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85話

 ついに街を緑で飲み込む日がやってきた。なるべく避難勧告はしたがほとんどの人が信じてくれなかった。

 まぁいきなり言われても信じらないとは自分でも思っていたけど。

 約束通りオリエンスさんも同行してくれることになったのはいいけど、なるべく人的被害を出さないように集中しないといけない。


 「それじゃあ始めますよ。アイクさんもしもの時は僕を攻撃して下さい。それで目が覚めると思いますので」


 「なっ!ユキ様に攻撃を? そのような危ない技なのですか?」


 「言ったでしょう。荒業だと」


 「ふん、その時はこのオリエンスがお前事切りふせてやる。なに、心配するな手加減はしてやる」


 「ではその時はオリエンスさんにお願いしますね」


 僕は集中してウッドゴーレムを10体作成する。


 「っ!これはアマイモン様の時の。しかも10体も」


 とアイクさんは驚いている。


 僕はそのうちの1体を体にまとう。

 そして、10体すべてとつながる。

 僕は10体全てのあしもとから根を張り巡らせ街へとむける。土のエレメンタルを召喚し、邪魔な岩石を破壊、耕し、水のエレメンタルを召喚し水分をし補給し、根から新たに生えてくる木々に世界樹の力を分け与えていく。

 もっと、もっと、もっと。

 ここを僕の大地にするために。

 世界樹の神聖な場所にするために、王が住まう緑が蘇えるように。


☆★☆


 あっという間にアイクたちの居る場所は森になってしまった。

 誰もが息を飲み、誰もが動けなかった。

 森の侵食は進みやがて街にまで到達した。

 根はあちこちに張り巡らせ家々を飲み込んでしまう。

 しかし不思議と、家をなるべく壊さないようにと侵食していくが根は家の中にも侵食してくる。

 人々は急いで外に出て昨日の避難勧告を思い出す。

 あれは事実だったのだと。


 街が侵食されていくのを見たアイクはユキに呼びかける。


 「ユキ様!もう十分です!おやめください!」


 それでもユキは、世界樹の化身は止まらなかった。


 「オリエンス様、もうこれでわかったでしょう、早くユキ様に目を覚まして頂かなければ本当に街全体がユキ様に飲み込まれしまいます」


 オリエンスもまた、気が動転していたのか、アイクの言葉でやっと我に返る。


 「ユキ殿!すまなかった。だからもうやめてくれ!」


 オリエンスの言葉でも世界樹の化身は止まらなかった。


 意を決したアイクは護衛部隊に命令を下す。


 「全員、抜刀! ユキ様を起こす! 死ぬ気でかかれ!」


 それは本来の護衛の仕事ではない。

 護衛対象を攻撃するなど。

 ユキと共に旅を共にしてきた護衛隊の全員が歯がゆい思いで護衛対象のユキに切りかかる。

 が、それまで止まっていた9体のウッドゴーレムが突如動き出し、ユキを守りにでた。

 それはまるで、王を守る守護者のようだった。

 護衛達も屈強な騎士だ、おいそれと負けるはずがない。

 しかしウッドゴーレムの蔦での攻撃で中々前に進むことができなかった。


 「オリエンス様、どうかご助力願いたい」


 アイクの言葉でオリエンスとその護衛達もユキのウッドゴーレムに立ち向かう。

 

 「明らかに、アマイモン様との戦闘の時より強い。どうなってるんだ!?しかし数は此方が有利」


 「何!? このウッドゴーレムはアマイモンとも戦ったのか!?」


 「その時は1体だけで、ここまでは強くなかったはずです」


 「ちっ!少し熱いが許せよ。炎よ我が敵を燃やし尽くせ」


 オリエンスが魔法で炎を呼び出しウッドゴーレムたちを焼き尽くそうとする。

 ウッドゴーレムはとっさに蔦で防御する。

 燃え尽きた蔦の中には一体だけだ焦げ付き炭になったゴーレムがいた。

 

 「くそっ!仲間を犠牲にしやて他を助けたのか。厄介な事をする」


 「それでも後8体です。この調子で行けば、ユキ様に届きます」


 「これは、益々、手加減どころじゃなくなってきたな」


 するとウッドゴーレムの4体の動き急に止まった。


 「なんだ半分動かなくなったぞ、今のうちに」


 それはユキが訓練でもよく使った根を張りめぐらせ、地面からの根っこによる攻撃だった。

 

 「ぐふっ!」


 護衛の何人かが地面からの攻撃にうずくまる、根っこは相変わらず尖りはせず、相手を殺さないように丸くなっていた。


 「なるほど、動きの止まった4体が後衛ってことかウッドゴーレムのくせに連携をとるとは」


 「オリエンス様感心してる場合ではありません、私達が時間を稼ぎますので、先ほどの魔法をもう一度お願いします!」


 「わかった、もう一度行くぞ!炎よ我が敵をっ!」


 その時だ、うずくまったていたオリエンスの護衛の騎士が蔦にからめとられウッドゴーレムに縫い付けらたれように捕らえられたのだ。


 「世界樹の化身の守護者様はなかなかえぐい真似してくれるじゃないか」


 アイクは隙をみて騎士を拘束している蔦を切り落とした。


 「今です!」


 「よくやった、アイク!炎よ我が敵を燃やし尽くせ!」


 「これで2体目。後7体だ行けるぞ。みんなユキ様を叩き起こして差し上げろ!」


 「「「応!」」」


 戦っている間も世界樹の化身の侵食は止まらなかった、すでに街の1/5が侵食されていた。


 オリエンスとアイク達は順調にウッドゴーレム達を1体、また1体と倒し続けていた。

 そして残り3体になったとき、それは起こった。

 ユキを中心に育っていた大きな樹木達から順番にトレントととして、目覚め始めた。


 「まさかここにきて形勢を逆転されるとは」


 「流石にこの数は相手にするのは厳しいですよ、ユキ様」


☆★☆


 ユキは夢を見ている感覚だった。

 世界をきれいに緑を増やさないと、ここは、緑が少なすぎる。

 そうだ大森林のように大きくしよう。

 そうすれば、ここも過ごしやすくなる。

 きっと動物たちも帰って来てくれるだろう。

 誰もいないのは寂しいからね。


 「パパ!」


 「アウラじゃないか、久しぶりだ。元気にしていたかい?」


 「うん、元気にしてるよ。それにパパが帰って来るまで、いい子にしてる。だから、パパも早く帰ってきて」


 「何を言ってるんだ、パパはここにいるよ」


 「でもみんなパパの帰りを待っているみたいだよ、見て」


 アウラが指を指した方向をみた。

 そこにはアイクさんに護衛のみんなが蔦に絡め取られていた。

 それにオリエンスさんまでもが捕らえられている。

 みんなどうして?

 そうだ、思い出した。

 荒業を使うって言って、それから……。

 やばい、早く起きないと。


 「アウラありがとう、わざわざ起こしに来てくれたんだね。パパも頑張っていずれ地上に帰るからね」


 そう言うとアウラ笑顔になって消えて行った。

 さて、目覚めますか!


 「っ!」


 目覚めた僕は世界樹の力を止める。

 すると街への侵食も止まった。

 僕は、ゴーレムの纏いを解いた。


 「遅くなってごめん!今やっと、目が覚めたよ」


 僕はみんなを拘束してる蔦を解除する。

 街を見渡すとだいたい1/3ぐらいが侵食されていた。

 さて、どうしようかな?


 「ユキ様、一時どうなる事かと思いまいした」


 「ごめんね、アイク。目覚めるのが遅くて。でも誰か僕に攻撃を当ててくれた?」


 「結局全員が捕まり、ユキ様には届きませんでした」


 「うそっ!?誰かが当ててくれたんだと思ってた」


 「あんなに攻められては流石に無理ですね、ユキ殿」


 「あっこれはこれは、オリエンスさん。でもこれで信じて貰えたでしょう?」

 

 「貴殿が化け物だということがよく分かった。すまないが後始末も手伝ってもらえるか?こちらに非があるのは分かっているが、流石にあれだけの規模では我らだけでは、どうにもならん」


 「わかりました。後始末もお手伝いさせて頂きます」


 僕もここまでなるとは、思ってなかったからね。


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