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これがザマァ返し

 


 会場にいた全員がこちらを向く。


 おぉ、これだけの人間に注目されるのはビビるな。


「なんだ貴様は」


「初めましてルークス王子。アイン・フォールドです」


「アイン・フォールド? ステラの兄弟か? しかし、フォールド家は一人娘しかいないはずじゃ」


 思った通り、ルークスは頭を混乱させる。周りの人間も何言ってんだこいつ? みたいな顔でみてくる。


 それはそうだろう。公爵家であるフォールド家にはステラ・フォールド以外に子供はいないと公式発表されているのだから。


「えぇ。今日、今をもってフォールド家に婿入りすることになりました」


「アイン? お姉ちゃんは何も聞いてないわよ。それに婿入りって?」


 姉様も予想通りの反応でフリーズしてる。

 あぁ、だから面倒なんだよ。こっからの説明がさ。


「詳しい説明はワシがしよう」


 威厳たっぷりの声で会場入りしたのはカイゼル髭のフォールド家当主。オヤジ。


「ルークス王子。アインはとある経歴の出生のせいでその存在を秘匿されてきた」


「とある経歴?」


「そう、それは………」




 かつて、この国を治めていた前王。ルークスの祖父にあたる人物がいた。

 ルークスの父である現国王に王位を譲り、退位したあとはフォールド家が治める領地で余生を過ごした。

 そして、なくなる直前にとんでもない発言を残した。


「余に、息子ができた」


 初めは何かの冗談だと思って、フォールド家が調査をすると、前王が親しくしていた女性の一人が身籠ったというではないか。





 そう、それが俺。アインだ。


「前王の生涯最大の不祥事だからね。公にできなかったんです。そういうわけでルークス王子、僕はあなたの叔父です」


 そう言って俺は、生まれからずっと被ってきた金髪のカツラを投げ捨てる。

 その下から現れたのは、王家のみに受け継がれてきた銀の髪。


「な、な、なんだと……」


「このことを知っているのはワシと現国王陛下のみだ。表向きにアインは妻の実家の家名を名乗らせていたからな」


 あんぐりと口を開けて驚愕するルークス。一方で、姉様は理解が追いつかずに煙が出てる。

 姉様には、僕のことを周りに言い触らさないように言ってあったし、なんとなく貴族によくある複雑な事情とかぐらいにしか思ってなかったからね。


 まさか、王家の血筋とは思ってないみたいだったけど。


「だが、なぜこのタイミングで……」


「ルークス王子が婚約破棄したからさ」


 同い年で同じ時期に生まれた二人は一歳になる前に親同士の話し合いで婚約者になった。


 あとから生まれた僕は、姉様と婚約するにも、先に契約がなされていたせいで無理だった。


 姉様はルークス王子にベタ惚れだったし、ルークス王子もまんざらでもない様子だったため、両家とも婚約を続行。本人たちの意思に任せると。


 ところが、今年になってリリアが現れて、ルークスと恋仲に。

 婚約を破棄された貴族の令嬢なんて縁起が悪くて嫁の貰い手が失くなってしまう。


 フォールド家としては後継ぎ問題は僕を正式な養子にすればよかったけど、血の繋がった一人娘を未婚のままにしておくのは可哀想だ。


 しかし、僕と姉様を婚約させるには問題がある。


「死んだ妻の実家は貴族としての地位が低くなぁ。そんは家の養子と公爵家のステラだと釣り合わぬと家臣から非難があってな」


 だったら、本当は王家の人間だよ〜ってことを公開すればそれで済む。


 オヤジにはこの一週間、兄……と呼ぶには歳が離れすぎだから、普通に国王でいいか。

 国王と話し合いをして、僕のことを世間に公表する許可を貰った。

 最初は、難色を示した国王だったが、自分の息子が平民のリリアと恋人になって、今まで尽くしてくれた娘みたいな存在の姉様を捨てると話すと、すぐ許可が降りたらしい。



「というわけで、諸々の条件をクリアした僕は王家の人間としてフォールド家に婿入りすることになりました。


 これが、僕が考えた『ザマァ』返しの全貌だ。

 最初は姉様が振られないように必死になってたけど、乙女ゲーの事情を話したら衝撃の事実を聞かされてびっくり仰天。

 これは使えると思ったよ。


 これで、やることはやったよね。


「よし、姉様。一緒に踊ろうよ」


「で、でもアインのことは本当の弟みたい思っていたから」


 いつも自信に満ち溢れてた姉様の顔がとても珍しく朱に染まる。


「もしかして、姉様的には嫌だったりする? 家族と思ってら実は他人で結婚なんて迫られたら嫌だった……?」


「違うわ!ただ、頭の整理がつかないだけで」


「昔はさ、『ステラ。大きくなったら僕のお嫁さんになってください』って言ったら了承してくれたからてっきり今でも大丈夫かなって」


「それって………………」


 姉様は僕の顔をじっと見つめて、何かを悟った様な顔をするとフフッ、と可憐に笑った。


「なんだよ姉様。僕は真面目なんだよ」


「ごめんなさいアイン。お姉ちゃん、勘違いしてたみたいで」


 勘違い? 姉様が勘違いするみたいな設定ってあったか?


「………でも、婚約したらわたしたちは兄弟じゃないのよね。そうしたら、あなたはわたしのことをなんて呼ぶの?」


「そんなの決まってるよ」



 愛してるよ。ステラ。








 その日のダンスパーティーは学園の創設以来、一番の盛り上がりだったそうです。


 これからずっと一緒だよ。悪役令嬢さん。



 あぁ、ちなみに話の途中から忘れてられてたリリア。


「「ザマァみろ」」



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