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89話

 サイクロプスとドルイド達が守ってきた、千年樹を狙うアリトンさんの関係がどうも気になる。

 そこで、ルシフェルさんは無暗に行動をとるなと前触れを出してるはすだし、僕が緑化活動をしているのは、すでに噂にもなっているはずだ。

 何より僕が来ることを知っているのに、なぜ、他種族の緑を狙うのか。


 「僕も聞きたいことがあるんだけど。なぜアリトンさんと争っているの?」


 「それは、多分ですが、我らドルイドを狙ってのことでしょう。我らはユキ様には及びませんが植物を操る力がありますので。ユキ様もアリトンの領地に向かわれるなら気を付きなさって下さい」


 そんなに領地の自然が大変なことになっているのだろうか?


 「アイクさん、アリトンさんの領地はそんなに大変なことになっているの?」


 「いえ、そこまでひどい状態にはなっていないと思います。他の領地と同程度と窺っています」


 これだけ堅牢なサイクロプスの里を落とすのはいくら悪魔でも中々大変だろう。

 そんな危険をおかしてまでドルイド達を狙う理由がわからない。

 とにかくアリトンさんの領地に行って確かめる必要がある。


 「よし、アリトンさんの領地に急ごう!」


 こうして、寄り道は終わり。

 僕達はアリトンさんの領地に向かう事にした。

 出来れば、サイクロプスの里のドルイド達に手を出さないように、してもらえないか相談だな。

 何泊かの野営を終えて、ついにアリトンさんの領地にたどり着いた。

 門番の衛士に来たことを伝え、領主のアリトンに会う。


 「遠路はるばるご苦労だった、ユキ殿。噂はこちらにもいろいろ届いている」


 「初めまして、アリトンさん。いい噂ならいいんでが」


 「はは、そんなに気負う事は無いぞ。オリエンスから緑の悪魔の話しは手紙にてもう知っている」


 やっぱりその噂かよ!

 全然よくない噂だよ。

 また、拡大解釈されてないだろうな。


 「手紙に何が書いてあるのか気になるところですが、僕はこの領地の緑化に参りましたので、ご安心ください。それ以上の事は致しませんので」


 「それでは、困るのだよ、ユキ殿。領地の緑化活動はもちろんして頂きたい。がそれ以上にわが娘の呪いを解いて欲しい。あの忌々しいドルイド達にかけられた呪いだ」


 ドルイド達にかけられた呪い?

 そんな話は聞いてないぞ。


 「とにかく、娘さんの容態を見せてもらえますか?」


 「わかった、世界樹の化身のユキ殿なら何かわかるかもしれない。頼む。」


 僕はアリトンさんに連れら娘さんがいる部屋に案内される。

 扉を開き僕は息を吞む。

 そこには体を植物に侵されている少女がいた。

 明らかに奇病だ。

 呪いなんかじゃない。

 僕は、彼女に近づき彼女の体半分を占めている樹に触れる。

 これは吸血樹といって、ゲーム内でも厄介な奴だった。

 周りの栄養を吸い取り自分だけが成長する。

 吸血樹が育つと周りの自然が枯れ始めるのだ。

 それが悪魔に寄生している。

 吸血樹の状態を調べると大分彼女の体内に根を張っている。

 枯らすの容易いが、彼女の負担が大きいだろう。

 これは根気がいる作業になりそうだ。

 左半身はまだ無事なことがわかるが、こちらも時間の問題だろう。

 すると娘さんが目を覚ました。


 「お父様、この方たちは?」


 「心配するな、新しい医者だ」


 「そうですか、先生よろしくお願いします」


 「ああ、よろしくね」


 「じゃあ、簡単に治療を始めるけど、多分激痛が伴うかもしれないから、覚悟して欲しい」


 「っ!?治るのか?」


 「ええ、治せます。ただし時間がかかるし、娘さんの体力次第の所もある」


 「では、すぐにでも取り除いてくれ」


 「先ほども言いましたが、時間をかけないと娘さんの体力が持たない。まずは少しづつです」


 僕は吸血樹と娘さんの両方に触れる。

 吸血樹には根を少しずつ枯らしていき、娘さんには治癒の力を使っていく。

 体内で起こっていることだ、娘さんは激痛に苦しむ。


 「っうううう!」


 あまり無理はできない、ある程度の吸血樹の根を枯らした時点で治療を止める。

 彼女の体内に入り込んでいた根の後の治療に治癒の力を再度使う。

 これで、少しはマシになった。

 後は彼女にも薬草茶を用意して必ず飲むように言う。


 「これは、僕の特性の薬草茶だ。味はおいしくないが、しっかりと飲むんだよ」


 「これで、娘は助かるのか?」


 「まだですよ。あと何回もしなければならない。今日はここまでです。取り敢えず、街の緑化活動もしなければなりませんし」


 「やはりこれは、ドルイド達にかけられた呪いなのか?」


 「違います。ドルイド達は関係ない。これは極めて稀な奇病です」


 「では、ドルイド達は関係ないというのか?」


 「関係ありませんね。ここに来るまでにサイクロプスの里にも立ち寄ってきましが、彼らではない事は明白です。アリトンさん、サイクロプスの里への攻撃を止めて頂けますか?」


 「今はユキ殿の事を信じよう。娘を頼む」


 そう言って、アリトンは部屋から出て行った。


 さて、僕らもやることがある。

 街の緑化活動もしないと。

 それから数日はパイモンさんの領地と同じようにアリトンさんの衛士を借りて緑化活動をして、アイク達は鍛錬に励む。

 僕はその合間にアリトンさんの娘の治療も進めていく。

 しかし、吸血樹は通常なら大地に根付く。

 それが、悪魔に根付くなんてまさしく奇病だが、なぜこんなことになったんだろうか?

 原因が必ずあるはずだが、自然にこうなったとは信じられない。

 誰かに種を飲まされたのか、間違って傷口から入ったのか?

 まず飲まされたのならもう全身にまわっていてもおかしくない。

 て、事は傷口から入った事になる。

 吸血樹は周りの栄養を吸い取って成長し最後には実をつける。

 その実は辺りの力を蓄えたエネルギーの塊だ。

 もし悪魔のエネルギーの実がなったらそれは、瘴気の塊か魔力の塊だ。

 アリトンの娘は高位悪魔の血筋だ。

 さぞ大きな力が眠っているに違いない。

 それを狙っている者がいても不思議ではない。

 偶然にしては出来過ぎているきもする。

 僕の考えが間違っているといいんだけど、とにかく今は、彼女の治療が先だ。

 もし犯人が居たら必ず僕の邪魔をしてくるはずだ。


 「アイク達だけにでも話してくかな」


 翌日、緑化活動を行う前にアイク達に僕の考えを話した。


 「それが、本当なら内部の者の犯行でしょう。それとなく彼女が奇病にかかる前の状態を探っておきます」


 「うん、よろしくね」


 密偵の真似事は僕にはあまりできないし、街の緑化活動もある。

 後はアイク達に任せよう。

 僕は、いつものように朝に彼女の治療にはいる。

 だいぶ良くなってきている。

 

 「先生、わたしは治るの?」


 「ああ、もちろんだよ。僕が居る限り必ず治してあげるよ。病気になる前にケガとかした覚えはない?」


 「ケガですか?そういえば、一度右腕をケガをしました、その時は屋敷の医者に診てもらいすぐに完治しましたよ」


 うん、多分それだ。

 彼女は右半身から徐々に侵食されている。

 その医者が怪しいな。

 でも確証がない。

 一度会って話してもいいかもしれない。

 昼からは、緑化活動に出かける。

 今日もアイク達の代わりに衛士さん達を連れて活動する。

 夕方になり今日最後の緑化をしているところだった。

 身なりからして怪しい人達が現れた。

 全員が覆面をして武装している。


 「何者だ!我らをアリトン様配下としっての狼藉か!」


 衛士の人が叫ぶが刺客の者は何も語らず襲い掛かってきた。

 

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