合同練習1戦目ー②
決戦投票→2名以上の同数票で処刑対象に上がる者同士の投票の事。2人が同数ならば、その2名で再度投票が行われ、1人に絞る。
彩加に続き、誠までもが役職COをした事により、議論の場は一気に加速した。
「桜井君も占い師なんだな?じゃあ、彩加と同時に初日のお告げの人間を教えてくれ。俺が合図を取るぞ」
占い師と名乗る者が2人出たことで、ややこしくなった状況を少しでも分かりやすくしようという信宏の配慮が見える。
「いっせーのーで!」
彩加「剛貴よ」
誠「…翔太です」
翔太「お?俺か」
剛貴(…!?)
ここで敦が場を仕切りにかかる。
「これはおもしれえな。山下先輩よぉ、たしか一般的には占い師には狂人が騙りに出やすいんだよなぁ?」
相変わらず舐めた態度で問いかける敦。
「ああ、人狼に気付いてもらえる可能性が高いからな」
「なら、このままぶれずに女子の中から投票するのでいいんじゃないか?普通に人狼がいる確率はあるだろ?」
何か意図があるかは別にして、投票対象も女性のままで構わないと敦は提案する。
「いや、むしろその理屈でいくと男性側に人狼がいる可能性が高くないかい?」
立川高校の人狼部でプレイする時、しばしば状況把握を行う事が多い侑人が推理する。
「たしかに!占い師のどちらかが人狼でない場合、飛鳥ちゃんは何も役職がないと言っているから、確率的には男性側に投票対象にしたほうがいいと思います!」
占い師のどちらともが男性の中に初日のお告げの人間がいたことから飛鳥を除いた紗央里、香織、京子の3人よりも、侑人、信宏、弘紀、敦、勇介、剛貴、翔太の7人に中に人狼がおり、おそらく狂人で占い師と騙った誠と彩加のどちらかが人狼に対して上手くお告げの人間であると庇いを入れた可能性が濃厚になるという侑人の考えに京子も賛同したようだ。
しかし、
「いや、俺は気に食わねえが五十嵐の意見でいいと思う」
「あたしもよ。森本さんは純粋にまだ疑ってるし、女性側に人狼がゼロってこともないでしょう」
弘紀と紗央里は侑人達とは反対に、敦の意見に同調する。
「僕もはじめの方針のままの方がいいと思います…これだけ森本さんを疑っている声がある以上、森本さんの正体を知ることは意味があると思います。」
「はぁ!?ちょっと勇介もあたしの事疑ってんの?信じらんない!あたしは何も能力のない人間って言ってんじゃん!」
勇介も人見知りであることを別にして、ここは意見を落とすべきだと判断し、自分の考えを述べる。
しかし、飛鳥は納得いかないといった表情で勇介を睨む。
そんな飛鳥の態度に勇介は少し縮こまる。
「そうだな、飛鳥が人間であれ人狼であれ、投票を入れたかどうかで誰か人狼かの推理はしやすくなるよな!」
「ちょっと翔太まで!何なのよ!」
完全に飛鳥は自分が人狼として疑われている状況に腹を立てている様子だった。
そんな翔太の発言にひっかかるものがいた。
(今のは人狼にヒントを与えるような言動にも見える…。人狼なのか?それなら彩加が本物か?…)
女性を投票対象にするかどうかで、議論が割れようとしていたが、議論時間も少なくなり投票の時間が近づく。
(ま、いいか。ここは何もせずに傍観しているほうが変に怪しまれずに済むか…)
剛貴は自分が片方の占い師から人間と言われている以上、全員から多少なりとは人間として判断されていると考え、この場は何も喋らなかった。
そして、
「さあ、投票の時間だ。それぞれ投票棒を持って投票したい人物に投票してくれ。投票の際は議論でなければ個人的に推理や意見を述べてもいいぞ」
信宏の言葉を合図にそれぞれが投票に移る。
「んじゃ、俺から投票する!俺は香織だな。女性陣の中で1番緊張してるように見えた。あと、ちなみに紗央里さんが一番人間ぽく見えてる」
翔太を皮切りに全員が順に動く。
「あたしはただの人間っていってるじゃん!みんな投票するのおかしいよ?!あたしに入れる流れを作ったと思うから沖さんに投票する!!」
演技か否か、飛鳥は舞台さながらのキレたも同然の勢いで紗央里に投票した。
そんな飛鳥の弁明も虚しく、次第に投票も固まり、紗央里が2票、香織が2票、京子が2票、飛鳥が3票という状況に。
彩加に投票が1つも入ってないのは、さすがに初日に本物の可能性のある占い師を処刑することはできないといった全員の暗黙の了解からである。
まだ、投票していないのは弘紀、信宏、京子、勇介となった。
「俺は、森本さんは怪しくねえと思うぞ。小野さんに投票する」
「今のノブの投票は森本さんを庇ったように見える。が、ノブが人狼ならそんなあからさまな助け方はしないよな…。俺は紗央里以外の女性陣は等しく怪しく見えているから古川さんに入れる。あと、投票がまだの人に言うが、できれば決戦投票にしてあげてほしい。」
3票であった飛鳥に並べるように香織へ3票目を入れた信宏を少し疑った弘紀が京子に3票を入れて、飛鳥・香織・京子の3人が同票という状況になる。
「田中さん、すいません。私は自分が人間なので死ぬわけにはいきません。なので、飛鳥ちゃんに入れます。」
京子は自分が人間として死ぬわけにはいかない為、香織か飛鳥へ投票することで処刑を免れる必要があったのだろう。
最後に、勇介が投票する。
「僕も決戦投票の意見は理解できます。でも僕は森本さんの正体を見ることの方が大事だと思うので森本さんに投票します!」
「はぁ!?勇介ありえない!あんたのが決定票よ!?」
呆れた、という顔でもう処刑が決定された飛鳥は勇介をただ睨むしかなかった。
誰もが、せめて決戦投票にすると思っていた矢先、勇介が意思を持って飛鳥に5票目を入れた事は驚く行動であったと同時に、この勇介の行動が勇介を人間ぽくもさせた。
「えー、本日処刑されるのは森本飛鳥!遺言があれば言ってくれ」
篠原がGMとして進行を再開する。
「えっと…あたしは何も役職ないって言ってるし、こんなに投票が集まるとは思ってなかったし!あたしは絶対に人狼じゃない!そんで、勇介がちょー怪しい!占い師の人は絶対勇介を占って!あたしは人間!」
その言葉を最後に、飛鳥は円卓状に座っていたゲームの場から離れて篠原達が座っている奥に移動する。
そして、夜の時間がやってきた。
合同練習1戦目 初日状況
投票状況
・沖紗央里←五十嵐敦、森本飛鳥から投票される。
・小野香織←伊角翔太、桜井誠、山下信宏から投票される。
・古川京子←小野香織、陣内剛貴、田中弘紀から投票される。
・森本飛鳥←沖紗央里、小松原侑人、山本彩加、古川京子、近藤勇介から投票される。
占い師CO
・山本彩加→陣内剛貴が初日のお告げの人間
・桜井誠→伊角翔太が初日のお告げの人間
初日処刑者:森本飛鳥