人狼部が作りたい!
「えー、では以上で職員会議を終わります。連絡事項がなければこのまま体育館へと各自移動をお願います。」
朝の職員会議が終わると、教師達は各々の机と向かっていく。
その中で1人、180cmほどある背の高い中年の教師が一目散に喫煙所へと歩いていった。
「ふー、また今年も1年が入ってくんのかよ。だりぃな。」
タバコをふかしながら、教師にあるまじき発言をするのは篠原孝一。42歳。数学科の教師だ。
篠原が喫煙所の窓から、初々しい顔をしながら登校してくる新入生を見つめている。
すると、新入生同士で何やら揉め事があったようだ。1人の生徒がまさに相手の生徒を脅しているような雰囲気であった。
「ったく。面倒くせぇ奴が入ってきたな今年は。確かさっきの会議で1人素行の悪い奴がいるって言ってたな。あいつか?」
本来、教師ならば喫煙所から窓を開けてでも注意すべき場面だか、この篠原は変わらずタバコを吸い続けていた。
一方、篠原が喫煙所に向かっていた頃。
コンコン!
「すいません!新入生の伊角翔太です!篠原先生はいますかー?」
入学式前に何の用だと視線を向ける教師達。
すると、1人の女教師がやってきた。
「Aクラスの子かな?篠原先生なら隣の喫煙所にいるわ、呼んでこよっか?どんな用事?」
「えと、部活を作りたいんですけど、どうすればいいのか担任の篠原先生に聞きにきたんすよ」
「へー、部活を作りたいかぁ。入学式もまだなのやる気があるわね!ちなみに何の部活?」
と問いかけながら職員室から喫煙所へと案内しようした直前で
「人狼部っす!」
翔太がそう答えた瞬間、職員室は静まりかえった。
(な、なんだよ、急にシンとして…)
「え?…今何て?人狼部?」
「そうっす!昔あったって聞いたんすけど?」
「え!?ええ…そうね。あ、ほらあそこが喫煙所よ。あそこにいると思うわ。それじゃ私はこれで」
翔太の言葉を聞いてから急によそよそしくなった女の教師はすぐさま職員室に戻っていった。
「あざましたー!(何なんだろな…ま、いっか)」
窓ガラス越しに篠原と目が合い、会釈する翔太。
「んぉ?誰だ?」
ガチャ。
「よー、誰だ?新入生か?」
「おはよーございます!先生のクラスの伊角翔太っす!お願いがあって来ました!」
「おう、篠原だ一年間よろしくな。んで、お願いってのはなんだ?」
不貞腐れてた印象だが、笑うと気さくな感じを受けた翔太は安心して話を切り出した。
「実は部活を作りたいんすよ、人狼部を!」
そう、翔太が喋ると同時に目を見開く篠原。
随分懐かしいワードについ過去を思い出す。
(「人狼部作りたいんですよ!篠原先生!」)
懐かしい教え子の言葉がダブり、回想する篠原。
「人狼部ねー。って、まさか伊角、お前職員室でこの話してねぇーだろうな?!」
「え?しましたけど?あ、そういえば何か変な雰囲気になった記憶が…」
「あちゃー、けどまあしょうがねえか。」
大変な事態かと思ったが、意外と開き直る篠原を見て困惑する翔太。
キーン、コーン、カーン、コーン。
入学式10分前の鐘が鳴り、一旦話を切り上げる。
「お?もう時間か、伊角。とりあえず話はわかったから体育館まで一緒に行くか?ちょっと人狼部の話をしてやる。」
一方で。
香織「遅いね、翔太。どうする?誠?」
誠「たぶんそのまま体育館向かってるんじゃないかな?とりあえず行こうか」
案の定帰ってこない翔太に仕方ないと諦めて、2人は体育館に向かおうとしていた。