悪役たちは、今日も夢をみる
真っ白な空間に、丸いテーブルが一つ置いてある。
そこには二人の人間が座っている。
座っているのは青年と、少年の二人。
二人の座る椅子の他に、もう一脚椅子が置いてあり、どうやら二人には待ち人がいるらしかった。
かつん、と、突然、ヒールの音が響く。
「ごきげんよう」
艶やかな黒髪、少しつり上がった大きな目。そして、紫色の派手なドレスの少女が、どこからともなく現れ、自然な動作で椅子に腰かけた。
「よくぞ来た、ミレア」
そういった彼は、黒く少し伸ばした髪をうしろに結んでおり、そして燃えるような赤い瞳を持つ、美青年。
何故か、他の二人にはない、悪魔のようなくるりと丸まったツノが頭に生えている。
服は貴族のように豪華で、しかし動きやすさを重視しているのか、じゃらじゃらとした装飾はないが、長く大きな真っ黒なマントをつけている。
「今日は遅かったですね」
そういう彼は、黒く短い髪の毛に、黒い瞳、そして顔つきは平々凡々とした少年だった。しかし顔の右頬のあたりに謎の模様が刻まれている。
着ているものは、少々ぼろく破れているが、紺色の学ランのようだ。
「今日は、授業中にイジメを辞めろだのなんだの泥棒猫とそのお仲間に言われ、碌に課題をできなくて……中々眠れなかったのです」
すっと少女が右手をもちあげると、何もない空間から紅茶の入った綺麗なティーカップが現れる。少女はそれを音もなく飲んで、ほぅ、と息をつく。
少女が机にティーカップを置いたのをみると、青年が口を開く。
「では、『悪役会』はじめるぞ」
今から始めようとしている会は、「悪役会」というようだ。
そのあとに青年がこう続けた。
「久々にお決まりのアレ、やるか」
にやり、と、青年がその整った顔に悪そうな笑みを浮かべる。
すると、少女がすっと椅子から立ち上がった。
「では私から行きますわよ。
『さらっと現れた女に王子を取られた挙句、やりもしないイジメの首謀者として悪役に祭り上げられる』悪役令嬢ことミレア・シンフォーデですわ」
ミレアが言い終わり椅子に座ると、入れ替わりで隣の少年が立ち上がる。
「じゃあ……僕は
『クラスメイトに化け物の囮に谷に突き落とされて彷徨いながら死にかけ、色々と吹っ切れて古の術を身に宿した』クラスメイトにとっての悪役になれたらいいな、四宮星太です」
少し恥ずかしいのか、星太は照れたようにガタッとすぐに席に着いた。
星太が座ると、今度は青年が右手をバッと上げて、マントを広げながら立ち上がる。
「そして俺は!
『某国によって自らの村を壊され、その国を滅ぼそうと魔族を集めている』
悪役の代表、魔王こと、グロウ・ド・ブラッドリーだ!」
「たまにやると吹っ切れて中々良いですわね」
「僕はちょっとはずかしいですけど」
ミレアとグロウはなんだか満足げだが、星太は困ったような表情をしている。
「じゃあ報告にうつるぞ」
「そうですわね。昨日は私からでしたから……昨日最後だったセイタからお願いしましょうか」
ミレアとグロウが星太の方を見て、聞く姿勢をとる。
「分かりました。今日は少しいい日でした。
今日は何とかクラスメイトに落とされた谷を抜けたんです!
けど、囮にされた僕は王国の勇者の証を腕に刻まれていないので、近くの村の人に信じてもらえず、古の紋が不気味だと石を投げられました。
とりあえず村に寄るのは諦めて、今日は軽く狩をして野宿しました。
……これぐらいですね」
「やっと抜けられたのですね!めでたいですわ!
けど、やっぱりその紋、嫌われちゃうのですわね。綺麗なのに」
「俺の城にある紋に似ている。もしかしたらセイタは魔族側の古代術式も教えれば使えるかもしれんな」
「また今度教えてください」
「ああ」
「では次は……私は最後でいいですわ」
「そうか。では報告するぞ。
今日は王国に攻め入るための準備を行っていた。テイムした魔物たちも順調に育っている。
魔物たちには、殺さずに噛みつくことで相手を眠らせることのできる、人間にのみ効く魔法薬を飲み水にして育てている。最近ひとかみで人間が30分ほどの眠りにつく濃度まできた。
基本的に人は殺さずに、王国を乗っ取る形を目指す。
実行にはもう暫くは時間がかかる。
今日はこんなもんだな。」
いかにもつまらなそうな顔でグロウが報告する。動きがないのが残念だというのが、顔に現れている。
「最後に私の報告をさせていただきますわね。
今日は先ほど言っていた授業中のことのほかに、目の前でワザワザいちゃついて王子に馬鹿にしたような顔で見られましたわ。
別にもうあのような馬鹿に興味はありませんのに。自意識過剰なナルシスト王子にはうんざりですわ。
他には……なんだが最近裏であの取り巻き連中が動いている感じがしますわね。私を追い出そうとしてるのでしょうけど……私は今日はこれぐらいです」
「相変わらず、お二人は大変そうですね」
「セイタの境遇もかなりキツイがな」
「悪役という位置の割に、私たちって散々な目にあってますわね」
ミレアの言葉で、三人が一気にため息をついた。心なしか、三人ともの目が死んでいた。
「私たち、本当に同じ世界に本当に存在している……んですわよね」
「色々と確認しただろうが」
「僕は谷に居ましたから、参加できませんでしたが……。お二人の確認では、世界の国々も一致したんですよね?」
「ええ。……けど改めて、『夢』と『現実』がリンクしてるのって、なんだか不思議で」
この真っ白な空間は、三人の見ている「夢」だった。
同じくらいに眠ると、三人はいつも繋がった夢を見た。
「これが始まったのは、ちょうど例の泥棒猫が来たくらいからでしたわ」
「俺は勇者……というか、セイタの糞クラスメイトの奴らが現れたくらいだな」
「僕はこの世界に来た時から……ちょうど同じ時期なんですよね。改めて不思議ですよね」
「とりあえず、セイタが谷から出られたなら、明日は何か目印になりそうなものを教えろ。俺が迎えに行く」
「やっと三人で会えますわね!せっかくですから、セイタはうちの屋敷で預かりますわ。セイタの糞クラスメイトのいる国の隣国ですし、ちょうど良いですもの。
うちの国は魔族とは友好関係を結んでますし、グロウも来れますわ」
「なんだか、オフ会みたいですね」
ふふ、と星太が笑う。ミレアとグロウは首を傾げて、その聞き覚えのない単語を脳内で探す。
「すいません。僕のいた世界の言葉で、話したことはあるけど、会ったことのない人と会うときに使うんです」
「じゃあ、明後日は悪役会の第一回おふかいの日ですわね!」
ミレアが嬉しそうに微笑む。
ミレアは、今、周りに信じてくれる人もおらず、弟も泥棒猫に夢中で、孤独だった。
星太は、クラスメイト全員から裏切られ、そして顔に刻まれたそれによって世の中からも疎まれ、孤独だった。
グロウは、仲間に恵まれてはいたが、魔王として、どこまでも冷酷でいなければならなかった。それは、孤独に等しかった。
「おふかい、楽しみだな」
グロウのその言葉とほぼ同時に、白い空間に黒いヒビが入ってゆく。
「朝が来ましたね」
ビシビシ、と黒い線が広がり、机とティーカップにも小さなヒビが入り出す。
「グロウ、明後日、スレイディア国のシンフォーデ家に、ちゃんと星太を連れて来ないと、許しませんわよ!」
「分かってる!だいたい、まだ星太とも落ち合ってないのにうるさ――――」
―――バリン。
グロウの言葉を遮るように、大きなガラスが割れたような音がなって、白い空間が割れて、消える。
そして、三人は目を覚ました。
今日も、悪役たちは面倒な現実に向き合っていく。
明後日の「おふかい」を、仲間を、心の支えにして。
三人は協力してお互いの希望を叶えます。
魔王とチート化した高校生が、悪役令嬢を手伝ってヒロインざまあをして
悪役令嬢と魔王が、高校生を手伝ってクラスメートざまあをして(ただし殺さない)
そして三人で、となりの悪国をざまあします。
ざまあトリプルで平和な世界になる予定です。
続くかは分かりません。書きなぐりで短くて申し訳ない




