86話
街を侵食した植物を片付けるのに2週間かかった。
何せ家と言う家に根が張り付いていて、取り壊すことになった家もあったからだ。
だが、人的被害は奇跡的にゼロで済んで本当に良かった。
あの一軒いらいオリエンスさんからは緑の悪魔の称号を頂きました。
世界樹の化身なのに。
そして、順調に街の緑化計画も進み後はオリエンスさんにお任せだ。
後変わった事といえば、アイク率いる護衛のみんなが何故かウッドゴーレムと稽古がしたいと言い出したことだろうか?
あの一軒以来、気にしてくれているみたいで、みんなの本気度がすごい。
たまに僕も混ざりたいと言ったら、まだ駄目だと言われた。
何故に?
そうこうしている内に出発の日がやってきた。
「世話になった、ユキ殿、次はどこの領地にいくのだ?」
「次はたしか、パイモンさんの領地ですね」
「そうか、では、この手紙をパイモンに渡してくれ。奴なら必ず協力してくれるはずだ」
「手紙ですか? わかりました、必ずお渡します」
「達者でな」
「オリエンスさんも」
こうして、僕たちは、次の領主のパイモンさんに会う事になる。
馬車で約4日の距離だ。
途中で、村や町があれば、緑化していくことになるだろうから、実際にはもっとかかるだろうけど。
1日目は野営だった。
野営中は流石に稽古もお休みだ。
野営と言えば、僕の野菜スープも最近では定番になりつつある。
みんな喜んでくれるからね。
2日目は朝から特に問題もなく、昼前にはちょっとした町に着いた。
ここでも緑化活動をするために町長と会って話しをする。
すでにここも前触れは来ているみたいで、問題なく緑化活動ができる。
僕が活動している間、町の衛士さんが変わりに護衛に付き、アイク達本来の護衛達はウッドゴーレムと模擬戦中である。
ある意味仕事を放棄している気もしないではないが、本人たちも僕も了承しているので特に問題はないはず。
町の衛士さん達も緑化に協力してくれたので割とスムーズに行動できた。
畑を耕し時の反応や、井戸を見事掘りあてた時の周りの反応はいつでもなんだか気持ちいい。
多分、調子に乗った僕はどや顔になってると思うけど。
ここでは、1週間の滞在になった。
基本的な事は、二日で済んだが、アイク達の鍛錬にも費やしたからだ。
僕は僕で次に荒業を使ったときにちゃんと意識が保てるように瞑想したりしたがついつい他の事に気を取られて上手くいってない。
まず意識的にちゃんと木々を育てることはできてる。
種子を改良することもできる。
そこから先のウッドゴーレムを生み出して、纏い。
樹木を1本だけ生み出そうとすると2,3本は生れてしまう。
このコントロールさえできれば、意識が飛ぶこと無くできるはずだと信じて練習中だ。
まだ、木竜の姿は魔界に来て見せてない。
たぶん、木竜姿でしたら、もっと大変なことになるだろうし。
さて、ここから先は村や町がなく、野営をしながらの約2日間の旅だ。
1日目の野営の時に自分の訓練を再開する。
生み出す、ウッドゴーレムは1体それを纏うそこから根を張り詰め樹を1本だけ生やすイメージをする。
イメージするのは合っても困らない千年樹だ。
1本だけ生えてきたと思ったら、追加で2本合計3本生やしてしまった。
「ユキ様何事も練習です。諦めないでください」
とアイク達護衛の皆がうんうんと頷いてる。
「そうだね、あと何回かやってから休むよ」
結局その日も成功しなかった。
2本までは何とか行けるんだが、1本だけが難しい。
明日の夕方には街に着く予定だから、今日はこの辺にしておこう。
次の日は朝から出発して何事もなく夕暮れ時にはパイモンが治める領地に着いた。
ここでも前触れが来ているので、すんなりとパイモンに会う事ができた。
「初めまして、パイモンさん。世界樹の化身のユキと申します」
「こちらこそ、よろしく。ユキ殿」
「オリエンスさんから手紙を預かってますのでどうぞ」
「オリエンスから? なんだろう」
その場ですぐ読み出したパイモンさん。
なんだか顔色がどんどん悪くなっていく。
「あの、大丈夫ですか?」
「は、はい!大丈夫ですよ!なんでもありませんよ!ほらお疲れでしょう今日はゆっくりとお休みください」
パイモンさんは執事さんやメイドさんの方をみて、
「ほら、お前たちユキ殿がくつろげるように早く部屋に案内しないか護衛の皆も今日は休んでいいから、でもアイクは残ってね」
とせかされるように部屋へと案内された。
「御用の場合はベルを鳴らせばすぐにきますので」
と、執事さん。
☆★☆
みんなが退室した後の部屋にてパイモンとアイクの2人だけが残っていた。
「オリエンスが嘘つく理由はないが、確認だ。ここに書かれていることは事実か!?」
「はぁ、書かれている内容は私も知りませんのでなんとも」
「だから、オリエンスの領地で起きた事は全て真実かを聞いてるの!」
「そのことでしたら、真実です」
「なんでそんなやばい奴が世界樹の化身なんてやってんの!? 内の領地も同じ運命をたどるのかなぁ。勘弁してくれよ」
「ですが、ユキ様は寛大なお方です。オリエンス様の領地での事は事故みたいなものでして」
「寛大な奴が、領地の1/3も壊滅に追い込むの!? それのどこが事故だよ! ちゃんとやる前に街を飲み込むって宣言したって書いてるじゃん!」
「そこは、オリエンス様と話しがうまくいかず、信じてもらうために仕方なく」
「話しが合わないだけで、街を飲み込んでしまう奴なんていないわ! それに最終的に戦闘になって全員が生け捕りになったって書いてるんだけど! オリエンスを生け捕りにしてるだけで超怖いわ! それにアイク達まで生け捕りになった書いてる。敵味方の判別もできてないじゃんか!」
「しかし、ユキ様はちゃんと目覚められました。我らも捕らえられただけで人的被害はゼロだったのです」
「とにかく内の領地でそんな真似されたら困る、何をすればいいのさ」
「パイモン様、緑化活動に協力していただければ、それで大丈夫です。何人かの衛士をお貸しください」
「わかった、それで領地の安全が守られるな、悪魔御供になるようにその衛士達には言っておくよ」
☆★☆
次の日の朝、朝食をとると、早速、緑化活動に移る。
ここの領主のパイモンさんはものすごく協力的で、全面的にバックアップしてくれるみたいだ。
でもなぜか衛士さん達はものすごく緊張してけるけど。
やることは、いつもと同じで畑を耕して、腐葉土で栄養を作る。
水脈を見つけて、井戸を掘る。
街の近くに千年樹を植える。
街路樹にも今回は木を植えてみた。
パイモンさんのおかげで、みんな協力的で、助かる。
作業をしていると、こちらを見ている子供に気が付いた。
僕は笑顔で手を振ると、子供は僕に向かって石を投げつけつて来た。
僕はそのまま固まり、顔に石が当たる。
もちろん子供の投石ぐらいでダメージはは入らない。
「この緑の悪魔め、父ちゃんを解放しろ」
解放って言われても、誰も捕えていない。
すると衛士の一人が
「あっ!この馬鹿!」
と子供の前まで行って僕から子供を守るように立つ。
「申し訳ございません、子供のしたことです。どうかお許しを」
と頭をさげる。
何故僕が、悪者みたいな展開になっているの?
「大丈夫、気にしてませんよ。何故、僕がお父さんを捕まえてるっておもったのかな?」
「みんな言ってるぞ、オリエンス様の領地を壊滅に追い込んだって!だから父ちゃんを人質に取ってるんだ」
「待って、オリエンスさんの領地は壊滅してないし、君のお父さんを人質にも取ってないよ」
何故そんな話しになっているのだ。
聞けば噂が噂をを呼んで話しがどうも大きくなってるみたいだ。




