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84話

 アマイモンの領地を抜けて今はオリエンスという悪魔が収める領地に向かっている。

 途中で村を見つけてはいつもの井戸を掘り、畑を耕してのお仕事をして、最後に千年樹を植えての繰り返しの日々を送っている。


 「オリエンスの領地ってどんなとこなの、アイクさん?」


 「比較的に緑がまだ残っている土地ですね、多分、千年樹を植えればすぐにでも次ぎの領地に向かえるはずです」


 というわけで、オリエンスさんの領地に到着。

 まずは謁見してからのお仕事開始となる。

 オリエンスは長い赤色の髪でまるで炎のような色だった。

 見た目は此方も若くまだ20代前半って感じでとてもきれいな悪魔である。

 実年齢は多分もっと上なんだろうけど。

 そしてまた、男である。

 そろそろ女領主とかヒロイン候補が出て来てもいいんじゃないかな?

 もちろん僕にとってのヒロインはアウラである。

 元気でやってるかなぁ。


 「初めまして、オリエンス殿、聞いていると思いますが、世界樹の化身のユキと申します」


 「こちらこそ初めまして、前触れが来ているので、ある程度は聞いています。ユキ殿。魔界の緑の保全にご助力願えるとか。よろしくお願いしますね」


 とても丁寧な悪魔だなぁ。

 アマイモンとは大違いだ。


 「出来る限りのことはいたします」


 さて、挨拶も終わり、まずは畑の状態を見に行く、近くには小さな林があって、確かに緑がすでに多い土地だ。

 一応、林の中に入り千年樹を植える。

 畑も作物がある程度育っているのでここは栄養を与えるため腐葉土を混ぜるだけでいいだろう。

 後は、水脈をみつけてと、井戸を掘る。

 うん、今回は簡単に済みそうだ。

 そうやって、過ごしていると突然悪魔があのゲートを使って現れた。

 僕がこの世界に来た時と同じゲートだ。

 すかさずアイクさんが僕の前に立ち、護衛の人達も臨戦態勢に入る。

 が、ゲートから現れた悪魔はこちらを見てビックリして、すぐ様に逃げて行った。

 ゲートから現れたという事は地上でエネルギーを吸い取って帰って来たって事だ。


 「アイクさん今の悪魔は地上から帰ってきたのでは?」


 「……多分、そうかと思われます」


 「僕が魔界に来て千年樹を植えているのは知っているはず、なのにまだ地上からエネルギーを取っているのですか!?」


 「言い訳になるかもしれませんが、多分、前触れが着く前に出発してしまった悪魔だと思います。ルシフェル様は不用意に地上に出るなとも前触れを全領土に出されています。どうか、今の悪魔の所業はお見逃しを。私がオリエンス様に確認してまいりますので、ユキ様はどうか、作業をお続け下さい」


 「アイクさんがそう言うなら信じます。ですが、確認が取れたら僕にも必ず報告してください」


 「わかりました。必ずご報告いたします」


 僕はその日はゲートから帰って来たと思わしき悪魔の事が気になりながらも作業をつづけた。

 夜になり作業もひと段落して、通された自室でアイクさんを待つ。


☆★☆


 アイクはすぐにゲートの悪魔のことをオリエンスに聞きに城に戻った。


 「どうしたのだ、アイク?血相をかえて」


 「今しがた、ユキ様の前でゲートを通じて帰って来た、悪魔がいました。オリエンス様あれは明らかに前触れを出した後に送ったあくまですね」


 「その通りだ、アイク。タイミングが悪い時にでくわしたな。しかし、それがどうしたというのだ?」


 「ユキ様は地上に悪魔が現れなくて済むように我々に協力してくれているのです」


 「それを裏切るような真似は今後よして頂きたい。それにルシフェル様も望んでおりません」


 「ここの緑が多い理由はお前ならわかるよな?私がずっと枯らさずに守って来たからだ! それをあのような小僧一人で本当に癒せるのか、この荒れ果てた魔界が!」


 「私はずっとユキ様を見て参りました。あの方こそ、魔界に最も必要な人物であり、魔界に緑を取り戻す唯一の希望なのです」


 「アイク現実を見ろ、今だ魔界には緑を必要としている民がいる。だが地上はどうだ?いつまでも緑があり続ける。不公平ではないか。そこから少し頂いているだけだ。地上はまた緑が復活する」


 「それは世界樹の化身たるユキ様がいるからこそです。そのユキ様が魔界に尽力されているのです。必ず魔界にも緑が復活する。いいや、すでに復活してきているのです!どうか悪魔を地上に送るのは辞めて下さい」


 「そこまで奴の力を信じるのか、ではあと1週間でこの街を昔のように蘇らせてみよ。そうすれば、私も信じてやる」


 「その言葉お忘れなきようお願いします」


 「ふん、それは此方の言葉だ」


☆★☆


 夜になってコンコンと扉がノックされた。扉を開けるとアイクが立っていた。

 アイクを部屋に招き入れ事の経緯の説明を受ける。


 「じゃあ、オリエンスさんは、未だに悪魔を地上に送ってたわけか」


 「誠に申し訳ございません」


 「別にアイクさんが謝る事じゃないよ。要は1週間で元の緑あふれる街に戻せばいいんだよね?」


 「アイクさん、オリエンスさんに伝えてくれる。本気をだせば、緑が街を飲み込むことになるけどそれでもいいのかな?1週間で元の街に戻すためには明らかに人の手がたりない。そうすると僕も本気を出さなければいけない。」


 「そのようなことが可能なのですか?」


 「自然ってね、思ってるより逞しいんだよ。人の手が入って初めて自然と人?まあこの場合は悪魔か。が手を入れて共生できるんだ。それを1週間で元に戻すのは僕達だけでは手が足りない。それこそ街の全員が協力してくれるなら話は違うけどね。それに元々を僕は知らないからね」


 「ユキ様、もう一度、オリエンス様に会って、今の話をしましょう。流石に街を飲み込んでしまわれると困りますので」


 僕たちは再度、オリエンスに面会を求め経緯を説明した。


 「何をいうかと思えば、馬鹿馬鹿しい!住人全員が手を貸せるわけも、緑がこの街を飲み込むのも無理に決まっている。おおかた時間が足りないのであろうが。それでよくもそんなウソをつけるものだ」


 「では街を緑が飲み込んでも構わないのですね?」


 「できる物ならやってみろ!」


 「これは、荒業です。本来は、少しづつ回復させていくか、必要な所にピンポイントで私の力を使えば街にも以前と同じような緑が復活できます。それには、街の悪魔達の協力が必要なのです」


 「くどい!」


 「では最後に、せめて街の住人を非難させて下さい。それと辞めるときは、いつでも声をかけて下さいね。明後日には始めますので」


 「住人の避難もいらん、ただの戯言たわごとだ」


 「では、せめて明後日には、オリエンスさんも私と行動してください。すぐに止めれるように。かなり意識を集中させねばならないので声が聞こえづらくなるので」


 次の日、僕はアイクさん達護衛のみんなと街の住人に避難を呼びかけた。

 なるべく家財をもって街からはなれること、明日には大規模な自然の治癒が行われて街が飲み込まれる可能性があることを、触れて回ったが、やはりほとんどの人が信じてない。

 それでも僕の実力をまじかで見た、農家の人達など1部の人は信じてくれたけど。

 領主の名前を使っていいか、オリエンスさんに聞きに行ったが答えはやはり『貸せない』とのことだった。

 そしてついにその日がやって来た。


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