正式版入りまーす。アイアイサー。
βテスト、大変らしいですね。壁にあたり続けるとかゲシュタルト崩壊するんですかね?
<<ワカメ>>が発表されてからというもの、βテスターの募集が行われた。総数にして5000人、これはどうやら日本サーバーに限ったことで海外サーバーは別にあるらしい。そもそも、VRMMOだからといって世界規模で運営できるとは予想がつかない。<<ワカメ>>の世界観は分かり易く、地球を下地にしてファンタジーを取り込んだ大自然が見渡す限りに広がっており、現代都市というものが一切ない。なので、世界を冒険するも良し、都市を発展させるも良し、大商人や大海賊をやるも良しな、思いつけばやったもの勝ちなゲームと宣伝されている。
「乙女は淑やかに階段を降り!!」
その女性は、髪を靡かせて敵の懐に潜り込み、重力魔法を相手にかけ体全体を使って頭上、天高くに打ち上げる。打ち上げられた相手は顎でもやられたのか白目をむいて気絶しているのか、ただただ重力に引かれて落ちることしかできない。
「さあ、乙女の大見せ場ですわっ!!」
大地を勢いよく踏みしめて飛び上がった女性は、相手を飛び越し体を捻って回し蹴りで地上に蹴り落とすことでさらに飛び上がり、自身に通常よりも20倍は強い重力をかけて急降下し始める。そして、敵を踏み抜きながら地上に落ち、
――――轟ッ!!!
腹の奥底にまで轟かせ『特殊状態異常:難聴』のデバフを撒き散らし、周囲を吹き飛ばしてクレーターを作り上げる程の豪快な着地をきめた。
「素晴らしき幕引きでしたわ!!」
敵は体力の全てを無くしポリゴン片として世界に散ってゆく。
―――パン、パン、パン
聞こえる拍手。それは今の一連の技を讃える音、敵を打ち倒した女性への称賛である。
「いやはや見事。いつにも増して動きにキレがあったように見えたぞ。」
「あら、猫嬢ではありませんの、極東から来るなんてどうかなさいまして?」
猫嬢と呼ばれるプレイヤー、名前だけ聞くと中国サーバーにいるプレイヤーに思えるが、実は日本サーバーの上位ランカーに名を連ねるプレイヤーである。ただし、大体どこで戦ってもうっかり環境破壊をしてしまうため、<<招く猫>>、<<誘う花魁>>、<<蠢く嵐>>、<<歩くスーパーセル>>、<<積乱雲が目印>>、<<猫神様勘弁してください>>、<<人は空を飛ぶんだな>>、<<自然界のただ一つの掃除機>>、<<やった今回は晴れだっ!!>>などなど日本では阿鼻叫喚の地獄を作っちゃった有名人である。本人は意外と悪気はないらしく、しかし、なまはげみたいなことをやっている。有名なプレイヤーで、たまにPKプレイヤーと間違われるがPKはやっていない。周りが飛んで落下ダメージで自滅しているだけの、迷惑なプレイヤーである。日本クレイジーの代名詞の一角を担っている。
「うむ、そろそろβテストも終わる頃だ、しばらくは会えんだろう?」
「ああ、そうでしたわ。もうすぐ正式版ですわね。」
「だから挨拶を、とな。中国、ロシア、エジプト、アメリカには会ってきた。」
「なるほど、ブリテンで最後、というわけですわね。」
「うむ、まさか上から降って来るとは思わなかったがな。」
「そういう技ですの。」
「そういう技なら仕方がないな。正式版になったらまた連絡する、グループ機能で設定してある故ログイン情報は見れるぞ。」
「わかりましたわ、お待ちしております。」
「ふふ、すぐにでもサーバーを越えて来てやろう。」
「ふふ、楽しみが増えますわね。」
「うむ、ではなジル。」
「ええ、また。」
――ログアウトします――
――YES――
『YEAH――!!今このチャンネルを見ているそこのキミたち!!HOTでBIGなお知らせだあぁぁ!なんとβテストが終わって正式版が販売されるぞ、待ちわびたかっ!!………OK!!そうだな、待ってねーやつなんているわきゃねーな!!さて、Warld Kaleid Makersをやるにしてもゲームディスクだけじゃ意味がねぇ。ヘッドギアのDiverもセットで準備してくれよなっ。始める前に注意しておいてくれ、各サーバーは最初のうちは行き来できねぇようになってる。どうやってサーバーを越えるかはゲーム内のヒントを見つけて攻略してくれよなっ!じゃ、σ(゜∀゜ )オレから言えるのはこれくらいだ、またなっ!!』




