に1票入れる事までは考えていたんだよ。」
翔太にも驚いたが、誠のここまでの推察も見事のもんだと篠原は驚いてばかりだった。
「だよな!んで誠は俺が本物の占い師の可能性も考えるから篠原先生にしか入れられないと思って篠原先生に入れたんだぜ!」
翔太目線において絶対的に人狼の香織ではなく篠原に投票したのは、誠の考えを読んだ上での行動であったということである。
そうでないと市民がとしての投票を合わせる事が出来なかったからである。
そして、3戦目が終わる。
久しぶりに頭使ったからか篠原からあくびが漏れる。
「ふぅー疲れたな。けどこれでテストは終わりだ。結果としてはまあ、まだまだ及第点レベルだけど、しゃーねぇが人狼部の設立を認めてやるよ。」
篠原のその言葉を聞くと、
「やったぜ!ありがとな先生!いぇーい!」
先程の真剣な雰囲気とは変わり、おもちゃを買ってもらった子供のように騒ぎ始める翔太。
「よっしゃー!!これで念願の人狼ができるぜ!」
浮かれている翔太をよそに、立ち上がり生徒指導室を出て行こうとする篠原。
すると、一度立ち止まり翔太達のほうを振り返える。
「あ、そういや部員を7人集めないと1年で廃部なるからな。んじゃ。」
バタン。
「え?!」3人の声が重なる。
大事な情報をあっさりと伝えた篠原に固まる3人。
「ちょ、まじかよ!先生!」
「大事だね。7人か…今から新入生を集めるとなると難しそうだね」
これからの大変さに苦笑いになる誠。
「けど人狼部は翔太の中学からの夢だもんね!みんなで頑張ろ!」
されど、そんな2人を笑顔で元気付けてくれる香織である。
翔太は真剣な顔つきに戻り、2人のほうを向く。
「誠、香織。今更だけど入ってくれてありがとな!」
「よし、全校生徒当たってでもかき集めるぞ!」
「おーーー!」
そんな3人が楽しそうにハイタッチしてる様子を生徒指導室の外の廊下から1人の女子生徒が聴いていた。
??「じんろうぶ?あ!あの人は前に廊下で…」
ワンナイト人狼3戦目・内訳
人狼→篠原
人狼→香織
占い師→翔太
市民→誠
人狼の篠原に2票、占い師の翔太に2票で同数処刑で人狼が処刑され
→市民側の勝利!