練習と練習
状況を整理する誠。
「えっと、とりあえず人狼部でようこそ。でいいのかな?僕は桜井誠です。」
新たに増えた人狼部の部員の登場に度々驚かされる部員達。
「私も自己紹介するね!小野香織です!香織って呼んで!よろしくね森本さん!」
「2年の古川京子です。よろしくね!」
そんな唐突な出来事にも慣れたのか香織と京子も挨拶をする。
「はぁ…仕方ないかぁ。こいつに弱み握られて仕方なく入る事になったわ。人狼ゲームなんてよくわかならいけど、とりあえずよろしく。あと、呼び方は飛鳥でいいわ」
弱みを握られ仕方なく人狼部に入る事になった飛鳥はもう現状を受け入れるしかないという様子だった。
「まあ、これで5人目の部員だ。いい感じじゃねぇか?」
「翔太。どんな手を使ってもとは言ってたけど、これはひどくないかい?」
嬉しそうな翔太に対して、さすがに今回の入部の流れを非難する誠。
「いいのよ。私も本当に嫌なら来てないわ。それに部活入ってなかったし。あとそいつが人狼ゲームをしたら演技の為にもなるって言ってたし。」
当の本人である飛鳥がそう言ったからか、さずかに誠もこれ以上は何も言わなかった。
「飛鳥ちゃん演技の勉強してるんだね!すごーい!」
「伊角君の言ってる事は合ってると思うよ!人狼ゲームは役を与えられて演じ切る。といっても過言ではないところもあるからね!」
さすが女子であろうか、香織と京子は誠の懸念もよそにさっそく飛鳥と距離を詰めていた。
「よし、じゃあ。5人も揃ったわけだしワンナイト人狼でもするか!」
「そうだね!飛鳥ちゃんにも早く人狼ゲームの面白さをわかってもらいたいしね。」
翔太の提案でワンナイト人狼を行うことになった。
「いいね!やろやろ!」
ワンナイト人狼が初めての京子と飛鳥に一通りのルールを説明する。
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いざ、ワンナイト人狼が始まると京子は、さすが推理オタクといえる思考力と持ち前の記憶力を発揮した。
誰が誰を怪しんでいるかを正確に記憶し、推理小説さながらの名推理ぶりで市民のカードを引くと、その実力を発揮した。
一方で、初めての人狼ゲームであった飛鳥は回を重ねるごとに上手くなっていった。これまでの演技の練習の甲斐あってか騙すということにかけては中々の才能が見られ、特に人狼の役職の時の強さが際立った。
「いやー、京子さんの記憶力すげえ!よくあんな細かい発言まで覚えてますね」
「飛鳥ちゃんだってすごいよ!嘘か本当かの境目が全然わからない!」
翔太や香織から褒められた2人は満更でもない顔をしていた。
「人狼ゲームも意外に面白いわね!演技の練習にもなるし!」
そう感想を述べる飛鳥を見て、誠もよかったと安心した心持ちであった。
それぞれが感想を言い合う中、京子は1人心の中で思うことがあった。
京子自身、2年になってから部活に入るという事に少なからず抵抗はあった。けれど、入って良かったと思えるほどこの人狼部は自分に馴染むと感じていた。
「かおりっち!人狼の時バレバレだよ!」
飛鳥も人狼部に馴染んできて、ワンナイト人狼もそろそろお開きという頃。
下校しようと思っていると、部室の扉の窓に人影が映ったのを香織は見た。
香織(あれ?今誰かいたような…気のせいかな?)
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場所は変わり、都内のある高校にて
??「ノブさん、西住って人狼部あったんですか?」
新入生らしき見た目の生徒が隣に座る先輩らしき生徒に話しかける。
??「いや、最近出来たらしいぞ?何でも先生の昔の友人が顧問をしてるらしい」
ごつい見た目の180cmはあるであろう背丈の男子生徒が答える。
??「そうなんすか。出来て間もないなら、あまり期待できないっすね」
そう言いながら笑う男子生徒。
すると、その部屋の扉が開き会話に割って入る。
??「油断は禁物よ剛貴。しっかりと相手してあげなきゃ」
??「お、彩加来たのか。そうだな。全力でつぶしてやるか!」
??「よし、じゃあお前ら練習するぞぉ!」
ごつい男子生徒の掛け声とともに、まるで体育会系のような熱気を帯びた部員達の返事が聞こえる。
西住高校人狼部の翔太たちがまだ部員集めに奔走している頃、篠原が言っていた合同練習の相手校、立川高校の人狼部の面々はやる気満々で準備しているのだった。