希望を探して
ここはフォルド家の屋敷。暗く長い廊下を召使いのアシュリンは進んでいた。一つの扉の前に立つ。
コン、コン!
「失礼します」
部屋には大きなベットに寝た男性と、その娘だけ。男性は少しも動かない。少女の疲れた顔がロウソクに照らされる。
「ラズリお嬢様、新しいタオルとお湯をお持ちしました」
「ありがとう」
早速ラズリはタオルで父親の顔の汗を拭いた。
「お嬢様、後は私が見ますので、お休みになられた方が…」
「ダメ、ダメなの。私がいなくなったら、叔父に殺されてしまう!」
「え?」
「叔父は金目当ての強盗だというけど、本当に父を撃ったのは叔父よ!」
アシュリンは驚いた。なぜそんな事を、他の誰かに聞かれたら…
「お嬢様そのような事を言ってはいけません。やはり疲れています、休みましょう」
「でも…」
「では毛布を持ってくるので、そこのソファで休んでください」
「……アシュリン、ありがとう」
次の日は朝早くから病院の先生に来てもらった。銃で撃たれたが急所を外れており、傷の治りも良いらしい。
そしてフォルド家の朝食にはラズリとラズリの母と弟、叔父が席に着いた。
「まあ、兄さんが撃たれたと聞いた時は驚いたけど、命に別条は無いみたいだから良かった」
「本当にそう」
母は涙ぐんでいたが、ラズリは叔父の疑いが晴らせなかった。
「ごちそうさま」
「あら、ラズリもういいの?」
「ええ」
(父を殺したかもしれない人と一緒に居たくない。それに調べたい事もある。
そう…叔父の犯行の証拠を掴みたい!)
ラズリは部屋を出た。
(父は純度の高く貴重な水晶「フォルドクリスタル」を若いときに発見し、叔父と会社を立ち上げたと言っていた。私は叔父がその利益を独り占めしようとしてると考えている。だから父を殺そうとした)
ラズリは自分の部屋で必死に考えていた。
(何の用で父は出掛けたんだろう?やっぱり、事件の現場を見ないと!)
部屋から出てラズリは驚いた。アシュリンが廊下の壁際に立っていた。
「お嬢様、どちらに行くのですか?」
「いや、その…」
「まさか旦那様の事件の現場ですか?」
「どうして分かったの!」
「やはりお嬢様は、犯人を捜すつもりだろうと思ってました」
「……」
「どうしてそこまでするのですか?」
「このままだと叔父に会社を取られてしまう気がするの…だから!」
「分かりました。一緒に行きます」
「え、本当!」
「私はお嬢様を守ります。まずは服を替えてください」
「どうして?」
「事件の現場には、すでに大勢の警察と記者がいます。身分がばれると危険です」
「そうね、分かったわ」
そうして二人は新聞記者のような格好で屋敷をこっそりと出た。
ラズリは街に出るのは初めてだった。いつも車の窓から見ていただけ。アシュリンに案内してもらい、事件の現場にたどり着いた。そこには多数の人がいた。アシュリンは一人の記者に声をかけた。
「何があったんですか?」
「あそこに車がひっくり返ってるだろ。乗ってた金持ち殺して、荷物を盗んだらしいのさ」
「その人はまだ死んでませんよ」
「何で知っている?」
「私達も記者ですから」
「フン!金持ちが死んでたら面白い記事になったのにな」
「な…!」
ラズリが声を出そうとしたところで、アシュリンが止め少し人気の無い方に連れていった。
「何で止めたの、アシュリン!」
「お嬢様が怒る気持ちも分かりますが…これが現実です」
「…え?」
「見えますか、路地裏のあの少年。親もいなく、満足に食べ物も食べてません」
「……」
「そういう子や人が世の中にはたくさんいます。そうするとお嬢様のような金持ちを憎く感じてしまうのです」
「そんな…」
「お嬢様は今までクリスタルをアクセサリーにするようなお金持ちの方々しか知らなかった。あの子の事を知ることは出来なかった。世の中は分からない事が多い。だから、家族は分かりあって絶対に裏切ることは無いんです」
「……」
「まだ調べますか?」
「ええ、アシュリンの言ったことが本当かどうか」
(私の世界はせますぎた…)
「それでは、犯人について調べましょう」
人をかき分けて二人はひっくり返った車の中が見える所まで来た。
「どうやら、フォルドクリスタルを運んでいたんでしょうが…盗まれてますね」
「ええ…あ!お金のバッグがあるわ!」
「あれは手つかずですね」
「どういうこと?」
「犯人はクリスタル目当てで、盗むときに旦那様を撃ったんです」
「クリスタルは家にもあるわ」
「やはり犯人は叔父上様ではありません」
「…そう」
「帰りましょう」
二人は静かにその場を去った。
帰る途中二人はこんな話をした。
「フォルドクリスタルを持っているのは本当に一部の人間なのね」
「はい。やはりお金持ちの方々です」
「そう」
「…旦那様と叔父上様も最初は貧しい暮らしをしていたそうです」
「え!」
「そこにクリスタルを見つけて今の暮らしを手にしたそうです」
「そう。そうだったの…」
ラズリは何かを決心した。
屋敷に戻り元の服に着替えると母が慌ててやって来た。どうやら父が目覚めたらしい。父の部屋に入る。叔父もいた。だがラズリに叔父への疑いはもう無い。父はベッドに寝たままだったが、意識はハッキリしていた。
「心配をかけて済まなかった」
母は涙を流していた。父は叔父に問いかけた。
「運んでいたクリスタルは?」
「盗まれてしまった。だけどお金は無傷で後で警察から返されるらしい。兄さん無事で本当に良かった」
「そうか。ラズリとムーンにも心配させたな」
「お父さん話があるの」
「何だ」
「ムーンが会社を継ぐのは分かっているから、私を会社で働かせてほしい」
「急にどうした?」
「私、アシュリンと街に出たの。ごめんなさい。でも、そのおかげで知りたくなったの。私の世界を広げたい!」
「働いてどうする?」
「街のみんながクリスタルを見つける事は出来ない。でも、小さな幸せを見つけられる会社にしたい!」
「…ラズリの気持ちを初めて聞いた。分かった。まずは、色々な事を学びなさい」
「はい!」
母、叔父、弟は驚いていたが、ラズリの希望は世界の色を変える。そう父は感じていた。