部員5人目
時は進み、放課後。
「結局、詐欺師って人見つからなかったね。」
「まあ、噂でしかないからね。諦めるしかないかも。」
「いや、絶対いる!てか、あの五十嵐とかいう奴にもっかい聞きにいってやる!」
半ば諦めかけている香織や誠と違って、翔太はまだ諦めていないようだ。
部室にて。
「そうだったんだね。何かごめんね?私が噂を教えたばっかりに…」
「いえいえ!京子先輩は悪くないですよ!」
肩を落とした京子をすぐに慰める香織。
「そうですよ!けど、京子さんのように自ら入部を希望してくれる生徒がいないのは寂しいですね…」
篠原に部員を増やせと言われてから、まだ京子1人しか増えておらず、不安になる誠。
「まあ焦ってもいい事はないし、ここは気分転換にとりあえず人狼やっとくか…って、あれ?」
「どしたの、翔太?」
そうだねと賛同した香織が不思議そうに尋ねる。
「やべ!教室に人狼ゲームのカード忘れてきたみたいだ。ちょっと探してくる!」
人狼部の財産でもあるカードを失くしてはいけないという事もあり、翔太は走って1年Aクラスと向かう。
教室に近づき、歩調を緩める翔太。すると、Aクラスへ着く手前のBクラスから声が聞こえてきた。
??「あ、あー。よし!」
??「私の想いはどうなるのよ!いつもそうやって自分の事ばかり!!」
1人の女子生徒が何やら台本のような物を持ち、窓の外に向かって喋りかけている。その様子を翔太はじっと見守る。
はじめは怪しい人かと思ったが、どうやら様子を見る限り、台本を片手に演技の練習でもしているようだ。
??「最っ低!!もういい!!別れる!」
その台詞とともに顔を翔太のいる教室の入り口を向ける
翔太「あ…」
??「なっ!??」
翔太は気まずさを、女子生徒は恥ずかしさを帯びた顔で固まる2人。
??「い、今の見てたの!?」
「お、おう…」
恥ずかしさのあまり赤面する女子生徒。
??「アンタ今の全て忘れなさい!!」
「それは無理だ。しっかりと目に焼き付いている。」
同じ学校の生徒が演技の練習をしているという珍しい光景は中々見れるもんじゃないと思う翔太。と、同時にある考えが思い浮かぶ。
翔太(よし、これは使えるかもな)
「おい、お前部活入ってるか?」
??「な、なに?いきなり!入ってないけど?」
ニヤリとする翔太。
「んじゃ交換条件だ。さっきの事は秘密にしてやる。」
「ほんとに!?」
「ただし!!条件がある!」
ーーーー
部室に戻り、扉の前に立つ翔太。その横には先程の女子生徒がいる。
勢いよく扉が開かれる。
ガラガラ!
??「はじめましてね。私は森本飛鳥よ。不本意だけどこの部活に入ることになったわ…」
「驚いたか?部員を1人確保してきたぞ!!」
ニコニコした様子の翔太と、俯きながらも怒った顔をしている女子生徒の顔がそこにあった。