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92話

 吸血樹の実がなった人には生命の鼓動が感じられなかった。

 ルシフェルの勧めで僕が吸血樹の実を食べて、食べた悪魔にそのエネルギーを循環させるとわずかだが、生命の鼓動を感じることができた。

 蘇ったのだ。

 ただとても不安定な状態だ。

 無理に循環させたせいかもしれない。

 今度は優しく循環させてみる。

 少しだが、マシになった。

 これで、治せることが、わかった。

 ただ、全てのエネルギーを返せないのが残念だ。


 いつのまにか気が付いていた、アリトンやアイク達が、


 「まさに世界樹の化身の奇跡だ」


 と言ってくれるが、完全に回復できたわけじゃない。

 それでもなくなっていた命の鼓動が戻っただけでも今は良しとしよう。

 僕は、それから実がなった悪魔達から実を食べてはエネルギーの循環をして、蘇らせていく。

 少量ながら僕自身にも彼らの命が流れ込んできている、これを他の悪魔達に使えば全員を助けられるかもしれない。


 「動けるものは順次この人達を運び出してくれ」


 僕は治療を続けながら言った。

 すべての実がなった人を助け終わったころには朝が来ていた。

 流石に疲れた。


 「ユキ様少しお休みになってください」


 というアイクの言葉に甘えて、休ましてもらう事にした。


☆★☆


 ユキが世界樹の化身であることは、報告では聞いていたルシフェルも目の前で死んだ者たちが蘇える様を見ては、ユキが本物の世界樹の化身であることを認めざるを得なかった。

 確かに他の領地を見て回って自然が回復しているのを見てその可能性が高いとは思っていたが、やはり実際にみると信じてしまう。

 この先魔界の緑は回復していくのだろう。

 魔界の緑は地上からのエネルギーの循環で保てる事も聞いた。

 千年樹がある限りだが、その植林を怠う事無くやればもんだいはない。

 だが、せっかくユキ殿とえた友誼をこれで終わりにしていいものだろうか?

 魔界と地上でうまく付き合っていけないか模索する必要がある。


 「アイク、私は今、迷っている。このままユキ殿を地上に帰していいものかを」


 「ルシフェル様、私はユキ様と旅をして気づいたことがあります、ユキ様は地上に返すべきです」


 「それは何故だ?」


 「彼は、優しすぎる。きっと地上に返してもまた我らが助けを求めたら助けにきてくれるでしょう。だから約束を守ってください。それに十分に魔界の緑も復活しました。これからは徐々に緑も増えて行く事でしょう」


 「そうだな、約束通り、ユキ殿には地上に帰ってもらおう。いつでも会いに行けるのだから」


☆★☆


 目が覚めると、もう昼をすぎていた。

 僕は軽く食事をとり、吸血樹の患者の元に移動する。

 そして、治療の開始だ。

 少しずつだがみんな回復していっている。

 このまま順調に行く事を願う。

 いち早く回復したのは、アリトンの娘さんだった。

 今では、自分から僕の手伝いを申し出てくれているけど、特に彼女にしもらう事はない。

 それでも領主の娘が見舞いに来てくれるのありがたいのだろう、領民からは好評だ。


 「そういえば、ユキ先生は私の名前知ってますか?」


 はて?

 そう言われれば聞いたことがない。

 彼女が、あまり長い時間喋る事が出来なかったこともあるが。


 「そう言われれば、常にアリトンさんの娘さんとしてか呼んでなかったね?」


 「やっぱり。私の名前はアリーシャです。みんなアリーって呼んでます。だから先生もそう呼んで下さいね」


 「アリーだね。覚えたよ」


 「先生は治療が終わったら地上に帰るんですよね?」


 「ああ、そうだね。家族が待っているし、僕にも娘がいるんだ。娘に必ず帰るって、約束もしてるしね」


 「さあ、今日の治療は終わりだ。帰ろうか」


 そして僕とアリーは帰宅するのが日課になりつつある。

 治療が始まって早2ヶ月ようやく吸血樹による最後の患者の治療が終わった。

 あとは、ルシフェルが待つ、領地へと帰るだけだ。


 「いろいろと世話になったな、ユキ殿」


 「こちらこそ、長い間お世話になりました。アリトンさん」


 「先生、たまには魔界にも遊びに来てくださいね」


 「それは難しいかな、僕には魔界と地上を行き来できる能力はないからね」


 「アリー。あまりユキ殿を困らせるな。それでは、達者でな」


 「ええ、アリトンさんもアリーもお元気で」


 こうして僕は地上に帰るためにルシフェルの待つ領地へと向かった。

 帰りは順調に進み、途中で見つけた村や町の緑化活動もしながらのいつもの旅路となった。

 そしてついにルシフェルの領地へと着いた。

 これでようやく帰れる。

 その気持ちでいっぱいだった。

 謁見の間ではルシフェルがすでにまっていた。


 「ユキ殿、此度の働きには、私も満足している。できればこのまま魔界に留まって欲しいくらいだよ」


 「それはできません。僕には地上に残してきた者たちもいるので、やはり帰りたい。約束は果たしました。僕を地上に帰してください」


 「やはりか。アリトンの一件で特別に報酬を用意すると言っていたのを覚えてるか?」


 「ええ、覚えていますよ。でも特別に報酬なんていりませんよ」


 「そう言うと思ったぞ。だからこちらで用意した。悪魔召喚の能力だ」


 「悪魔召喚? しかし悪魔は地上に出れば、瘴気をまいてしまうでしょ?」


 「そこは、安心して欲しい。瘴気をまき散らすのは地上のエネルギーを集めるための悪魔の能力の一つに過ぎない。だから悪魔を召喚しても、瘴気が出ることはない」


 世界樹が悪魔召喚なんかしていいものだろうか?


 「僕にその悪魔を召喚して、使いこなせますか?と言うか誰を召喚することになるんですか?」


 「先ほども言った通りだが、これは呪文で呼び出すものではなく能力だ。ま、平たく言えば我々悪魔と契約をして、いつでも呼び出す事ができる」


 「契約ですか? その代償は?」


 「代償はすでに貰っている。魔界の緑化にアリトンの一件もそうだ。だから特別何かこちらから要求することはない」


 「じゃあ、誰と契約するんですか?」


 「それは、私だ、と、言いたいところだが、何せ私も忙しい身なのでだ、アイク達護衛のメンバーが召喚の契約をしてもいいと言ってくれている」


 それなら、安心かな。

 アイクさん達とはだいぶ仲良くなれたし。

 でもそうそう召喚することは、ないと思うんだけど。


 「確かにいざという時に戦力になるのは心強いですけど、そうそう、召喚することにはならないとおもいますよ」


 「なに、構わん、雑用でもなんでも押し付けてやれば問題はないし、話し相手にもなってくれるぞ」


 軽いな悪魔召喚。

 そんな気軽に使っていいもんなのだろうか?

 でも、使いようによっては、鍛錬の練習相手にもなってくれるか。

 

 「わかりました。そう言う事なら、ありがたく契約させてもらいます」


 「では、利き腕をだしてくれ」


 そう言われて僕は右腕を差し出す。


 ルシフェルは何か呪文を唱えて僕の右腕に力込める。

 特に痛みも感じない。


 「さてこれで、終わったぞ。暇な悪魔がユキ殿に応じて召喚されることになる」


 「ん? 暇な悪魔? さっきはアイクさん達って言ってませんでしたか?」


 「基本的にはアイク達護衛のメンバーが召喚される。たまには私も地上にでたいからな、私の分も刻んでおいた」


 悪魔王ルシフェルまで呼び出す世界樹がいるか!

 てか、さっきまで、忙しいって言ってなかった!?


 「おっ、驚いているな。私もいつも忙しいわけではないからな、たまには地上にでたいのでな」


 思いっきり自分の為だった。

 もうどとでもなれ。


 「さて名残惜しいが、そろそろゲートを開こう」


 そう言うとルシフェルはゲートを開いた。


 「では、またな。世界樹の化身、ユキ殿」


 「ええ、またいずれどこかで」


 こうして僕はゲートをくぐり、魔界から地上に帰った。

 これで、魔界も地上にも平和が戻った事だろう。


 上手く家の前にゲートが開き、地上に帰ってくることができた。


 「パパ!」


 とアウラが飛びついてくる。

 僕はアウラを抱きしめる。


 「お帰りなさい」


 「ただいまアウラ」


これにて、完結とさせて頂きます。

もし地上に帰ってどうなってん?

とか頑張って続きを書くんだ!

と言う方が居れば、応援コメント下さい!

続きを書くかもしれません(汗


それと新作で『冥王様の旅路 (仮)』も書き始めました。

そちらも一読いただければ幸いです。

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